中国系移民が生み出す「Made in Italy」が抱える矛盾

2014. 4. 3

「Made in Italy」のタグはすなわち何十年と受け継がれた伝統と技術の証だ。しかし、その意味合いが少しずつ変わってきているようだ。移民が増え、工房の監督・監査が足りておらず、経済状況も芳しくないいま、「Made in Italy」の商品は過酷な労動を強いられている不法入国の移民の手によって作られているかもしれないのだ。

アジア、アフリカ、東欧からの移民がイタリアで増え始めたのは、1970年頃。しかし爆発的に増えたのは2000年代に入ってからだ。その中でも過去4年間、群を抜いて多いのが中国からの移民だ。彼らはトスカーナ州・プラトに集積し、欧州中でも最大級のチャイナタウンを形成したが、そこはテキスタイルとアパレル産業のメッカでもある。

 Image: fashionbi

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1990年代以降、プラトにおける中国系移民の人口は増え続け※wikipedia、街には中国系食料品店や中国語の看板、とにかく安い零細ファストファッション企業が増えた。プラトは長らく上質なアパレル製造を担ってきたエースだが、家族で職人技を受け継いできたイタリアの工房はファストファッションの波に飲まれ、影を潜めてしまった。

代わって台頭したのが、生活のために熱心に働く中国系移民たちだ。プラトには、彼らが働く低価格でチープなアパレル製品を作る工場が5,000以上ある。素材も当然中国から輸入され、できた商品は低〜中価格帯で世界中で売られる。この状況は、イタリア人と中国人の間に亀裂をもたらしつつある。イタリアで生産されたアパレル品は、イタリアに何も残さず中国の利益となってしまうからだ。

中国系移民に対し安いアパートを貸したり、工場地を貸して中国系移民を安く働かせることで甘い蜜を吸っている人もいるようだ。その労動は過酷で、工場内に住み、反物の真ん中の空洞が持ち物を置いておくスペースにし、毎日14時間そこで働いているという。それでも中国で得られる収入より高いには高いが、環境は決してマシではなく、工場の安全基準はないに等しい。工場のイタリア人オーナーも中国系現場監督も、その事実は知っていても対策を練ることはない。さらに、こうした不正工場は、2年ごとに工場を閉鎖して新たな企業名で再開することを繰り返し、税金の支払いや行政による検査などを逃れている。

2013年12月1日、そんな工場の1つで火災事故が発生。7名の中国系移民が焼死した。工場の窓は鉄格子で囲われドアは施錠され、逃げ道はなかった。この一件で取り締まりが強化され、不法移民の摘発が激しくなった。しかし、強制退去させられた移民たちは、その後どうやって生活をするのだろうか? ファストファッション製造は確かに、他に技術もない彼らの生活を支えていた。


参考:SILVIA ALOISI ‘Insight: Italy’s Chinese garment workshops boom as workers suffer’ Reuters, 2013/12/29

This Article is Originally from...

Leena Oijala 'HOW SUSTAINABLE IS ‘MADE IN ITALY’ FASHION?' ECOSALON , April 2, 2014

>> http://ecosalon.com/how-sustainable-is-made-in-italy-fashion/

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