【連載】BIO is LUCKY!

BIO HOTEL®という新しいツーリズムのカタチ 〜その1. CO2削減編

A Picture of $name 中石 真由子 2016. 4. 15

BIOを知り、日常の中に少し取り入れてみると、身の回りのケミカルで工業的なものも、違った角度から見えて、あらためて理解できたりします。

自分自身の中に新しいモノの見方、価値観が生まれる感覚は心地良い! だから、BIOは、ラッキーなこと!

「BIO is LUCKY!」では、BIOでラッキーな情報をご紹介していきます。

一般社団法人日本ビオホテル協会の中石真由子です。

これまでBIO HOTEL®にまつわるモノ・コトをご紹介してきましたが、ここであらためてBIO HOTEL®とは、ヨーロッパ ビオホテル協会の認証を受けたエコ・オーガニックホテルのこと。
 現在、ヨーロッパ7カ国に約100軒あります。

ビオホテル協会監修『kochlust PUR』。各ホテルの料理を中心に生産者や生産物、スタッフなどが登場するブランドブックの1ページ。(Photography: Mayuko Nakaishi)

ビオホテル協会監修『kochlust PUR』。各ホテルの料理を中心に生産者や生産物、スタッフなどが登場するブランドブックの1ページ。(Photography: Mayuko Nakaishi)

ヨーロッパでBIO HOTEL®と認証されるための基準は、次の3つ。

  1. 食べ物や飲みものは全てBIO/オーガニック認証を取得しているものを使用していること
    (※認証のないドイツビール、法律で定められた方法で生産履歴の確認された地元産ビール等は、一部申請により認められる)
  2. コスメ(シャンプー類、コスメ、トイレタリー、エステ・スパプロダクツ等)は、オーガニック認証のもの。もしくは同等以上の安全性が確認できるものを使用していること
  3. CO2排出量の設定基準を下回っていること(再生可能エネルギーを使用する等を含む)、および毎年一定量を低減させること

そのほか、次の項目もポイントとなります。

  • ・必須項目: FSC認証紙または再生紙の使用
  • ・改装や新設時の対応項目:自然素材の材料での建築
  • ・基準外であるものの、ほとんどのホテルが取り組む項目:オーガニック製タオルリネン類の使用
Eggensberger Biohotel Fussenのシャワールーム(2014年5月撮影)。壁に設置してあるBDIH(ドイツ化粧品医薬品商工業企業連盟)認証のナチュラルシャンプー&ボディジェル。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Eggensberger Biohotel Fussenのシャワールーム(2014年5月撮影)。壁に設置してあるBDIH(ドイツ化粧品医薬品商工業企業連盟)認証のナチュラルシャンプー&ボディジェル。(Photography: Mayuko Nakaishi)

実は、BIO HOTEL®の軒数情報は、ときどき変動します。

BIO HOTEL®認証を新たに取得したホテルが増えることはもちろんですが、一方で毎年1回の検査で、基準を満たせなかったホテルが、認証を取り消されているためです。

認証を取り消される理由は、上記基準の「3. CO2削減要件」の難易度が高く、達成が難しいから。

いまでも、ときどき思い出すエピソードがあります。

2年前、ヨーロッパのBIO HOTEL®を訪れた際の出来事。

ダイニングに、ずらりと並ぶ食材、食品。
 全てBIO/オーガニック認証マークがついている光景には圧倒されました。

BIO Wellness Hotel HOLZLEITENの朝食、ディナー時の前菜ビュッフェの一部。このほかにハムやチーズ類もたっぷりと。(Photography: Mayuko Nakaishi)

BIO Wellness Hotel HOLZLEITENの朝食、ディナー時の前菜ビュッフェの一部。このほかにハムやチーズ類もたっぷりと。(Photography: Mayuko Nakaishi)

しかし、各ホテルオーナーとのセッションの際に、彼らが熱心に語ったテーマは、私たちが聞きたかった食事やコスメのことではなく、CO2削減への取り組みのことでした。

彼らにとって、食べ物や飲み物、コスメ、タオルやリネン類、ランドリー等をBIOに切り替えることは、比較的たやすいこと。
 エネルギーや環境に関する課題こそ、目下重要なテーマであるということでした。

では、宿泊業や観光業などに関連するCO2に、何があるでしょうか?

  • ・施設で排出されるCO2
  • ・食材が生産される際のCO2
  • ・食材やその他備品等の調達中のCO2
  • ・ゲストの滞在中に発生するCO2(観光移動にかかるタクシー移動など)

ざっと、こんなものが挙げられます。

じゃあ、BIO HOTEL®では、電気は使えないの? ろうそくやランプを使わないとだめ? 携帯電話は禁止? なども聞かれますが、そんなことはありません(笑)。

施設内での太陽光パネルによるエネルギー生産や、再生エネルギーの購入などで、快適なエネルギー環境が整えられています。

Eggensberger Biohotel Fussenの外観。屋根には太陽光パネルが設置されている。毎年、パネルはどんどん増えていて、オーナーはそのことが自慢だそう。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Eggensberger Biohotel Fussenの外観。屋根には太陽光パネルが設置されている。毎年、パネルはどんどん増えていて、オーナーはそのことが自慢だそう。(Photography: Mayuko Nakaishi)

CO2排出量に関しては、物流の距離が大きく関係するため、必然的に近隣の生産者や加工メーカーのものを調達することになります。

「地元のものを食べましょう、使いましょう」という単に地産地消の旗を掲げる方法ではなく、CO2削減というストイックな指標の下、おいしく新鮮なローカルのBIOの生産物を使うというポジティブな発想が築かれていきます。

また、「自分のBIO HOTEL®で使いたいから有機で生産してほしい」と、近隣の生産者への働きかけも生まれます。

酪農家から友人と一緒にBIOのDemeter認証の野菜農家へ転向したDaniel氏。認証機関の大きなサポート体制が整っている。(Photography: Mayuko Nakaishi)

酪農家から友人と一緒にBIOのDemeter認証の野菜農家へ転向したDaniel氏。認証機関の大きなサポート体制が整っている。(Photography: Mayuko Nakaishi)

こうしたかたちで有機農法が促進され、有機生産物がエリア内で豊富に流通する環境が自然と整ってくるわけです。

まさに一石三鳥というべきでしょうか。

また、肉や魚よりも野菜の方が、CO2排出量は少ないため、積極的に使うという発想もあります。

Eggensberger Biohotel Fussen のディナープリフィックスで選んだベジタリアン料理。(Photography: Mayuko Nakaishi)

Eggensberger Biohotel Fussen のディナープリフィックスで選んだベジタリアン料理。(Photography: Mayuko Nakaishi)

おいしくて魅力的な野菜料理を提供することで、メニューが豊富になれば、ゲストへのサービスも充実する。加えて、CO2も肉より削減できる……そんなしくみも、無理なく成り立ちます。

ホテルを訪れた人の中には、「私はベジタリアンよ!」という方がいましたが、いざBIOのお肉を目の前にすると、「せっかくだから、食べましょう」とプリフィックスで肉料理を選ぶ……という光景もありました(笑)。

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