H.P.FRANCE所属のバイヤーとして、「destination Tokyo」「goldie H.P.FRANCE」「TIME&EFFORT」などのセレクトを手がけて牽引してきた鎌倉泰子さんが、気になるブランドを訪問。その魅力やものづくりに迫ります。
キラキラ輝くジュエリーには心のときめきが止まらない! 多くのアクセサリーは、量産用の「型」を使い、一度に多くの完成品に近い土台の形を作る「キャスト成形」という方法で作られており、そこに接着剤でクリスタルを付けていきます。
今回訪ねた「MASAAKi TAKAHASHi Costume Jewelry(以下、MASAAKi TAKAHASHi)」は、あのスワロフスキーのパートナーブランド。選ばれた背景には、キャスト成形ではなく「寄せ物」と呼ばれる伝統技術で美しいジュエリーに仕立てていることが挙げられます。
「MASAAKi TAKAHASHi」の「寄せ物」とは、薄くて丈夫な金属の土台のパーツを点でつなぎ合わせたものに、金属パーツの小さな「ツメ」だけでクリスタルを固定していくというもの。光を四方から反射する美しさは別格! しかも、キャスト成形の場合の3分の1ほどの軽さというから、長時間に及ぶ結婚式などで花嫁を引き立てるティアラにぴったりの技法です。
デザイナーの髙橋正明さんは建築家として活躍してきた方。しかし実家の両親は寄せ物でものづくりをしていたそう。いま再びジュエリー職人として寄せ物の技術を伝えている髙橋さんに、寄せ物、そしてスワロフスキーの美しさについて伺いました。
寄せ物のこれから
髙橋: 「寄せ物」とは、金属のパーツを寄せ集めて溶接などでつなぎとめ、構成物を作る技術を総称して呼ぶもの。ジュエリーだけの技術ではないんです。ほかにも工業製品のメタルパーツなどが寄せ物の技術を使って作られています。その中で、ジュエリーは特に細かくて大変な作業の連続です。
鎌倉: 具体的にどのように作るのですか?
髙橋: 学校があるわけではないので、いくつか流派があります。作りたい形を囲むような「枠」を真鍮線で作ってその中にパーツを並べて、いくつも同じものを作っていくという作り方もあれば、石膏や建材を使うやり方もあります。私たちは、粉末にした牡蠣の貝殻の「胡粉」を使う独自の方法をとっています。胡粉は日本画の白色やだるま、日本人形の肌の色を出すのに使われるもの。父の代からそれを使っています。
髙橋: 金属枠のサンプルを一つ作ったら、胡粉に押し当てると跡が付きます。2個目以降は、それをなぞるようにパーツを置いていくんです。これが「寄せ」という作業です。
鎌倉: スワロフスキーの美しさも、寄せ物の技術も、それらの力を合わせた一つのものとしての魅力で勝負している。技術・素材・デザインからなる結晶!
髙橋: 今後は、花器などインテリアの分野に挑戦していきたくて、試作も始めています。ただ、作品を供給するだけではなく、「需要」を作らなければいけないと思っています。まずは、お客さまの目に留まる場所を開拓していく必要があると思っています。
鎌倉: ジュエリーを身に著けない方の目に触れる市場を作るのはもちろん、美しさゆえに「普段使いするものではない」と思っている人もいると思うので、特別すぎない演出も必要ですよね。後継者を育てていくという点では、2018年4月から、文化服装学院で教鞭を取られるそうですね。専門学校は独自の感性を最大に表現できる「技術」を教えるところですが、技術的なこと以外で伝えたいことはありますか?
髙橋: 2017年度の卒業制作を見に行ったら、スワロフスキー社がコンセプトと課題、そして素材を提供し、それに沿ってジュエリーを作る、というものもありました。しかし、普段は技術を中心に教えており、もらったテーマと自分の技術をかけ合わせて、どうコレクションとして組み立てていくかのカリキュラムはあまりないそうです。「クライアントが設定したテーマをどこまで汲み取って形にするか」ーーそれは、建築をやっていた僕だからこそ伝えられることかなと思っています。
鎌倉: クライアントの要望を汲み取りつつ、「寄せ物なら、お考えのものよりずっとずっときれいなモノが作れますよ!」と提案できる人も増えやさないといけませんね。ファッションブランドだと「自分の考え」「自分のオリジナリティ」が、存在する理由や価値につながるものも多いですが、「伝統工芸を守る」という視点では、自分一人ではない責任が出てくるもの。己の感性を磨くことと、「いま、僕たちの目の前に守るべきものがあるんだよ」という気づきも、同時に促す……。
髙橋: そうなんです。共感を生んで、市場を作りながら職人も増やす。どちらもバランスよくできれば、業界としてもっと成長していけると思います。寄せ物の技術を使う仲間が増えたら、ジュエリーに限らず、寄せ物だけのイベントをやりたいと思っています。僕のもの作りは、ファッションと工芸の狭間にあると思っているのですが、ほかに、トレンドをガンガン追求している人、インテリアグッズを作る人……など、各々の感性を「寄せ物」を使って表現してもらえたらうれしい。そうやって幅広く寄せ物が展開されていくことが理想で、僕はそのプロデューサーになるのが目標です。
鎌倉: 簡単じゃないですね……。髙橋さん、やることがたくさんありますね。
髙橋: 「ファッショントレンド」と言うことはあっても、「伝統トレンド」とは言いません。スピード感が全く違う2つを、今後どうかけ合わせていけばいいのかな、と思いますが、これは伝統工芸に関わる全ての人が考えていくべきことだとも思っています。日本では、華奢なものが使いやすくて人気ですが、海外の方は、大ぶりなものやカラフルなもの……自由にジュエリーを組み合わせることに慣れています。ぜひ、日本の女性も、宝石や貴金属そのものの価値でジュエリーを選ぶだけでなく、自分のスタイルに合わせてたくさんのジュエリーに触れ、選び、色鮮やかに装うことを楽しんでほしいです。
(インタビューここまで)
大切な「一つ」をいつも身に着けることで得られる幸せ。その日のドレスアップのために「一つ」を選ぶ楽しみ……。ジュエリーを身着つけるのは魔法のよう!
そして、色や素材だけではなく、ファミリーの魂を代々引き継いだり、「伝統技術を守りたいという思いに共感する」ということも、選ぶうえで理由になったりします。なにかの理由とともに選ぶと、もっともっとみなさんの魅力とジュエリーの魅力が広がると思います!
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