装いに潜む人生やパーソナリティを紐解く本連載。第2回目となる今回のゲストは、カリフォルニアからやってきたヴィクトリア(Victoria、通称ヴィヴィ)。前回登場したヤエル(Yael)がお洒落だと太鼓判を押すアメリカ人だ。
文学少女を経て日本へやってきた彼女、英語教師としての職とは別にスタイリングのポートフォリオを手がけるほどのファッション好き。トレンドに左右されない彼女の確固たるスタイルの在り方とは? 日差しが心地よいある日の午後、自宅に招いて語ってくれた。
How long have you been in Japan? Why did you decided to come to Japan?
―― 日本は何年目? どうしてきたの? 仕事はどうしてる?
父と母はメキシコ出身。私は生まれも育ちもカリフォルニア生まれ。アメリカでカリフォルニアが一番よ。リラックスでイージーゴーイング! それがカリフォルニア。
26歳のとき、日本に来たわ。カリフォルニアで主人に出会って、そのままいっしょに来ちゃった。
もともとは大学卒業後は海外で働いて、お金を貯めてから大学院に行こうと思ってたの。コミュニティ・カレッジで社会人相手に文学の授業をしたくて、PeaceCorps(※ピースコア、米途上国支援ボランティア派遣プログラム)とかにも興味があったの。
Why do you want to teach Literature to adults, not kids?
―― なぜ大人向けに授業がしたかったの?
そうね。私が思うに、文学作品は、人生とはなにかを語る哲学書。綴られた文字の中に、それ以上の「視点」みたいなものが詰まっているのよね。それは著者の「視点」であり、著者自身の言葉で語られてはいるけれど、著者は、自分以外の誰かになり代わっている。だから著者は著者でありながら、著者ではないのよね。
それを理解し、議論できるようになるには、やっぱり経験と年月が必要なんだと思う。だから年齢を重ねた大人と取り組みたいって考えたの。
Your favorite book?
―― 好きな本は?
Milan Kundera(ミラン・クンデラ)の『存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)』。哲学がいっぱい詰まってるの。文学作品から哲学的な知見や影響を受け取るのは私にとって大切なことだわ。
Then, who is your favorite philosopher?
―― 哲学者なら誰が好き?
特定の誰が好きっていうのはないけど、私自身が親しんできた東洋の哲学を詰め込んでいるから、Alan Watts(アラン・ワッツ)は大好き。私は無宗教だけど、もし一つどれかになれと言われたら、仏教かヒンドゥー教を選ぶわ。
思うに、特に仏教には「神」は存在しなくて、ある「実在(entity)」だけがある。
元カレのお母さんがカンボジアからの難民だったんだけど、とにかく明るく光に溢れた人で、私は彼女が大好きだったの。その元カレのお母さんが瞑想リトリートに通ってて、私もいっしょに通うようになったの。そしたら、それが私には“合ってた”のよね。
瞑想をするほかに、お話を聞く時間があったの ――「諸行無常」。ものごとは常に移り変わっていて、起こってしまった事実だけがある。それに対して悲しんだり苦しんだりするのは、全て自分が変化を受け入れないからだっていうの。
彼にフラれた、親が離婚したっていう出来事だってそう。関係性もなにもかも「変わる」というのは、当たり前で自然なこと。変化は変化として受け入れて、そのときの自分の感情や心の状態をしっかり見つめることが大切。
そういう考え方が、私にはすごくしっくりきたの。
Yael told us that you are the fashion inspiration. How did you get to know Yael?
―― ヤエル(※前回登場)はあなたがファッションのインスピレーションになってると言っていたわ。ヤエルとの出会いは?
ヤエルと会ったのは1年くらい前。共通の友人がいて、私はその子と趣味でファッション撮影をやっていたの。
その一つの撮影で、彼女のアパートを使わせてもらったのが仲良くなるきっかけだったわ。
Fashion shooting just for fun?
―― 仕事としてではなく、趣味でファッション撮影をしていたの?
そうなの。私はクリエイティブ・ディレクションとスタイリストをやったわ。ブログに載せるだけの、ただの趣味。
その友人が日本を離れちゃったからしばらくやってないの。またやりたいわ。表現したいものはいっぱいある。実を言うと、ロサンゼルスに戻ってファッション・スタイリングの勉強をしたいなと思ってるところなの。
You’re works are beautiful! You enjoyed fashion since you were a child?
