ほとんどの人は「この服は子どもが作ってる」と知れば、買うことは控えるだろう。しかし、ほとんどの人はその事実に目を閉じ、子どもが作っているかどうかなど関係なく服を買っているだろう。
毎年どこかの企業が、児童労働を強要していたことを告発されスキャンダルを起こし、世間から白い目で見られる事態が起こっている。最近でも、アメリカのTVパーソナリティ、キム・カーダシアンが自身のコレクションに児童労働が関わっていることをスキャンダルされていた。こうしたニュースがファッション業界を劇的に変えるということはないが、それはこうしたニュースが消費者に変化をもたらすきっかけになり得ないからだろう。
2011年6月、人権団体のInstitute for Global Labour and Human Rightsが、Walmart、Target、Macy’s、Kohl’s、Hanesといった大手スーパーチェーンで販売される服はヨルダンにある悲惨な工場で作られていると発表した。ヨルダンのその工場では、日常的に労働者は体罰を受け、法定水準より低い賃金で何時間も働かされているという。さらに、そこの労働者は、虫がたかるような不衛生な部屋をあてがわれ、酷寒の真冬にもお湯も暖房もない生活を強いられているという。例えば、Hanesの工場で働くわずか11歳というハリマちゃんへのインタビューによれば、彼女は1日わずか53セントしかもらっていないという。
ファッション業界がすべきこと
道義的な生産を行うためのガイドラインや規約を発効するだけでは不十分だ。例えば、児童労働を告発されたWalmartは「我々は道義に適う方法で、責任を持って生産を行っている」とその時には発表した。確かに、彼らは児童労働を含めた労働問題を改善すべく努力しているかもしれない。しかし、生産の各段階のバイヤーたちがサプライチェーンをしっかり見ていなければ、企業はずっと告発され続けることになるだろう。アパレルの生産プロセスは複雑の極みともいえるほど、入りくねっている。その現状がある以上、いくらガイドラインを制定しても、それらが各段階で守られているのかいちいち確認することは至難の業と言えよう。
労働者の数が少ない小さな工場か、『パートナー』と言える関係を築いている工場と契約する。
それにより、彼らの生産状況・体制を知り、共に改善に取り組むことが容易になる。それで簡単になったからといって、ただ単に生産プロセスが適切であるかをチェックするのではなく、彼らがどんな設備を有し、どのくらいの量が適切であるのかを知ることが大切だ。
なぜ、適切な生産プロセスが守られないかというのは、アパレル企業から工場に発注された量が多すぎたり、納期までの期間が短すぎたりするためだ。バイヤーも、企業が工場に無理な発注をしていないかを一つの買い付けの基準にしてはどうだろうか。買い付けの段階でそうした不正を指摘しなければ、問題はどんどん悪化し、虐待がひどくなるのである。
消費者ができること
1. 今着ているコットン製品はどこで作られたものか見てみよう。
例えば、ウズベキスタンは世界第3位のコットン輸出国であり、そのほとんどはEU圏内に輸出されている。米国と欧州のファッションブランド、小売業者が共同で綿花産業における強制児童労働の使用に反対する声明を打ち出したイニシアチブ・Responsible Sourcing Networkの児童労働防止キャンペーンにはH&MやAdidasを含めた60社の世界的企業が参加し、ウズベキスタンから児童労働がなくなるまでウズベキスタン産のコットンを使用しない方向で動いている。フェアトレードのコットン製品などを選択しよう。
2. ハイストリート・ブランドを避ける。
企業にとって、倫理的な生産プロセスのガイドラインを発行するだけでなく、そのガイドラインがサプライヤー各社によって実際に守られているかが大切である。しかし、そもそもそういったガイドラインを制定していないハイストリート・ブランドはまだまだたくさんある。2011年にGuardianが発表したレポートによれば、BenettonやRiver Island、TK Maxxを含む9社が労働者の権利保護・環境対策についてのポリシーを制定していないという。
3. ファッション児童労働チェックアプリを使ってみる
The Free2Workが開発したアプリは、バーコードを読み込むと、生産したアパレル企業のエシカル度をA~Fで評価してくれる(注:日本未対応)。