20年前にはSF世界のモーソーのようなハナシだった技術が、ほとんど実現されている現在。しかもそれを当たり前のように使用している私たち。デジタル技術の革新は、とどまることを知りません。手仕事を多く要求されるアパレル産業にも、そんなデジタル化のすさまじい波の音が聞こえてきました。しかし、デジタル化することによって、ファッションデザイン・消費はどんなものになっていくのでしょう?
未来のファッションを考えるデザインラボでありブランドである「Continuum Fashion(コンティニューム・ファッション)」。注目を集めたのは3Dプリンターで作った水着『N12』。立体印刷の普及を目指す米・Shapeways社と協働で開発した『N12』は、世界初の裁縫要らずの水着として注目を集めました。
デジタルがファッションにどんな変化をもたらすのか? 次なるファッションSFとはどんなストーリー? 「Continuum Fashion」のデュオ、Mary HaungとJenna Fizel の試みからご紹介します。
D. Dress
『D.』は、好きなフォルムを自由に描いたり消したりするだけで、三角形が自動で配され即座にシミュレーションできるというソフト。三角を切り出して縫えば、即座にアヴァンギャルドなオリジナルなリトル・ブラック・ドレスのできあがり。
CONSTRVCT
好きなフォトやイメージをアップロードして、用意された服のパターンにレイアウト。クリックしてオーダー。インクジェットプリントでプリントしてさくっとおうちにデリバリーされる、というなんともシンプルなオーダーメイド。服づくりの複雑なプロセスをとことんまでカットしてとってもらくちんに服を作ることができます。
最終的には、手頃なプライスで誰もが自分のコレクションを発表・販売できる「ファッションのクラウド化」を目指しているんだそう。
N12
冒頭で触れた3Dプリンターで作った水着『N12』。世界初の裁縫要らずの水着です。ナイロン12という種類のナイロンの粉末素材を何層にも重ね合わせてレーザーで焼結してできるのだそう。
CADで大小の円を最も効率良い場所に配置して設計します。将来はこのアルゴリズムを使用し、どんな動きのあるボディラインにもしっかり沿う服が設計できるようなシステムを構築したいそうです(※)。
Strvct Shoes
こちらも3Dプリントを用いたハイヒールコレクション。CADを使用し、ドラッグして自在に高さを変えたり幅を変えたりすることができます。マンハッタンの橋がイメージなのだとか。軽くてやわらかいので、履き心地もたいへん良いそうです。
3Dプリントって、なぜエコで注目されるの?
3Dプリントがエコとささやかれ注目要素は、以下の3つ。
・小規模生産が簡単にできる。必要なものを必要なときに必要な量だけ作ることができる。 ・わざわざ遠方の工場に出さなくても、プリンタさえあれば家でもすぐ横の町工場でも可能。地域の経済活性化につながる! ロット数を要求される工場に出さずとも、ディテールにこだわった服が安価にできるから、若手デザイナーにもフレンドリー! ・現状の工場で作るより消費する電力・水・染料の量が格段に減る!(※)
将来、服は縫うものではなく、パソコンからプリントするもの、という日が来るかもしれません。お店に気に入るものがなければ、パソコンやアプリでちょいちょいっと作る。
確かにより多くの人が「デザイナー」として真剣服に向き合うかもしれませんが、そのぶんコピー品・海賊品、という問題ももっと出てくるようになるでしょう。さらに、気軽に作れるから……と、毎日作って毎日捨てる、という使い方などされてしまった日には、それはそれでエシカルでもなんでもありません。
デジタル化が進み、プロセスが簡単になることによって、民主化が進めば、プロのデザイナーの役割とはいったいどういうことになるのでしょう? しかし同時に、デジタル化が進むことによって、100年前とはデザインの選択肢も確実に増えています。さらに100年後には、電飾を埋め込むサイバーな服が当たり前になっているかもしれませんね。
ファッションの未来よ、明るくあれ!
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