「縫う」という意味のブランド名の「Sew(ソー)」のバッグは、無駄なものがなにもない、シンプルなデザイン。見慣れたカタチのようで、不思議と初めて見たような新鮮さが感じられるバッグです。それはきっと、作り手のセンス。
(提供:佐藤防水店)
「Sew」の企画・販売をしているのは、有限会社佐藤防水店。ファッションのメインストリームから少し距離を置きながらも、魅力的なバッグを作っている佐藤防水店の責任者・
弱点を強みに
佐藤防水店は、大分県で1951年に創業。トラックの荷台に使用する防水シートの生産からスタートした、いわゆる町工場です。
防水生地を生かした事業は多岐にわたり、商店の軒先テントをはじめ、テレビ局のテープを収納する袋や、大工さんの道具入れなどを作っていたことが、いまのバッグづくりの土台になっています。
2011年、会社のPR活動の一環として、本格的なバッグづくりをスタート。佐藤防水店では、厚手の生地を縫う工業用ミシンが使われており、〈実用的なバッグ〉がベース。「薄手のものが縫えない」という「弱点」を「こだわり」に変え、「ヘビーデューティで使える」というコンセプトに。タウンユースのためにリ・デザインした、丈夫で防水性に優れた「SATO BOUSUI TEN」のバッグが完成しました。
コンセプトなしのデザイン
さらに、佐藤防水店が企画とデザインを行い、「作り手は、より良いものを作る技術と、広い視野を持っていなければならない」という考え方に共感する他社メーカーに依頼し、「SATO BOUSUI TEN」とは真逆の「コンセプトなし」「自由発想のデザイン」を打ち出してバッグづくりをスタート。そうして生まれたブランドが「Sew」です。
今季のリバーシブルデニムのシリーズは、自衛隊の支給品などを生産する福岡の縫製工場へ生産を依頼したもの。バッグは、トートバッグの「tesage」、ショルダーバッグの「kaban」、2種類という意味で2wayバッグの「nisyu」、いろんな用途に使える「fukuro」、「kinchaku」の5タイプ。
弊社は実用的なものや労働者さん向けのものづくりをしてきたので、どちらかといえばアンチ・ファッション。
「Sew」は、私たちの考え方に共感してくださるいろんな業者さんと絡んで、企画やアイデアを立て生産してもらっています。いわば、佐藤防水店と外部企業をつなぐハブのような役割を担っています。
「Sew」の自由な発想から生まれたデザインは、使い手にとっても自分が一番自分らしくいられるデザインでもありそう。
どれもデザインはシンプルですが、シンプルなカタチにこだわる理由があります。ものづくりは、過剰に装飾すると破損する、と思っているんです。
破損するのは、目に見えるカタチだけではないのかもしれません。
ストレスなく使えるのは、「SATO BOUSUI TEN」にも「Sew」にも共通するところ。単純で扱いやすいカタチが、用途の可能性と、人の個性を引きだします。
筆者は、サイズが豊富な「kinchaku」や「fukuro」を、旅するときに持ちたい!
収納はもちろん、旅先のレストランで、「fukuro」のSサイズをクラッチ代わりに2つ折りにしてブローチを付けてみたりもできそう。シンプルゆえに、使うほうもクリエイティブに使えます。
「Sew」のリバーシブルデニムシリーズは今シーズンで終わりです。もともと生地は、四国のデニム生産工場で、大量に発注しすぎて廃棄される予定だった素材を使ったものだったので、価格も抑えめにできました。
次は、ウエットスーツ素材加工業社と一緒にものづくりを行う予定とも。
自社ブランドのバッグを作りながら、自分たちでできないことを「Sew」というブランドで完成させていく佐藤防水店。インタビューの最後、「理屈っぽくてすみません」と笑う野田さんでしたが、その声に、職人的な真摯さを感じました。
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