オランダにベースを置くブランド「Elsien Gringhuis(エルスィン・グリンフイス)」。2009年のデビュー以来、ベルリン・Createurope「ベスト・アヴァンギャルド・デザイナー」、イタリア・Mittelmodaで「年間ベスト・クリエイティブ・コレクション」などを受賞し、そのオリジナリティで認知度を高めてきた。
そのオリジナリティは、そのいたってシンプルな最小限まで削ぎ落としたデザインの中に存在する。「Less is more(少なくするほうが効果的だ)」といわれるが、これは、無駄を削ぎ落しすほうがより美しく効果的であるという考え方。これに対し「Less is bore(少なくすると退屈だ)」という皮肉な言葉もあるが、その実、美しいミニマルデザインと退屈なデザインは紙一重。「Elsien Gringhuis」のセンスは、このぎりぎりをするりと飛び越える。
コンセプトは「Maximize the Minimum(ミニマルを最大限に)」といい、余分なものをそぎ落とすことで、着る者により明確にメッセージを届ける「Elsien Gringhuis」にそのデザイン・フィロソフィーを尋ねた。
―― まず、あなたのバックグラウンドについて教えていただけますか?
4歳のときの写真が残ってるんだけど、母といっしょにミシンの前に座っている写真なの。その頃からきっとミシンに触っていたのね。10歳のときに、初めて1枚の服を仕上げたことを覚えているわ。でも、ファッションが好きというより、デザインすること、そして手で作業して作品を仕上げていくことが好きだったの。実際、私は音楽のほうが好きで、夢はベーシストになることだったわ。
20歳のとき、学校でファッション技術の講義を取って、私がいるべき場所はここだ! と思ったの。だけど同時に、ファストファッションのことも学んで、そういった使い捨てでゴミをたくさん生み出すビジネスモデルは、自分ならやりたくないなと思って。自分でブランドをやるなら、フェアで、大地や自然にやさしいサステナブルなものづくりをしようと決めたのよ。
学校を卒業してすぐ、2008年に自分のレーベルを立ち上げ、2009年にリリースしたわ。
―― フェアでサステナブルなものづくりはたいへんではないですか?
みんなそうやって私に聞いてくるわ。でも、サステナブルな方法でハイファッションの服を作るのはぜんぜんたいへんでもないのよ。
確かに、欲しい質感の素材がないときもあるけれど、その問題は、ふつうに服作りをしていてもあると思うの。どっちにしろ服作りはたいへんなんだから、どんな困難を選ぶかってことだけなのよ。
―― どうやって服をデザインしていますか?
まず、ゴミになる端材がでないよう工夫していて、いままでにないパターンづくりを目指しているわ。シンプルでミニマル、タイムレスでありながら、エレガントでラグジュリアスなシルエットを常に心がけているの。
次にプリントだけれど、これもテキスタイル産業で廃棄される使用済のインクを使っているの。それらを8色混ぜて自分のオリジナルの色を出しているわ。プリント・デザイナーのAliki van der Kruijsとのコラボレーションでできたテクニックなの。使用している素材は8割がなにかしらの認証を受けたものよ。
そして地域の工場に縫製をお願いしているんだけど、オランダのクラフツマンシップを盛り上げていきたいの。それに工場が近いほうが、状況に応じて柔軟に対処できるし、輸送コストも削減できるしね。
最後に、ファッション業界は2シーズン制で、どこも春夏・秋冬コレクションを紹介するわね。私はそれをしないの。日々植物が芽吹くように、そのときそのときに新しい服が生まれるのよ。それらを1冊の本にまとめていて、章ごとに分けているの。生地があるかぎり、どの服も再生産可能よ。無駄な工程を減らすことで、サプライチェーン全体を作り替えていきたいわ。
―― そうしたサステナブルな服作りが、あなたのコンセプト「Maximize the Minimum(ミニマルを最大限に)」 というところにつながっているのですか?
大事にしていることは、本当にシンプルなの。いつまでも大切にされる服を、無駄のない方法で、最上の素材を用いて作ること。お客さまに届けたいのは、最上のデザインと着心地。でもそれは、届ける「ミニマル」のところでもあるんだけどね!
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