【連載】BIO is LUCKY!

【レポート】第3回 ドイツ・オーストリアのBIO HOTEL®とサステナブルカルチャー 〜最新BIO HOTEL®事情編

A Picture of $name 中石 真由子 2016. 10. 29

BIOを知り、日常の中に少し取り入れてみると、身の回りのケミカルで工業的なものも、違った角度から見えて、あらためて理解できたりします。

自分自身の中に新しいモノの見方、価値観が生まれる感覚は心地良い! だから、BIOは、ラッキーなこと!

「BIO is LUCKY!」では、BIOでラッキーな情報をご紹介していきます。

2016年6月末から8日間、ドイツ・オーストリアへ視察の旅に行ってきました。

さまざまな場所を訪ねた今回の視察でも、もちろんBIO HOTEL®へ。第3弾は、BIO HOTEL®の「いま」をお届けします。

一般社団法人日本ビオホテル協会の中石真由子です。

今回の旅では、2つのBIO HOTEL®の視察と宿泊をしてきました。

Bio Hotel Mattlihüs

ドイツ南部・アルゴイ地方のオーバーヨッホに位置するBio Hotel Mattlihüs(マトリヒュース)。

麓の道よりMattlihüsを望む。(Photography: Mayuko Nakaishi)

麓の道より、Mattlihüsを望む。(Photography: Mayuko Nakaishi)

標高約1,200m。

冬には深い雪が積もり、勾配もあるため、麓からホテルまでは、特別な雪上車で送迎してくれます。

Mattlihüsの入り口。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Mattlihüsの入り口。(Photography: Mayuko Nakaishi)

長らくスキー場のロッジとして運営されていましたが、2013年に大規模改装。食材や飲料、コスメ類も合わせて見直し、BIO HOTEL®の認証を取得しました。

建築は、自然素材と無垢木材を100%使用する建築基準「Holz100」仕様。

金属製の釘やネジも使わず、代わりにダボ(=木材を接合するときに使用する木製の棒)を使用して、木材どうしをパネルにして使います。

Mattlihüsの客室付近廊下。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Mattlihüsの客室付近廊下。(Photography: Mayuko Nakaishi)

マトリヒュースの客室付近廊下の壁。中央の焦げ茶の丸が「ダボ」。(Photography: Mayuko Nakaishi)

マトリヒュースの客室付近廊下の壁。中央の焦げ茶の丸が「ダボ」。(Photography: Mayuko Nakaishi)

健康や環境に配慮した建築理論・Baubiologi(バウビオロギー)に基づいた建物は、地球環境保全の観点はもとより、室内環境の健康や快適性を実現し、人と環境の共生を実現できると考えられています。

Mattlihüsの客室の一例。各部屋2〜5人が定員。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Mattlihüsの客室の一例。各部屋2〜5人が定員。全部で27部屋あり、約100人が収容可能。
(Photography: Mayuko Nakaishi)

共用部のラウンジ。朝から日差したっぷりの気持ちの良い空間。(Photography: Mayuko Nakaishi)

共用部のラウンジ。朝から日差したっぷりの気持ちの良い空間。(Photography: Mayuko Nakaishi)

屋外では、冬のスキーやマウンテン・ウォーキング、ハイキング、マウンテン・バイクやパラグライディングなどのアクティビティ、ハーブの散策、朝のヨガを。

屋内では、スパやサウナなどを楽しむことができます。

そして食事は、もちろん100%BIO。

朝食はビュッフェ、夕食はプリフィックスディナーです。

ビュッフェに並ぶデリは、シンプルな味つけで、どれもおいしい。ほかにも、シリアルやヨーグルト、チーズやハム、ソーセージ、スープなど盛りだくさん。

パンには、ヨーロッパBIOの認証マークも付いています。

朝食とディナーの前菜ビュッフェの一例〈左〉。種類豊富な食事パン〈右〉。(Photography: Mayuko Nakaishi)

朝食とディナーの前菜ビュッフェの一例〈左〉。種類豊富な食事パンは、好きな大きさに自分でカットしていただく。〈右〉。(Photography: Mayuko Nakaishi)

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ある日のプリフィックスディナーの肉料理。(Photography: Mayuko Nakaishi)

ある日のプリフィックスディナーの肉料理。ディナーでいただく赤身の牛肉は、深い味わい。甘い果物のジャムソースと合わせて食べるのが特徴です。(Photography: Mayuko Nakaishi)

もちろん、ベジタリアン料理も。

ある日いただいたベジタリアンラザニアは、ひき肉の代わりに雑穀を使い、ハーブも効かせた一品でした。

ハーブティーやりんごなどのフルーツは、フリーでいただけます。

冷蔵庫の中のドリンクなどは、そばに置いてあるメモに名前を書く自己申告制になっています。

共用部のラウンジにあるドリンクコーナー。(Photography: Mayuko Nakaishi)

共用部のラウンジにあるドリンクコーナー。(Photography: Mayuko Nakaishi)

