【スワロ×伝統技術】ジュエリーを用いたストーリーテラー「MASAAKi TAKAHASHi Costume Jewelry」髙橋正明さん

A Picture of $name 鎌倉 泰子 2018. 6. 1

H.P.FRANCE所属のバイヤーとして、「destination Tokyo」「goldie H.P.FRANCE」「TIME&EFFORT」などのセレクトを手がけて牽引してきた鎌倉泰子さんが、気になるブランドを訪問。その魅力やものづくりに迫ります。

キラキラ輝くジュエリーには心のときめきが止まらない! 多くのアクセサリーは、量産用の「型」を使い、一度に多くの完成品に近い土台の形を作る「キャスト成形」という方法で作られており、そこに接着剤でクリスタルを付けていきます。

今回訪ねた「MASAAKi TAKAHASHi Costume Jewelry(以下、MASAAKi TAKAHASHi)」は、あのスワロフスキーのパートナーブランド。選ばれた背景には、キャスト成形ではなく「寄せ物」と呼ばれる伝統技術で美しいジュエリーに仕立てていることが挙げられます。


源氏物語 光を求めてバングル(提供:MASAAKi TAKAHASHi)



「MASAAKi TAKAHASHi」の「寄せ物」とは、薄くて丈夫な金属の土台のパーツを点でつなぎ合わせたものに、金属パーツの小さな「ツメ」だけでクリスタルを固定していくというもの。光を四方から反射する美しさは別格! しかも、キャスト成形の場合の3分の1ほどの軽さというから、長時間に及ぶ結婚式などで花嫁を引き立てるティアラにぴったりの技法です。

デザイナーの髙橋正明さんは建築家として活躍してきた方。しかし実家の両親は寄せ物でものづくりをしていたそう。いま再びジュエリー職人として寄せ物の技術を伝えている髙橋さんに、寄せ物、そしてスワロフスキーの美しさについて伺いました。

建築家からの転身

鎌倉: 髙橋さんは、もともと建築家として活躍されていたそうですね。

髙橋正明さん(以下、敬称略): もともと父が寄せ物職人。実家は金属工業の町・葛飾区で長く続けていて、職人としての父の姿を日常的に見ていました。でも僕は、『ファッション通信』(テレビ東京)に夢中になった世代で、中学生のときから、ファッションの道に進みたいと強く思っていました。しかし両親に猛反対され、大学に行くことにしたのですが、「なにを勉強しよう……」と。そしたら、同じくファッションの道に興味を持っていた友人が建築の学校に行くと言い出したんです。彼の話を聞くと興味をひかれ、僕も建築学科のある大学に行くことにしました。

(右)髙橋正明さん
1972年生まれ。1997年、フィンランドの建築家ユハ・レイヴィスカの建築事務所入所。1999年に帰国後は、アクセサリー製造メーカーに勤務すると同時に、フリーで建築設計、イベント企画を行う。2005年、有限会社アトリエ・エイト代表に就任。建築設計と、OEMでアクセサリー製作を手掛ける。2012年、コスチュームジュエリーブランド「MASAAKi TAKAHASHi」を設立。2014年、スワロフスキー社主催のジュエリー展World Jewelry Facets 2014に選出。2018年、文化服装学院ファッション工芸専攻ジュエリー科、非常勤講師就任。

鎌倉: 建築のおもしろさはなんでしたか?

髙橋: 建築は、規模のダイナミックさや、設計するときに、人とのコミュニケーションをとること、その場の目に見えない空気感を作り出せることが魅力。入学後はすっかり没頭してしまい、大学院まで行きました。さらに、フィンランドの人間国宝に値するアカデミーメンバーの建築家、ユハ・レイヴィスカに声をかけていただけて、フィンランドに渡って彼の下や、世界的に有名な建築家アルヴァ・アールトの事務所でも仕事をすることができました。当時は、オフィスビルや別荘、教会のほか、都市計画にまで関わりました。ただ、最終的には日本に戻りたいと思っていたので、2年で戻ってきました。

鎌倉: 建築家としても成功していたところで、思い切った転身です。

髙橋: フィンランドから帰国後は、建築の仕事もしながら、父の仕事を手伝ったりするうちに、寄せ物業界について考えるようになりました。有名ファッションブランド、ウェディングドレス会社にネックレスやティアラなどを納めたり、宝塚歌劇団などの舞台衣装にも採用されたり、いち職人として10年間やっていました。4年前までは建築もやっていて、二束のわらじだったんです。「2k540」にショップを作ったときに、建築を休業にしました。

鎌倉: ジュエリー一本でやっていこうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

髙橋: あるお取引先さまとの間で、考え方の違いを感じるできごとがあったのがきっかけです。そこのアクセサリーをほとんど僕たちが作っていたときがあります。「寄せ物」「手作り」と明確に打ち出し、先方のデザイナーからデザイン画を渡されて僕が作ります。それが大ヒットして、注文をたくさんいただけたのはありがたいのですが、その注文数を寄せ物で作ると通常、注文をいただいてから納品まで8カ月かかる計算でした。ファッションの世界が半年サイクルで回っているのは分かっていますが、納期が厳しくになってきたときに、「期限に納められないなら『キャスト』に変えてください!」と言われてしまいまして……。

鎌倉: 寄せ物の職人さんに「キャストで作れ」……と? 「だったらウチに頼まないで下さいよ!」って思ってしまいますよね。いままでどんなことを考えて「伝統技術の継承」に、取り組んでいたんだろうかと思ってしまいます。

髙橋: さまざまな商品で、「日本の伝統工芸」を謳っている会社なので、そういったことには理解があると思っていたのですが、とても残念に感じました。時間的に無理という話だけでなく、寄せ物で作られた作品が認められ受注したものを、デザインや工法を変えてしまうというのは、筋が違います。それに職人単価を下げないことも、伝統技術に携わる者として大事な責任です。根本的なところを理解されず値段を叩かれる……となっては、いくら売れても未来は開けません。それで、以降の仕事はお断りして、自分たちの力で業界を盛り上げなければと思い、ブランドを立ち上げることを決めました。

SNOWネックレス(提供:MASAAKi TAKAHASHi)

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