【連載】我的上海的生活【全10回】

「独身の日」に見る中国EC事情〜たくさんのものが買われる中でぶれないたった一つのこと

A Picture of $name 斉藤 霞 2014. 1. 10

你好! 2014年みなさま温かな新年を迎えられたでしょうか? 私は上海蟹を食べる機会に恵まれ、上海の秋冬を大大大満喫しています♪ と思っていたのですが……12月に入り上海の空気は最悪な状態に……絶賛ひきこもり中です!

そして中国語学校を卒業した後、フリーでデザイナーとしての活動をスタートさせました。今は中国国内の工場と契約し日本のアパレル向けに企画提案をしています。第三国に生産拠点がどんどん移行していく流れの中で中国の工場に求められるのは「クォリティー」と「提案力」。ですが、「工場はモノを作るのは得意だが、トレンドやマーケットの特徴まで把握することは難しい……」ということで、工場の方々と私のようなデザイナーが協力し、アパレル企業に対して提案していくというスタイルが、現在の中国の工場では増えつつあります。

上海ガニ、市場で買って茹でてみた

上海ガニ、市場で買って茹でてみた

デザイナーが具体的に工場と関わっていくことで、まず一番はサンプルの的中率を高め(無駄なサンプル作成をなるべく減らす)、オーダー数を増やし、また在庫になっている生地を利用した提案など、さまざまな可能性を実現できるように取り組んでいます。これは「クライアントにとっても」「工場にとっても」「環境にとっても」有益なことにつながります。まだまだかけ出しですが、さらに現場に近づくことができたので、よりリアルなエシカルファッションの可能性をどんどん模索していきたいなと思います!

あっという間に9回も記事を書いてきたのかと自分でも驚いていますが、今回はニュースでも話題になっていた中国のECサイトについてシェアしたいと思います。

日本でも個人でECサイトを作るのが簡単になり、誰でも手軽にお店を出せるようになってきましたね。数年前ではネットでモノを買うなんて抵抗がある……と思っていた人も今はだいぶ減っているように感じます。便利ですもんね! 私もよくお水とかお米とか重たいものはネットのスーパーで買っています。誰でも簡単に出店し、簡単に購入することができる。特に私も含めモノを作る人たちは、「ついにこんな時代が来た!」とうれしく感じている人が多いのではないでしょうか? 手作り品や職人の一点ものなんていう実店舗では在庫を抱えにくいような商品も売りやすい環境になってきているのですから。より良い品物を求めれば、簡単に手に入れることができるようになってきていると思うのです。ただその反面、B級の大量生産品やニセモノも出回りやすくなっているという事実は否定できません。

11月11日、さぁ何の日でしょう?

日本では「ポッキー&プリッツの日」が最近では有名でしょうか?(検索すると他にもいろいろな記念日になっているようですね。)ここ中国では1人がたくさん並んでいるように見えることから「独身の日」と呼ばれています。「バレンタインデー」が恋人たちの日なら、彼氏や彼女がいない境遇を祝う独身万歳! な日が「独身の日」なのです。祝日ではないので、この日は独身の友達どうしで仕事帰りにディナーを楽しんだり、頑張っている自分へのご褒美プレゼントを買ったりと、それぞれこの日を楽しみます。

そんな「独身の日」ですが、ここ数年はなんと「ネットショッピングの日」とも呼ばれるようになってきているのです。ECサイト上でも「双11(ダブルイレブン)」といわれ、11月11日の午前0時から大幅割引など大々的にキャンペーンが行われます。私の周りの友人たちもパソコンの前に陣取り、みんな徹夜してそれぞれ欲しかったモノをゲットしていました!

双11タイムライン

双11タイムライン

「独身の日」を「ネットショッピングの日」として仕掛けたといわれているのは、中国ネットショッピング大手のアリババグループ(※日本でいう楽天みたいな感じで、以前にも紹介した「淘宝(タオバオ)」や「天猫(TMALL)」などのショッピングサイトを運営)。この日がどれだけ盛り上がっているかというと、アリババグループは昨年この日1日だけで約2500億円売り上げてしまったのです。そして今年はなんと約5600億円!!!!! もう桁が大きすぎて私にはよく分からなくなってきましたが……とにかくこの日だけでネット大国アメリカの2大ネットショッピングデーといわれる、「ブラックフライデー」と「サイバーマンデー」両日の売上を軽く越えてしまったのだそうです。

またもや中国に来て、恐ろしき消費力を魅せつけられたなという感じでした。【中国 独身の日】で検索するとさまざまなニュースが見られると思うのでぜひ。急激な出荷量の増加に伴う配送業者の対策や秒数ごとの売り上げ推移を載せている記事もあり、気持ち良いほど売れている様子がおもしろいのでお勧めです。

双11の影響で荷物パンパンのバイク便を多数目撃

双11の影響で荷物パンパンのバイク便を多数目撃

売上約5600億円! どんなものが売れているの?

さてこんなものすごい金額を売り上げて私が気になるのは……一体どんなものがどれだけ売れたのだろう? ということです。衣料品の割合はどれくらい占めているのか? またその中でエシカルに関連するモノはどれくらいあるのだろうか? そして買われたモノは本当に必要なモノなのだろうか??

「双11」で売れたモノについて分析しているサイトによれば、消費の傾向は2つに分かれるとありました。一つ目は、日用品など普段よく使うモノを安くまとめ買いしておくタイプ。二つ目は、ふだんは高くて買えないモノや特別なモノを買うタイプです。前者でよく売れたモノは、なんと女性用の下着なんだそう! それから粉ミルク、紙おむつなどのベビー用品が次いで多いそうです。後者は電化製品やブランド品など、「ご褒美アイテム」になりそうなモノです。それからよく売れたおもしろいモノでは「生命保険」なんていうのも! 本当になんでも買えます!

たくさんのものが買われる中でぶれないたった一つのこと

こうしてみるとたった1日で、いろんな人がいろんなモノを選んだり選ばなかったり、人の価値観っていうのは多種多様、十人十色だなーとあらためて実感します。ただ世界中でぶれないたった一つのことは誰もが「良いモノ」を手にしたいということ。ただそれだけなんだと思います。今の世の中だと広告とか販売戦略に惑わされて、シンプルだけどうっかり忘れてしまいそうなこと。

それに良いモノを作り続けるって意外とたいへんなことなんですよね。エシカルファッションについて考えてるときも、たまに「じゃあこれはどうなるの?」とある側面から見たらエシカルなことも別の側面から見たら、「あれ? もしかしてエシカルじゃない?」ってこともたくさんあるじゃないですか。だけど、「良いモノ」を作りたい!「良いモノ」が欲しい!っていう思いさえ忘れなければ結果すべてが良い方向に向かっていくのかな? と。良いモノを作り続けていくためには、みんなが良いモノを選んでくれることが必要です。今まで代替品や妥協してモノを選ぶことはなかっただろうか? 大量にモノが動いた1日を振り返り、自分自身の買い方についても考えてみるのでした。

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