―― 素敵な作品ね! 子どもの頃からファッションが好きだったの?
ううん。子どもの頃は、ぜんぜん服を買ってもらえなかった。母が「なんでセーターに40ドルも掛ける必要ある?」ってタイプだったの。
16歳のとき、初めて稼いだ給料で服を買ったことはいまでも覚えてるわ。「PUMA」のクラシックなスニーカーと、「Abercrombie & Fitch」のフレアデニム。フレアデニムは、ぼろぼろになるまで毎日穿いてたわ。
ただ日本に来たのが、ファッション欲が爆発するいちばんのきっかけだったかも。
How did Japan/Tokyo inspired you?
―― 日本/東京のスタイルは、ヴィヴィにどんな刺激を与えたの?
私にとって、センスを磨くとはすなわち、自分を縛りつけるルールを打ち破っていくことだった。怖がらずにね。
東京にやってきたとき、本当に街行く人たちの着こなしに度肝を抜かれたもの! 柄に柄を合わせるの?! あの変わった服はなに?! って。西とは違って、本当に無限の可能性があるんだなって気づかされた。
それに、日本は本当に素敵なブランドがたくさんあるし!
What are your favorite Japanese brands?
―― 好きな日本のブランドは?
まず「TOGA」。着こなしやすいのに、ファンキーでとってもクール! それに、セクシーさもある。
あとは、「FACETASM」に「sacai」……「UNDERCOVER」も大好き! とってもエキサイティングだもの。「COMME des GARCONS」もすごく好きなんだけど、ときどき着こなしきれないのよね……。
日本のブランドじゃないけど、いまの「GUCCI」も大好きよ。
Where do you go for shopping in Japan?
日本ではどこでお買いものするの?
お店では、「Sister」、「Opening Ceremony」……原宿の小さなセレクトショップやヴィンテージショップをあちこち覗いてるわ。
ブランドものはセカンドハンドショップばかりよ。別にシーズンにこだわりはないの。そもそもデザイナーは、ずっと着てもらえるようにって思いでデザインしているんだと思うし。
下北沢へもよくヴィンテージハントに行くわ。中目黒も素敵な古着がいっぱいあるけど、ちょっと高めの値段設定よね。基本は10万も20万も服にかけないつもりだけど、どうしても心揺さぶられてしまったものは別! 本当にいろんな服を買うのよ。
How would you describe your style?
―― あなたのスタイルを一言で表すと?
「SEXY and COOL」よ! ファンキーでありながら、セクシーさがあるもの。ラテンの血なのかしら、「セクシー」は私にとってすごく大事な要素。女性の持つ力強さを発揮できる服は欠かせない。
カラーパレットでいうと、パステルやグレーが多いわ。シースルーアイテムも集めちゃう。
昔は、安いものをとにかくたくさん買い集めていたわ。「あればあるほど良いでしょ!」って。でも、そういうのってコンシャスじゃないなって思って。それでヴィンテージものを買うようになったわ。
What does fashion mean to you?
―― 最後に、あなたにとってファッションって?
ファッションは、あなたがどういう人なのか、他人に教えるもの。真面目なタイプなのか、楽しいタイプの人なのか、ひと目で伝えられるものよ。
確かに、服に頓着しない人もいるわ。でも、なにかしらのメッセージを発するものとして、とても有効な手段よね。絵画や彫刻といったかたちをとっていないけれど、ある種のアートだと思うわ。
それに、私にとってはいま自分がどんな気分なのかも表現する媒体でもあるわ。ミステリアスに見せたい。セクシーに見せたい。そういう気分を表しながら、どんなキャラクターにでも「変身」できるもの、ね。
本当はファッションにルールも制限もないはず。自分が作っちゃっているものなのよ。そういう「限界」を超えていきたいわ。
(インタビューここまで)
「つい集めてしまう」というファーアイテムの中で、愛猫と戯れるヴィヴィ。ルールを打ち破ることこそがスタイルだと語ってくれた。自由奔放で見る者を楽しませ、色っぽくもある彼女のスタイルは周囲へポジティブな刺激を与えてくれる。海外で活動をさらに展開していく彼女、今後も目が離せない。
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