昨年2月に新しく登場したエシカル×リュクスなレザーブランド「andu amet(アンドゥ・アメット)」。スタートしたのは、かつて日本のメーカーでプロダクトデザイナーとして働いていた鮫島弘子さん。大量生産で安価に作られる製品がものすごいスピードで消費・破棄されていく様子を見て、現状の大量生産・大量消費に疑問を持ったことから始まりました。それまで勤めていた企業を退職して、青年海外協力隊にデザイン隊員として参加。派遣されたエチオピアで感じたたくさんの<可能性>。それは、エチオピアで見つけたたくさんの<HAPPY!>でした。
ブランドがローンチしてちょうど1年。ブランドのその後を伺いました。
「社会」起業家ではなく、一起業家として
―― 昨年はローンチ早々数多くのメディアに取り上げられて大躍進でしたね。
ブランドとしてはまだまだですが、おかげさまで少しずつ応援してくださる方の輪が広がっていくのは自分でも感じています。本当にお一人お一人に感謝の気持ちでいっぱいです。
―― 社会起業家としても注目を集め、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2013<キャリアクリエイト部門>も受賞されましたね。本当におめでとうございます。
ありがとうございます。ブランドとしてローンチしてからはまだ日が浅いですが、ここに来るまで長い苦難の道のりがあったので(笑)、このような賞をいただけてとてもうれしかったです。
いまのところ「社会起業家」と見られることもあるのですが、自分では自分を社会起業家とは名乗っていないですし、これからも名乗ることはないと思っています。「andu amet」はエチオピアで生産しているため、フェアトレードとか、途上国での雇用を創出しているという側面が特に注目されがちです。でも私自身は、1万人集めて単純作業で作らせるよりも、20人の熟練工を育て、価値あるものを作らせたいと思っているんです。すぐにゴミになってしまう安価な1万個を売る代わりに価値ある20個を作って、きちんとメンテナンスなどの対応もして、長く使ってもらえるほうが、環境にはもちろん貧困問題を考えるうえでも重要だと考えています。
世間一般的には、途上国で「より多くの」雇用を創出することのほうが、よりエシカルだと考える人も少なくないでしょう。社会起業家を名乗ることで自分の大切な軸がぶれてしまうのは嫌。だから「社会」起業家ではなく一起業家でいたいと思っています。
私の軸であり、私が挑戦したいのは、あくまでもエチオピアで「いいものを作る」ということ。それを通じて社会により良い変化をもたらしたいとは思いますが、そのためにものづくりがおろそかになるなど本末転倒になることがないよう常に心がけていきたいです。
次の目標は150万円
―― ブランドを立ち上げる前はどんな課題がありましたか?
どんな……なんて一言では答えられないくらい、それはたくさんありました(笑)。そのたびにトライ&エラーを繰り返してきました。明らかに間違っていたこともあるし、何度かの挑戦の後にうまくいったこともあります。うまくいっているように見えているだけで、本当にそれが「正しい」ことだったのかというのも、神様でもない限り分かりませんけどね。でも、少なくとも自分が信じることを実行に移しているので、不必要なストレスはなくなったとはいえますね。
―― では、ブランドが走りだして一年近くがたったいまの課題はなんでしょう?
第一はやはり生産体制の強化です。現在はまだまだ不安定で、お客さまには数カ月お待ちいただいている状況です。十二分に余裕を持った生産スケジュールを組んだつもりでも、結局トラブルなどが発生して間に合わなくなってしまったりしています。現在「Ready for?」というソーシャルファンディングサイトで支援を募っていますが、ここで集まった支援金は、この生産体制の強化と安定ために使用させていただく予定です。
第一目標としていた「100万円」は、おかげさまで既に達成することができましたので、こちらのお金で新スタッフを雇用したり、彼らが使う機材などを購入したりしようと考えています。さらに第二目標である150万円も到達することができたら、工房の移転もしたいと考えています。現在の工房はとても小さくてこれ以上新たなスタッフを雇い入れることができないんです。大工場を作る気はないけれど、あともう少しだけ大きい工房へうつって新しいスタッフを雇って、安定した生産ができるように体制を整えていきたいですね。
「お情け」の枠を抜け出す
―― スタッフが増えるほど新たな難しさも出てきそうですが……
そうですね。まずやはり納期を守るということの重要度をいま以上に伝えていかなければならないと感じています。エシカルないしフェアトレードブランドだから納期遅れも仕方ない、と思われたくない。品質についても同じです。こちらがプロとして仕事をしない限り、小売企業さまから見たときに「社会起業・社会貢献=お情け」の枠を抜けだせませんから。こういったことは言葉でいうのは簡単ですが、それだけでは何も変わらないので、
―― 文化・価値観・商習慣……いろんなことが異なることで、伝わりにくいこともたくさんあるのですね。
なんで分かってくれないの?! と思うことも含め、日々、嬉しいことと苦しいこと、両方起こります。でも、それは人と仕事しているのだから当然のこと。私も彼らのことをもっともっと知っていかなくてはなりません。
日々新しい壁にぶつかって へとへとになったりもするのですが、それでもやっぱりエチオピアには<HAPPY!>がたくさん溢れています。そんなエチオピアの<HAPPY!>に触れるたび、それを日本へ届けたいと燃えてしまうんです。「andu amet」は、「エチオピアのかわいそうな人たちを助けるためのブランド」ではなく、エチオピアの<HAPPY!>を伝えるブランド。ぜひ、ブログやツイッター、フェイスブックへ投稿した記事も読んでいただきたいです。事業を続ける中での課題や悩みを書くこともありますが、エチオピアで触れたたくさんの<HAPPY!>な思い出も記録しています。
今年はエキサイティングな計画がいくつかあるんですよ! こちらもぜひご期待ください!
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