BIOの食やコスメ、CO2削減目標、そして自然素材での徹底した建築工法など、全て厳しいBIO HOTEL®認証基準を満たしているBio Hotel Mattlihüs。

徹底した取り組みであるにも関わらず、ゲストのストレスは当然ながらありません。

ここには、環境と心身の健康に配慮した穏やかで自然なホスピタリティが根づいていました。

BIO WELLNESS HOTEL HOLTZLEITEN

HOLTZLEITEN(ホルツライテン)は、オーストリア・インスブルックの旧市街から車で40分ほどに位置するホテル。

今年で3回目の訪問です。

現オーナーのSimon Willhelm(ズィーモン・ヴィルヘルム)氏に案内してもらいながら、話を聞きました。

アルプスの山脈に抱かれたHOLTZLEITEN。(Photography: Mayuko Nakaishi)

アルプスの山脈に抱かれたHOLTZLEITEN。(Photography: Mayuko Nakaishi)

1972年、Simonのご両親が、テーブル5つほどのカフェを開業。

2012年からBIO HOTEL®に転換し、現在は40部屋・約80人を収容する、中型規模のBIO HOTEL®です。

エントランスには、たくさんの認証プレート。(Photography: Mayuko Nakaishi)

エントランスには、たくさんの認証プレート。中央上には、BIO HOTELの要件であるCO2削減の取り組みをコンサルティング・サポートする“ehd=eco hotel certified(エコホテルサーティファイド)”認証プレートが設置されています。(Photography: Mayuko Nakaishi)

現在は、BIO HOTEL®としてのみならず、Wellness&Spaとしても役割を果たすことを目的としているそう。

温水プールは、夏は29℃、冬は33℃に設定されています。

ホテル自慢の屋外プール。プールの横の棟には、フィンランド製サウナもある。(Photography: Mayuko Nakaishi)

ホテル自慢の屋外プール。17:00からは、全裸で入ってもOK。プールの横の棟には、フィンランド製サウナもある。(Photography: Mayuko Nakaishi)

現在の熱源は、太陽光パネル+地熱+灯油。

将来は、灯油を木質チップにしたいと計画しているそう。

客室内。ウェルカムスイーツは、りんご。ピローの上には、ホテルオリジナルのチョコレートが置かれていました。(Photography: Mayuko Nakaishi)

客室内。ウェルカムスイーツは、りんご。ピローの上には、ホテルオリジナルのチョコレートが置かれていました。(Photography: Mayuko Nakaishi)

客室は、窓に向かってベッドがあり、一段上がった奥にリピングソファスペースががある客室も。 また、今年リノベーションした客室は、細長い1ルームのスペースをうまく活用していました。 家具には広葉樹。外壁には針葉樹を使用しています。(Photography:Mayuko Nakaishi)

客室は、窓に向かってベッドがあり、一段上がった奥にリピングソファスペースががある客室も。
また、今年リノベーションした客室は、細長い1ルームのスペースをうまく活用していました。
家具には広葉樹。外壁には針葉樹を使用しています。(Photography:Mayuko Nakaishi)

館内がとてもきれいなので、 Simonにその理由を尋ねてみると、以下のような答えが返ってきました。

まず、上質な木材を使うこと。そして、一年に2回壁を塗ること。

また年に1回は、かなり大掛かりな大掃除を行い、売上の3%は、メンテナンス費用に使っているのだそう。

清々しい外と同じくらいの快適さが保証された空間は、自然の建築材とセンスの良い家具、清潔感を第一とした維持管理の努力あってのこと。
実に納得の回答でした。

実際には、BIOにして食材費30%アップ。

ただし、食材の廃棄量は格段に少なくなり、残ってしまうことで感じるストレスは一切ないとも。

ある日のディナープリフィクスのベジタリアン料理〈左〉と、豚肉料理〈右〉。(Photography: Mayuko Nakaishi)

ある日のディナープリフィクスのベジタリアン料理〈左〉と、豚肉料理〈右〉。(Photography: Mayuko Nakaishi)

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スタッフは、募集するとすぐに集まるそう。

Simonは、「賄い料理がおいしいからかな?」と笑っていました。

チロルの一般的な伝統服。ほとんどのレストランで、女性のサービススタッフが着用。(Photography: Mayuko Nakaishi)

チロルの一般的な伝統服。ほとんどのレストランで、女性のサービススタッフが着用。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Simonに、「なぜBIOなのか?」という質問をしたところ、次のようにすぐ答えが返ってきました。

子どもはBIOで育てたい。仕事場であり、ゲストを迎えるホテルもBIOにしたい。
BIOの基本は、まず食べるもの、そして肌につけるもの。そして、地域の野菜、食肉、パンの生産者、BIOの農家を支援し続けたい。

シンプルかつ豊かな発想、考え方です。

→Next:ビオホテル協会事務局長・Ludwig Gruber氏へのインタビュー

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