心からの声を上げれば、言葉にして伝えようと努力すれば、思いはきっと届く ――私がユナイテッドピープルへの転職を志したキッカケは、まだ前職時代、映画『ザ・デイ・アフター・ピース』の上映会を自ら開催したときのこと。自分が心から伝えたいと思うことを言葉にして伝えようとするとき、内側から湧き起こってくるエネルギーの心地良さや、その言葉に共鳴して、周りの人たちが熱い思いを返してくれる喜びを、強く感じたからです。
自分から何かを生み出そうとすること、チャレンジすることは、大きなエネルギーを必要とします。でも一方で、自分が主体的に動く中にこそ、やりがいや生きがいは生まれてくるように感じています。
自分が主体的な発信者になる ――その典型的なカタチの1つが、「市民上映会」です。
前回の記事でも少しご紹介しましたが、市民上映会の開催に際して、弊社からは上映ディスク(DVD/ブルーレイ)をお貸し出しするのみです。
どんな場所で、どれくらいの規模で、どんな人たちを対象に、映画を上映するのみなのか、それとも
今回は、ユナイテッドピープルとしての連載最終回ということで、実際に定期的に上映会を開催いただいている方々の声とともに、上映会の魅力をお届け!
次の2つの点について、3つの異なるタイプの上映会主催者の方に尋ねてみました。
1. 会社も巻き込みながら 〜社内外を超えて、人と人をつなぎ「考える」場づくり
銀座ソーシャル映画祭 西村修さん(東京)
Q. どうして上映会の場をつくろうと思ったのか?
ソーシャルグッドな活動をする社外の有能な方々との交流が増えるにつれ、社員のソーシャルマインドを高めたいと考えていたところ、そもそも考える機会が少ないのでは? と思い、「ドキュメンタリー映画で手軽に考えるきっかけを作ろう!」「どうせなら、社員に限らず誰でも参加できるように」と考えた。
だがそれまでにイベントを主催したことなどなく、やり方が全く分からない。まずは知人に、ユナイテッドピープルの関根社長を紹介してもらった。映像を通じて世界平和を目指す理念に共感し、上質で豊富な同社の映画をできる限り上映しようと決めた。上映会の趣旨に賛同した社外の有能な方が積極的にサポートしてくれたため、上映会開催が実現した。
第1回の上映会では、80人近く集まった。真面目な人たちが気兼ねなく交流できる場が社会には必要なのだと強く感じ、すぐに続ける決心した。
当初は年間2回も開催できれば十分と考えていたが、場を作ることが社会に役立つと信じ、気づけば1年で9回も開催していた。このペースを維持したまま3年以上続けている。
Q. 実際に開催してみて感じているやりがいは?
上映会をやって最も得をしているのは、自分自身。以前よりは成長できたと実感している。
志ある場を作れば、志ある人が応援してくれる。自分自身の能力が足りていなくても、場を作ることができれば、物事を成し遂げることができることを知った。
なにより、人のために自分ができることを積極的に探すようになった。批判ばかりしてなにもしないダメなタイプだったが、上映会を自ら企画運営して苦労するうちに、自分自身が変わってきた。
いまでも集客には泣かされるが、自分のチャレンジと定め、意地で続けている。毎回、開催までにたいへんな思いしても、参加者の満足気な様子や、自分の知り合いどうしが上映会の場で自然につながっていく様子を見ると、続けていて良かったと満足感が湧く。
2. 地方では観られない映画を、せっかくならほかの人と共有しながら味わいたい
想ふ映画館 廣野聡美さん(愛知→北海道)
Q. どうして上映会の場をつくろうと思ったのか?
誤解されやすいのですが、私は社会派でも、無類の映画好きでもありません。休日の暇なときに、映画でも行こうか、ってタイプの人です。いまは少し意識するようになりましたけど。
ただ、ミニシアターでやるような映画が好きです。
東京から名古屋に移ったときに、観たい作品が上映されなかったり、上映されたとしてもすぐ終わってしまうことが多く、「自分でやってみようかな」と思ったのがきっかけです。「いろいろ難しいことがあるのでは?」と思ったのですが、〈スクリーンとプロジェクターさえあれば「ここは映画館」〉でした(笑)。
