【連載】いいかげん選書【全13回】

ババ抜きが弱そうな本

A Picture of $name 大野真司 Illustration: anne imai 2017. 1. 31

「突然街中に出現する本屋・劃桜堂かくおうどう」の大野がお届けする、すこぶるいいかげんな本の紹介。

いつの間にか、日常に「本」が忍び込んでくる……。

©anne imai

第45代アメリカ大統領に共和党のドナルド・トランプ氏が就任した。

普段全くテレビを見ない(そもそもテレビを持っていない)私は、当選時に周りで「トランプが〜」「大富豪の〜」という会話を聞くたびに、「カードゲームで遊んでいる場合じゃない! もっと社会や経済、政治に関心を持つべきだ!」と、思ったものである。

トランプ大統領の評価については、正義か悪かと、判断が分かれているところである。

そもそも、人はいつから悪の心が芽生えるのだろうか。

そう、ババ抜きをしたときからである。

人を疑い、騙し、蹴落とすのがババ抜きである。

ババ抜きが弱い人は信頼できる。

そういうわけで、ババ抜きが弱そうな本を紹介する。


※アマゾンの販売ページに遷移します。

くじ

シャーリイ・ジャクスン(著)・深町 眞理子(翻訳)、早川書房、2016年10月

「〇〇という行為は人生に似ている」と言えば、良い感じにそれっぽく聞こえる。

劃桜堂は良い感じにそれっぽいことを言いたがる本屋さんである。

つまり、くじ引きという行為は、人生に似ている(キリッ)。

まず当たりが少ない。

そしてくじは引いてみないとなにが出るか分からない。

くじ引きにおいて、自分だけが当たる確率が高いと思うのは間違っている。

ならば、せめてたくさんのくじを引くことで当たりを引く確率を上げれば良いと思う。

本書おけるくじは、ちょっと普通とは違う。

当たりが全くないのである。文字どおりの「はずれくじ」しか入っていない。

人口300人ほどの村で、年に1回行われるくじ引き。なぜか石を握りしめて参加する村人たち。そしてはずれを引いたテシー・ハッチンスンは、石を持った村人たちにじりじりと囲まれて……。

しかし、このような風習がない現代に生まれただけでも、人生は結構当たりかもしれない。


※アマゾンの販売ページに遷移します。

人間関係がスーッとラクになる 心の地雷を踏まないコツ・踏んだときのコツ

根本 裕幸(著)、日本実業出版社、2016年9月

止まない雨はないし、出口のないトンネルはないし、遅れない埼京線はない。

同じような理由で踏まない地雷はない。まさしくババを抜いてしまう瞬間。

誰しも一度や二度地雷を踏んだ経験があるだろう。

ババ抜きのように、慎重に慎重に吟味した結果であっても大惨事を招くことがある。

この本の偉大なところは、地雷踏んだときの対処法だけでなく、地雷を踏むプロセスが書かれている点である。

地雷はなぜ踏んだのか、理由が全く分からないケースが多い。

私も飲食店で当たり前のようにゴキ○リホイホイにホイホイしてしまったが、なぜ自分がホイホイされてしまったのか理由がさっぱり分からなかった。

生きづらい社会で空気を読むよりも、本書を読むほうがよほど良い。


※アマゾンの販売ページに遷移します。

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80

池谷 裕二(著)、講談社、2016年1月

ババを引いてしまったときの表情は、自分では見ることができない。

そんなときはぜひ本書を手にとってみよう。十中八九そんな顔だ。

本書は脳科学の研究者が、無意識による判断ミスや勘違いを引き起こす脳の錯覚=「認知バイアス」をクイズ形式で紹介している。

例えば男性の名前のハリケーンと、女性の名前のハリケーンではどちらのほうが被害が大きいか? といったクイズが80問ほど載ってある。(正解はぜひ本書を手にとって確認されたし)

以前劃桜堂かくおうどうのTwitterで、「雪見だいふくと劃桜堂どっちが好きですか?」というアンケートをとったところ、7割以上が「雪見だいふく」と回答した

どんな認知バイアスが起きたのか本書を読んで研究したい。

この記事のキーワード

Keywords

Sponsored Link
この連載のほかの記事

Backnumber

ほかにも連載

Find More Series