8月18日より3泊4日の日程で開催された持続発展教育振興機構(ESDP)とこども国連環境会議推進協会による、中高生、大学生対象のESD Forum 2013 Summer Session。同セミナーでは、「環境と人間」コースと「社会と人間」コースの2コースに分かれ、持続可能な社会づくりに取り組む企業による講義や、その講義を受けてグループワークに取り組みます。「社会と人間」コースには、中学生12名、高校生16名、大学生12名の40名が参加しました。
8月20日の3日目は、「H&Mジャパン」とのプログラム。サスティナブルなファッションの未来を目指す同社が行うさまざまな取り組みについて学びました。ほとんどの学生にとって身近な存在であるはずの「H&M」。その知らなかった側面を知り、学生たちは何を考えたでしょうか?
「H&M」のCSR活動
まず、同社PRマネージャーの工藤さんから、「H&M」のサステイナビリティについての講義。1947年に第1号店をオープンして以来、800以上のサプライヤーを擁し、2776店舗を世界に抱える一大ブランド「H&M」。「『H&M』は、『最良の品質の商品を最良の価格で提供する』という企業理念の下、あらゆる面でサステナビリティを重視して経営をしています。さまざまな取り組みを総称して『H&M Conscious』と呼んでいます」と工藤さんは説明。具体的にどういったことでしょうか?
などなど……みなさんはご存知でしたか?
工藤さんは、その効果も説明しながら「ファッションを通して、サステイナビリティの意識を高めてほしい」、「ファッション性とサステイナビリティは両立できる」と締めくくります。
「H&M」の服の回収活動
続いて、CSRを担当するホールズさんより今年3月から開始した服の回収活動について説明。この活動のスローガンは、「Don’t let fashion go to waste.」。全世界48カ国の「H&M」の店舗で取り組まれています。「捨てられている服の95%は、再利用できるものです。「H&M」では、質や状態、ブランドにかかわらず回収しています」。
回収された服は、「H&M」のパートナーである、I:CO-System社の協力により、①42%が古着として世界各地で販売され(Re-Wear)、②20%が他の製品へと加工され(Re-Use)、③32%が繊維として再生の道をたどり(Re-Cycle)、④いずれにも適さなかった6%はエネルギーとして活用されているそう。日本では3月以来、合計90トンを超える古着を回収したといいます(2013年8月13日現在)。
実際に店舗へ!
講義の後は、「H&M」新宿店の見学へ。3つのグループに分かれて、説明を聞きながら店舗を回りました。サステイナブルコットンを使用した商品に付けられた、他の商品のものとは異なるタグ。食用の牛や豚の副産物として出た革を使用したシューズ。ファーアイテムは全てフェイクファーを使用……などなど、実際にさまざまな商品に触れました。また、「H&M」では一つのアイテムにも豊富なサイズを用意していますが、その理由も「人種や体型に関係なく、楽しむことができるファッションを」との思いがあると説明。さらに、買った商品を入れるショッパーもリサイクル素材を採用しています。
ふだんなにげなく見ていた商品の見方がガラリと変わっていきます。学生たちも真剣にメモを取り、説明に耳を傾けます。
ワークショップ「気づいたことは? 改善点は?」
お昼を挟み、午後は講義と店舗見学で得た情報を元にグループごとでワークショップ。前半は、「H&Mのサステイナビリティ活動において、気がついたことや改善点」を話し合いました。では、学生たちはどういったことを挙げたのでしょうか?
課題として最も重視されたのは、「実際に店舗で見たタグや、サステイナブルコットンの説明が分かりにくかった」という点。「イラストなどを用いて、店内のサインを分かりやすくする」「文字を大きくする」など、ビジュアルに訴える改善方法が多く提案されていました。服の回収についても、「服がリサイクルされる過程を具体的に表示する」ことで、関心の低い人に対してもアプローチを行うことを提案するグループもありました。
その他にも、CMについて「ファッショナブルであることは伝わってくるが、どのように環境に配慮されているのかが分からない」という意見が。「サステイナブル」であることと「ファッション性」のどちらをより強く伝えるべきか。いかにしてバランスを取っていくべきなのかを話し合っていました。これは、現在も多くのエシカルブランドが抱える課題。学生たちは、「服だけでなく、素材や取り組みについてのアプローチ」と「ファッションとしての魅力をアピール」することを両軸で行うことを提案していました。
また、洋服に対する取り組み以外にも、「入り口の自動ドアが付近の歩行者に反応して開きっ放しになっている」ことに着目し、「地下鉄のように、入店するときだけボタンを押し、ドアが開閉するしくみを導入してはどうか?」と、具体的な提案もされていました。
後半のワークショップや振り返りでも、「企業に責任を押し付けるだけでいいのか?」「その課題に対して、自分たちなら何ができる?」という視点で議論。「文化祭でサスティナブル ファッションの試着会やファッションショーをやろう」「卒業するたびに大量の制服が捨てられていく。学校に古着回収ボックスを置くべきだ!」なと、具体的で実現性の高い提案がつぎつぎと出ていました。
「サマーセッションに参加するまで、H&Mの取り組みを知らなかった」と話す学生たちが多く、ファッション性と社会貢献性をどう絡めて伝えていくのか? という課題はまだまだ難題の一つです。
一人ひとりの可能性は大きい!
H&M株式会社PRマネージャー・工藤さんは、「『H&M』の取り組みはまだあまり知られていません。私たちもそれを課題に感じながら、今回のプログラムに参加しました」と話します。「意識の高い参加者のみなさんの意見を聞いて、こちらが勉強をさせて頂きました。この世代ならではのSNS等の提案があったり鋭い質問があったり、非常に刺激的な時間でした。今回頂いたご意見は、日本だけではなくグローバルのH&Mにも共有する予定です。このような機会に参加できて本当にうれしいです」。