移動式のかたちをとっており、会場は、お寺、カフェ、公共会場、北海道にUターンで戻ってからは、ゲストハウス等をお借りしています。
Q. 実際に開催してみて感じているやりがいは?
「映画を観た後、感想を言い合うのって、良いですね」「観られるところずっと探してました!」 ――一人、またひとり、そう言う人が増えてくれるたびに「これは文化づくりなのだ」と思う。
「想ふ映画館」ではその名のとおり、まず知る、そして自分事のように想ふ(imagineする)を大切にし、上映後、個人の振返り時間と感想のシェアリングを行っています。
作品のメッセージを受け取ることにプラスして、居合わせた目の前の人からの「gift」時間。違う価値観をもらう共有の時間は、想像以上に自分を豊かにしてくれます。「もらえば幸せ、あげればもっと幸せ」です。
初対面どうしで大丈夫かな、とも思いましたが、いつも心配には及びません。みなさん楽しんでくださっているようです。その後、自分なりの行動に落とし込まれれば、作品への恩返しになると思っています。
こんな映画の見方で、人と人がつながる。それだけで優しい社会になるのかなって? 思いはじめました。いまは、「映画の力ってすごい!」と感じています。
世の中知らないことばかりで、自分の近づかなかった遠い世界、遠い場、遠い人ほど、学びになってます。私自身さまざまな分野において初心者なので、みなさんと同じ目線で参加させていただいています。
想ふ映画館は「(自分の心の)ボーダーを外す旅」でもあります。
3. ヨガスタジオのスペースを生かして 〜寝転びOK、マルシェも開催 気軽に社会問題に触れる機会を
シャンティ・シネマ(マウントヒル・ヨガスタジオ) 山坂良子さん(福岡)
Q. どうして上映会の場をつくろうと思ったのか?
「cinemo」の作品を年間契約で上映できる「cinemoシアター」の話を知り、通常、一本お借りするのに数万円かかるところ、年間で10万円。観たかった作品がたくさんあるし、ヨガスタジオの生徒さんや周りの人たちに社会問題を知ってもらういい機会になる、と同じ思いのヨガの生徒さんたちと始めました。
会場はヨガスタジオ、寝転んで観てもOKというスタイル。1年間で5回の上映会、作品数は9本でした。マルシェも同時開催し、仲間たちのおかげでシャンティな雰囲気づくりはバッチリです。
上映会を開催するうえで大事にしていたことは、観ていただいたみなさまにドキュメンタリー映画の問題が、他人事ではないと感じてもらうことです。
シャンティシネマ初回は、話題になった新作の『ザ・トゥルー・コスト』。誰もが一枚は持っているであろうファストファッションのブランドロゴがパパパっと映像で出たときは、みんながハッとしました。もう他人事として見ることができない。
『HUG抱く』のときには海南監督にご来場いただき、直接お話しを聞くことができました。原発事故後、私たちはこれからどう生きていくのか、その展望もお話しくださいました。
シャンティシネマ1年目の最終回は『ポバティー・インク』。観ないと知ることができなかった寄付の真実がそこにありました。世界的に有名な支援団体の名もそこにありました。
cinemoの作品が見応えのあるものばかりで、参加してくださったみなさまから、また来年も来たいと言っていただいています。来年もシャンティシネマができたらいいなと思っています。
あなたも、映画を使ってチャレンジしてみませんか?
いかがでしょうか? 主催者の数だけ、「市民上映会」のかたちも多様であることが伝わりましたでしょうか?
上映会は通常、1日ごとにディスクをお貸し出しし、上映料金をお支払いいただいていますが、今回ご紹介した3シアターさんを始め、定期的に上映会を開催してくださる方向けには、「cinemoシアター」という年間プランもご用意しています。
この「cinemoシアター」の参加団体さんは、現在全国で80カ所以上に及びます。そして、その主催者さんどうしでの情報交換や、実際にFace to Faceでコミュニケーションをとれるオフ会も開催したりしています。
一般的な仕事といえば、売り手と買い手、生産者と消費者、サービス提供者とお客さん……といった関係性になると思いますが、上映会を開催いただいているみなさんは、私たちユナイテッドピープルのメンバーと同じく、「より多くの人に社会の問題について考えてもらいたい」「人と人とのつながりを大切にしたい」という思いを共有できる“仲間”であり“同志”でもあります。
そうした“仲間”からの応援をもらいながら、一緒に未来をつくろうとしていくことが「仕事」になっていることも、個人的にはとても幸せなことであり、一つのポスト資本主義的な仕事のあり方なのではないかとも思っています。
もし、「自分でなにか社会のために一歩踏み出してみたい……!」という思いを持っていらっしゃれば、ぜひ一度、映画を使ってチャレンジしてみませんか?
コメントを投稿するにはログインしてください。