「ガラスでできた」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶもの。
それはやはり永遠のプリンセス「シンデレラ」の“ガラスの靴”ではないでしょうか。
今も昔も少なからず乙女心をつかんできた、ガラスのシンボル。
今回ご紹介するのは靴ではありませんが、同じく「ガラス」製で女子のハートを鷲づかみにしているアイテムです。
シンデレラはガラスの靴を“与えられて”ハッピーエンドを迎えましたが、今回ご紹介する工房の女性たちは、“自分たちの手で”、自らのきらめく未来を切り拓いているのです。
ここは東日本大震災による甚大な被害を受け、かつ福島第一原発から20キロ圏内という場所にある福島県南相馬市小高区。
2016年7月12日に避難解除がなされ、これまであった居住制限は一部を除いて取り払われましたが、2017年10月時点での小高区の人口は約2,200人。これは震災前の約12,000人と比べると約2割弱の数字です。
そんな小さなこの町から、キラキラと輝くガラスのアクセサリーが生まれ、大手セレクトショップなどを通じて、全国に届けられています。
ガラスのアクセサリーが作られているのは、駅から徒歩5分の場所にある、HARIO Lampwork Factory Odaka(以下、LWF小高)。
そもそも、なぜ、小高にガラスアクセサリーの工房が生まれたのか。馴染みがある場所なだけに、疑問は尽きません。
女性が憧れるような仕事を。
中を覗くと、女性の職人たちが、手を動かしていました。
若い人が、『やってみたい』と思えるような仕事を作りたかったんです。震災前からここにはそういった仕事が少なかったのもあって。避難解除されても、生活の基盤がなくなってしまった小高に戻ってくることは難しいです。そういった意味でも若い人、特に働き方が制限される女性にとって『やってみたい』と思える仕事をつくりたいなと。
お話を伺ったのは、LWF小高を運営しているオーナーの和田智行さんと、マネージャーの菜子さん。
もともと、このガラス工房は、智行さんの経営する会社「㈱小高ワーカーズベース」の一つとして立ち上がり、2015年に小高ワーカーズベースの事務所の一角で始まりました。
少しずつワーカーさんを増やしながら、2016年6月に、正式に設立。探しに探して出合ったという工房は、元・美容院。光が多く差し込む大きな窓が決め手だったと言います。
正直、新しい事業をスタートさせるには勇気がいるような環境。
たった一人のワーカーさんとともにスタートしましたが、いまではその数も6人に。ワーカーさんの増員と技術力の向上により、今年の納品数は昨年の約7倍にまで成長しているとも。
LWF小高では、ワーカーさんを個人事業主としています。一人ひとりに本社に納品するパーツの制作割当はありますが、働くペースはそれぞれの都合のいいようにしてもらっているんです。年代も20代から40代で、市内から通っている主婦の方が多いです。みなさん仲良く働いていますよ。
しかし、ガラス工房も工芸学校もない小高。みなさん、どのように技術を学んでいるのでしょう?
まずは36時間の研修を受けてもらっています。その後、ガラス溶接講座を2日。さらに3カ月の修行期間を経て、一人前として成果報酬がでるのが4カ月目から、といったところです。あとは2~3カ月に1回、本社から来る先生の指導を受けたりなどして、技術向上を図っています。
ゼロからのスタート
この日、実際に作業されていたワーカーさんたち。なぜ、LWF小高で働いてみようと思ったのでしょう?
もともとハンドメイドが好きだったんです。ネットで素材を買って、スマホケースをつくったり、ブランケットを縫い合わせたり。こうゆう場所があるのを知って、じゃあやってみたいなって。隣にいる岡本さんも、私が誘ってから一緒に働いてくれるようになりました。(三浦さん)
私はテレビでここのことを知って。若い頃、会津のガラス工芸に出合って「いいなあ」とはずっと思っていたんですけど、なかなかチャンスがなくて……。だからここを知ったときに、やってみようとすぐ思いました。(和田さん)
コメントを投稿するにはログインしてください。