メキシコには恋すべきものがたくさんあるが、「Hacienda Montaecristo」の設立者・Francesca BonatoとJacopo Janniello Ravagnanが、メキシコの何に最も恋したかというと、フリーマーケットに骨董品、そしてその背景にいる人々の話に耳を傾けることだった。同国に惚れ込んだ2人は、現在はユカタン半島に在住しており、2007年にアパレルブランド「Hacienda Montaecristo」を立ち上げた。
立ち上げた経緯も突然の恋のようにドラマティックだ。古いフォード車でユカタン半島を放浪していた2人は、いきなり大降りのスコールに見舞われた。そこで仕方なく、近くで見つけたいかにも見捨てられたような無人のビルに避難をした。後に2人は、そのビルが1960年代に稼働していた生地の生産工場であったことを知るのである。運命を感じた2人は、この廃墟と化した工場に再び息吹を吹き込み、ファッションを発信しようと思い立つのである。
「Hacienda Montaecristo」は、地域の独特な生地をバッグやショール、靴などに使用し、地域の人々の力を借りながら古き良き技術をオーガニックコットン製のアパレルアイテムやレザーアクセサリーに仕立てている。そんな同ブランドは、経済的にもそして生地のルーツとしても、ユカタン半島に深く根付いたものを目指しているという。さながら、アシエンダ(伝統的な大農園)がその土地に根付いていた頃のように。当時、アシエンダは多くの人々が集う場所で、共に働きながら若者は年長者から技術を受け継いでいた。アシエンダで、技術とクラフトマンシップが脈々と受け継がれていたのである。
商品も、地域に根ざしたものを作る同ブランドだが、問題が1つあった。その伝統的な技術の一つ、女性が巻くストール「Rebozo」の繊細な生地を縫う技術ががほとんど失われかけていのである。そこで奔走した2人は、現在はRebozo生産のキーパーソンでもある。
リラクシングながら上質な技術で洗練された印象を与える「Hacienda Montaecristo」のアイテムは、VOGUEやHarper’s Bazaar、the New York Timesなどでも取り上げられ、注目を集めている。蘇ったユカタン半島の美しい技術が光る同ブランドのアイテムは、メキシコに恋するもう一つの理由になるだろう。