【連載】ヨーロッパのエシカルファッション【全9回】

9月の展示会シーズン! ヨーロッパのテキスタイル展示会のエコ生地事情

A Picture of $name texƧture 2012. 10. 22

Written By:Ilaria Pasquinelli of texSture.

ヨーロッパのテキスタイル展示会

Via http://www.premierevision-pluriel.com

パリはテキスタイル発信の中心地であることは誰もが認めるでしょう。9月と2月の年2回、いっせいに7つの大きなテキスタイル展示会が催されます。そのうち6つは、プルミエール・ビジョン・プリュリエル(PVP)傘下の展示会で、Villepinteで開催されます。PV、意匠性の高い素材の集まるIndigo、トリミング素材のModAmont、毛糸類のExpofil, Zoom by Fatex、レザーのLe Cuirとあります。

同じタイミングで、Villepinteからそう遠くもないLe Bourgetで展示会大手のMesse Frankfurt社(以下、MF社)が開催するTexworldが開催されます。これは15年前から開催されている展示会で、ヨーロッパ以外の国々で作られた生地を紹介しており、それゆえ自身を「もう一つのテキスタイル商談展示会」と位置づけています。

これらの展示会には、合わせて2800社が傘下し、PVP関連は合計60000人、Texworldには15000人もの来場があります。来場者はブランドの代表、デザイナー、企画メーカー、代理店など多くの業界人が訪れます。まさに、世界中からアパレル産業の全プレーヤーが一堂に会するのです。

Messe Frankfurt

サステナビリティの面から見ると、これらの展示会の違いはけっこうはっきりしています。MF社は世界中で31ものテキスタイル展示会を運営しており、2010年にはパリのエシカルファッションショー(※2013年よりベルリンのみの開催になりました)を買収し、サステナビリティを全面的にバックアップする姿勢を見せています。年4回、Texpertise Network Newsletterを発行し、サステナビリティとテキスタイルの関係やデータを広く伝えています。サステナビリティ部門統括のBernd Muller氏は、そのニュースレターの趣旨をこのように説明しています。

サステナビリティは重要なトピックであるため、市場でも環境・社会に配慮したテキスタイルが増えています。それゆえ情報プラットフォームとしてニュースレターではサステナビリティに関する情報を伝えています。

2007年にサステナビリティに注力をし始めて以来、MF社のTexworldはサステナブル素材のパイオニアとなっています。今年9月の同展でも80社以上のメーカーが、オーガニックコットン、リネン、バンブー、ヘンプ、リサイクルポリエステルを始めとするさまざまなサステナブル素材を発表・紹介していました。多くの企業、特に中国・台湾・韓国・インド・パキスタン・トルコの企業は、GOTSやOrganic ExchangeSA8000など、何かしらのサステナブル認証を取得していました。

同展の公式ガイドブックは「My Eco-textiles(私のエコテキスタイル)」という名前ですが、サプライヤー企業たちのエコへの取り組みが一目で分かるようになっています。異なる色をした4枚の葉っぱのアイコンが各企業の項目についているのですが、それぞれオーガニックコットン、そのほか天然繊維、リサイクルポリエステル、そしてレンチング社のTencelやModalに代表されるようなエコ素材への取り組みを示しています。ちなみに、MF社の装飾・ホームテキスタイルの展示会・Heimtextileでも同じような手法でエコテキスタイルを紹介しています(Heimtextileは毎年1月開催)。

これだけではありません。Texworld期間中の今年の9月18日にはOeko Tex、GOTS、WRAP、Ecocertのエコ認証機関の代表者が集まり、環境とエコ認証についてのパネルディスカッションを行いました。MF社はこのようなエコイベントをバックアップすることも多く、Textile Exchange2012という香港で10月4日・5日に開催されたサステナブル素材のワークショップも支援していました。

Première Vision Pluriel

それでは、PVPチームはどうでしょうか? 残念ながら、PVPではサステナブル素材についてどのように取り組んでいるのか明確なステートメントがなされていないので、はっきりとしたことはいえません。サステナブル素材を特集したり、ガイドブックで紹介したりもしていません。しかし、PVPの各展示会には、同然サステナブル素材が出展していますが、ちょっと目立たないかもしれません。
私がイタリアの素材メーカーと話したところですが、LyocellやTencel、そのほかリサイクルポリエステルに関する問い合わせは年々増えているそうです。

その他の取り組み

Via http://www.u-clife.fr/english/

テキスタイル展示会はこのような事情になっていますが、ヨーロッパのテキスタイルサプライヤーの中には、サステナブル素材の取り扱いがあることを全面的に打ち出している企業もあります。例えば、フランスのU-CLIFE。U-CLIFEは自身を世界初のアップサイクル生地の「編集者」を標榜しています。どういうことかというと、彼らはありとあらゆる古着を集め、素材・色ごとに古着を整理し、ブランドが素材を見つけやすいようにして販売しています。またキュレーションサービスも可能で、その場合ブランド側が欲しい素材・色の組み合わせを伝えると、それに合わせて生地をキュレーション(=編集)してもらえます。このしくみによって、今まで難しかったアップサイクル生地の大口販売・購入が可能になっています。

この他にも、ヨーロッパのサステナブル素材への取り組みはさまざまです。Filature MiroglioNew Lifeという再生ポリエステル素材のシリーズは注目に値します。全てペットボトルを再生してできているのですが、化学を要する加工段階はありません。全て物理的な加工によって作られています。イタリア内で紡糸されています。

パリ以外でもサステナブル素材を探せる展示会があります。ロンドンではFuture Fabrics Expoという展示会があり、今年は11月7日〜9日まで開催されます。サステナブルファッション教育にも熱心なLondon College of Fashionが主催しており、今年で2回目を迎えました。

ドイツではInnatexという、すでに15年という歴史を誇る展示会がサステナブル素材で有名です。サステナブル素材への注目度が高まるにつれ、ドイツ国外からの来場者も増えています。

おもしろい取り組みに、Green Carpet Challengeというのがあります。女優・Livia FirthとジャーナリストのLucy Siegleが発起人となっている取り組みで、女優たちの大舞台・オスカーなどのレッドカーペットイベントでサステナブル素材を使ったドレスを着用しよう、というものです。なので、「グリーンカーペット」なのですね。この取り組みに賛同・衣装提供するのは、GucciやArmaniといったレッドカーペットの名にふさわしい大御所たち。サステナブルファッションに付随する「ヒッピー」なイメージを払拭することを目的にしています。


最後に、世界的なトレンド予報機関・WGSNはサステナブルデザインについてもトレンド調査をスタートしており、2012年のサステナブルテキスタイル素材TOP10を発表しています。これらのツールも、デザイナーのみなさんにぜひ活用してもらって、インスピレーションにしてもらいたいですね。

こんなにあってもまだまだ……!

不況にもかかわらず、サステナブル素材はじわじわと販売高を伸ばしています。オーガニックコットンのセールスは2009年の約3400億ドルから20%伸びて、2010年には約4090億ドルとなっています(参考)。ブランド側もイメージに適う代替素材を探すのに必死になっています。既存の生地と遜色ない表現力を持つサステナブル素材を、信頼できる販売元から購入することが、ブランド側が立ち向かっている壁です。現状のサプライヤーの数、展示会の回数を数えても、まだまだ難しいのが実情です。

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