東日本大震災で被災した宮城県東松山市・矢本で結成された編み物製作チーム「Tsubomi(ツボミ)」が支援物資の衣類などで製作した裂き編み作品をまとめた1冊が11月に出版された。バッグ、コサージュなどのファッション雑貨からルームシューズなどの生活小物まで、美しい写真で並び、巻末には編み方のレシピも掲載されている。
エシカルなニットデザイナーの野田治美氏が手仕事を通して、生きがいや人との交流を築き、不安で困難な仮設暮らしの心の支えとなる活動をしたいと立ち上げられた「Tsubomi」。震災後の雇用確保が難しい状況の中で、誰もができる小さな手仕事から雇用と笑顔を届けようと、まずは少額であっても収入を得られる仕事を提案した。「Tsubomi」のアイテムは、支援で届いた衣類のほか、家庭や企業で使われなくなった衣類や布、糸などを再利用してアップサイクルして制作。そのクオリティの高さはもとより、丁寧なものづくりが評価され企業や個人からの注文を請けている。
本書は、女性たちの制作する様子などの写真も豊富なのも特徴。さらに女性たちの「そのときの記憶」という被災したその瞬間の書かれたページもあり、あらためて東日本大震災がもたらした傷の深さを思い知らされる。しかし商品の写真を見ていると、「それまで集会所にも来たことがなかったかたたち、顔も知らないかたたちが指編みを通して交流し合い、会話が弾む、そんな状況に私たちも生かされている喜びを感じた(本書p.2)」と野田氏が綴るように、「Tsubomi」のアイテムは活動を通じて人のつながりが編まれたものなのだとあらためて感じる。このような構成から本書は、全体から触れ合う温もりを読み取ることができる1冊となっている。
本書の購入費の一部は、彼女たちへの支援となる。購入はオンラインおよび全国書店にて。また、「Tsubomi」の商品は、こちらからも購入することができる(商品取扱ショップリスト有)。
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