トレンドがあるがゆえに、どんどん新しい服を買わなきゃいけないと思ってしまうでしょう? 私はそういうのは好きじゃないのよ――そう話すのは、時計や貝殻、ありとあらゆる思い出のモノをコラージュしてバッグなどのアクセサリーに仕立てる「Costumisee Par Liza(コステュミゼ パー リザ)」のデザイナー・Liza Arico(リザ・アリコ)。彼女は、使い捨てられるトレンドに、リサイクルという方法で「アンチ・モード」を突きつけます。
思い出を再構築する”カスタマイズ”
リザのデザインするバッグやアクセサリーは、彼女自らのみの市を尋ね歩いて見つけたヴィンテージアイテムや、建設やボトリング工場の廃材や引き裂かれた雑誌・地図・本など、本来ならばごみにするしかないようなものを中心にコラージュして作られています。そのことについて、彼女はこのように説明します。
全ての作品は、私の思い出か、私のコンセプトに基づいてデザインしているの。そのコンセプトというのは、『全ての物に思い出というストーリーがある』ということよ。
例えばこちらの「CHANEL」×時計のバッグは、「時の思い出」というのがコンセプト。ごみから回収した時計をコラージュしています。次の青い「MusiqueBag」は、彼女の最も愛するものの一つである音楽がテーマ。「そのとき聞いていた音楽を聞くと、そのときのことを思い出すでしょう?」と話します。今回のインタビューはヴォージュ広場に面するカフェのオープンテラスでしたが、そこに決まったのも、アコーディオンの演奏家が楽しいメロディを奏でていたのを見つけたリザが「ここにしましょう」と言ったことでした。
彼女にとってリサイクルとは、「古いものを”カスタマイズ”して新たなストーリーを再び紡げるようにすること」。
私は、時とともに常に生まれ変わっていくものを作るのが好きです。歴史を刻んできたものでなくては自己を新たにできません。ヴィクトル・ユゴーは”創造、それは思い出”と言いましたね。
ファッションが嫌いなデザイナーの”反抗”
アルゼンチン出身の彼女は、元々デザイナーとしての専門教育もキャリアも持っていません。最初は、世界遺産を案内するツーリストとして世界中を巡りました。その後、エヴィアンの環境保護に関する仕事に携わったのち、花の都・パリにやってきました。プレタ・ポルテ服の仕事を手掛け始めたリザですが、「これがファッションの都?」と、彼女を愕然とさせたのは、毎日大量の衣料品が捨てられている様子でした。
私は使い捨てられるファッションというものは嫌いです。
2002年からリサイクルによるデザインを始め、2005年には、自分の夢でもあったブティック兼ギャラリーをパリ3区にオープンさせた彼女。なぜリサイクルという手段を選んだのでしょう?
リサイクルというのは、私が環境に対しての主義・主張を、全て物語ってくれる。次から次へと新しくものが生産されるファッションに”反抗”するのにベストな方法だと思っているわ。
私は人の手で作られたものに愛情を感じます。愛が込められた服は、簡単には捨てられないでしょう? それに、エシカルブランドだと言いながら売れ残った商品を廃棄するブランドも見てきました。でも、世界に1つしかない商品なら、そうして捨てることもできないわね。
笑顔が世界を変える
ブランドを立ち上げた当初は、エシカルファッションそのものも生まれたばかりの頃。「リサイクルなんて、とてもモードじゃない!」 と、誰にもファッションとして認められなかったと当時を振り返ります。
その頃最も大変だったのは、リサイクルだってファッションを生み出せるのだと、みんなに説得することだったわ。だけど私はラティーナなの。だから乗り越えられた……というわけではないけれど、強く、笑顔でなければ誰にも認められないし、まして世界を変えることなんてできないわ。
強く気高く。新しいことに果敢に挑戦し、数々の賞を受賞した彼女は、いまでは大御所として他のデザイナーにアドバイスを求められる存在。
ファッションは確かに流行で、時代を反映するもの。だからこそ、そのときの自分をしっかり映す服を選択して、ともに思い出を刻み込んでいくことで、「トレンド」の自分らしい付き合い方もデザインできるのではないでしょうか。朗らかで、周りを明るくする彼女の強く優しい笑顔に、自分の軸でファッションと向き合うことの楽しさを感じました。