デンマーク出身のテキスタイルデザイナー・Rosa Tolnov Clausen(ローサ・トルノフ・クローセン)さん。彼女の目標は、デザイナーじゃないいろんな人を巻き込んだ"インタラクティブな"テキスタイルづくり。
そんなローサさんが「Design with People(人といっしょにデザインする)」をテーマに、ヨーロッパでのさまざまな取り組みを紹介します。
第2回めにご紹介したフィンランドのデザインスタジオ「COMPANY」の取り組みをもう少しご紹介。
「COMPANY」の取り組みは、職人たちといっしょに伝統技術を革新させています。
2015年6月、私はフィンランドのデザイナーチーム「COMPANY」の新しいスタジオ「Work x Shop」を訪ねた。首都・ヘルシンキの中心にあるこのスタジオは、「COMPANY」の作品を販売するだけでなく、新しい作品が生まれる場所でもある。
「COMPANY」の2人のアーティスト・Johan OlinとAamu Songは、顧客に向けて自分たちの作品がどのように生まれているか、見せる機会を意識的に作っているという。そこで私は、彼らの最新の取り組みについて聞いたのだった。
青森県立美術館で展示される「北日本のヒミツ」
当時彼らは、「Secrets of Northern Japan(北日本のヒミツ)」という作品を作っていた。「Secrets of…(〜のヒミツ)」シリーズは、その地方特有の伝統工芸品に着想を得たシリーズで、「Secrets of Northern Japan」は、青森県立美術館で展示されるとも。聞けば、アーティスト・奈良美智に招かれ、同美術館のプロジェクト「PHASE (ファーゼ) 」に参加するのだという。これは、同美術館の空間を最大限活かした展示や企画を実施する企画で、2014年から行われている。
2014年に「COMPANY」の2人は北日本を訪ね、その土地に伝わる伝統工芸品に触れ、その作り手たちと交流したという。そして、伝統工芸職人たちとのコラボレーションに至った。
例えば、共同制作をした一人は、こけし職人。こけしのフォルムと人形としてのビジュアルを起点とし、彼らがデザインしたのは、こけしが脚になったスツールだった。
テキスタイルの作品もあった。南日本の技術ではあるが、久留米絣を生かした作品だ。こけしの特徴的な表情を、久留米絣にプリントした。
手仕事に宿る作り手の魂
青森県立美術館でのトークショーで、「COMPANY」の二人は、手仕事に宿る魂(Spirit)について言及していた。実際、「北日本のヒミツ」の作品たちは、これまで彼らが手がけてきた「Secrets of…」作品の中でも、職人さんたちの魂を感じるものだったように感じる。「COMPANY」は実際、「魂」を意識してデザインしたと話していた。
手仕事には、作り手の思いが宿る。機械でできたものと違って、一つ一つ完璧に同じものが仕上がるわけではない。一つずつそのときどきの判断があり、技術を駆使するだろう。そうして、作りながら魂を込めていくのだ。
これはテキスタイルでも同じこと。同じ指示書を出しても、織り手が異なれば、その表情は変わる。だからこそ、唯一無二のテキスタイルができあがるのだ。
さらに、買った人が使いながら、その人の魂までもが込められると「COMPANY」は付け加える。
そのとおりだ。例えばセカンドハンドの生地。どんな場所で、どんなときに着られていたのかという、生地が持つ持主の記憶。それが、その生地だけが持つ雰囲気になる。
展示では、そうした「魂」は、映像作品として表現された。人のかたちをとったそれぞれの作品の「魂」が、パフォーマーたちによって表現されていた。
伝統工芸品に新しい見方を
「COMPANY」は、伝統工芸に新しい解釈を加えた。こけしはこけしでしかなかったものが、新しい役割を得た。
彼らの挑戦は、伝統工芸品に新しい可能性をもたらすものなのだ。
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