BIOを知り、日常の中に少し取り入れてみると、身の回りのケミカルで工業的なものも、違った角度から見えて、あらためて理解できたりします。
自分自身の中に新しいモノの見方、価値観が生まれる感覚は心地良い! だから、BIOは、ラッキーなこと!
「BIO is LUCKY!」では、BIOでラッキーな情報をご紹介していきます。
一般社団法人日本ビオホテル協会の中石真由子です。
私たちは、食べ物をはじめとして、さまざまな製品の原材料やその生産方法について、少しずつ意識を向けるようになってきました。
でも靴やカバンに使われている動物の革が、天然素材の一つであることは、いつの間にか忘れ去られているのが実情。
実際に、私もそうでした。
ナチュラルで、自然環境に配慮した革の存在
革製品プロダクトメーカーである「YES CRAFT INC(以下、yes)」との出会いは、昨年2015年の秋のこと。
「そういえば、革も天然の素材! 見落としていた!」と、はっとしたのを覚えています。
「yes」代表・近藤陽輔さんは、大阪・天王寺区で皮革の企画・開発をするハシモト産業株式会社の出身。
ハシモト産業は、現在、世界中で大きな評価を受けている「栃木レザー」を世の中に送り出した会社です。
職人たちの経験と技術が結集して生み出されるヌメ革の上質さには、天然の素材に真摯に向き合う姿勢、そして環境配慮という点においても、素晴らしい背景があります。
スクエアに込める思い
近藤さんは、長年、素材に特化してきたハシモト産業で、ほかの企業から委託を受けて製品を作るOEM事業部を立ち上げます。
各社のものづくりをサポートする経験は、毎日なにげなく接していた革とあらためて向き合うきっかけに。
「分かっていたつもりでも、単純なものではなかった」と、革の奥深さを知ったといいます。
そして、新鮮で謙虚な気持ちが、「yes」というブランドへとつながりました。
「yes」のプロダクトの特徴は、なんといってもスクエアパーツのデザイン。端材や残反の組み合わせではなく、一枚の革が材料です。
最初に全部カットし、もう一度組み合わせて新しい一枚の素材に作り変えるとのこと。
その理由を、近藤さんにお聞きしました。
―― なぜ、わざわざ一枚革を裁断するのですか?
近藤さん: ほとんどのメーカーでは、革の使いやすい部分をバッグに、それ以外の部分や端切れを小物やパーツなどにと、合理的な使い分けをするのが一般的です。
しかし、皮の端や使いにくい部分にこそ、革本来の表情があります。
個性ある斑点やキズ、シボ(シワ)などを、どうすればうまくデザインに落とし込めるだろうかと、そればかり考えていました。
ただし、革の残反の寄せ集めでは持続性がありません。また、それが正直にアイテムにも反映され、リサイクルな商品だと思われてしまいます。そういったプロダクトは、すでに市場でもたくさん存在します。
「yes」では、まず一枚革すべてをさまざまなサイズのスクエアパーツに分割し、「パッチワーク」や「
―― なぜ、スクエアなのか?
近藤さん: スクエアは7㎝にはじまり、ほかに14.5cm、4.5cm、3.8cmなどがあります。作りたいアイテムや全体のバランスを計算しながら、ベストなサイズを割り出します。
スクエアという1コマは、フォトフレームのように人の目線が集中しやすくなります。小さい面積の中で、革の微妙なそれぞれの表情を感じ取ってもらうことを意識しています。
―― 今後の展望は?
近藤さん: このスクエアを通じて、本当の革の良さを伝えていくという、当初の決意は変わりません。
もちろん、一枚革のプロダクトにも興味はあって、「『yes』らしいね」と思っていただけるような表現方法を模索中です。
皮、そして革が、どんなふうにどんな人たちの手をわたって、ここにあるのか。たくさんの職人の知恵と経験、技術が詰まっている革の魅力ーー想像を巡らせながら、そのプロダクトとともに個性あふれるライフスタイルを築いていただけるような、そんなメッセージある商品を開発したいと、いつも思っています。
革を育てる、育てられる
革の醍醐味の一つは、経年変化。
革が自然と「なじむ」というよりも、「革を育てる」という能動的な発想があると、距離も早く縮まって楽しい気がします。
一つひとつのキズやでこぼこ、スレの具合を許容しながら革を育てることは、もしかしたら変化を受け入れる新しい自分自身へと、革に育てられていることなのかもしれません。
劣化ではなく、正しく変化してくれるもの。
変化を受け入れ、変化を遊ぶという心の余裕が、これからの大人のもの選び。たしなみの一つかもしれません。
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