自由すぎるアクセサリー&雑貨が心をわし掴み! 「kitakikaku」喜多理恵さんの溢れる情熱の源泉は?

A Picture of $name 鎌倉 泰子 2018. 4. 10

H.P.FRANCE所属のバイヤーとして、「destination Tokyo」「goldie H.P.FRANCE」「TIME&EFFORT」などのセレクトを手がけて牽引してきた鎌倉泰子さんが、気になるブランドを訪問。その魅力やものづくりに迫ります。

今回訪ねたのは"突き抜けた"アイテムがお客さまの心をわし掴みにしている「kitakikaku」デザイナーの喜多理恵さん。喜多さんのアイテムは、いずれも細かなこだわりとらしさがぎゅっと詰まっているのですが、「ものづくりが好きすぎる! 楽しすぎる! アイデアが次々湧いてくるんです!」と、笑顔で話すのが眩しい! ものづくりの明るい未来を感じる喜多さんのものづくりへの思いをお届けします。

“東京”へのこだわりと思い

鎌倉: いろんなアイデアを形にしてこられていますが、喜多さんが一番最初に作った作品はどれですか?

喜多: この水引のようなシリーズと、ハウンドトゥースのレザーのアクセサリーです。絵で表現できないものは、最初から立体で作るんですが、この細く、しなったようなシルエットはピッグスキンではないと作れません。薄くて丈夫なので自由に形を変えられますし、大きなものを作っても軽いんです。このシリーズは高さも奥行きも曲線でできていて、「アートっぽい」ともよく言われます。

(提供:kitakikaku)

鎌倉: 最初から立体で作っているんですね。確かに、どんな小さなアイテムも360度違う方向から楽しめる立体ばかりですね。

喜多: 個人的には「東京っぽさ」を意識していているというか、これからそれをもっと表現していきたいと思っています。

鎌倉: ブランドを始めて2年半程ですが、「東京」を意識するようになったのは、なにか理由があるんですか?

喜多: 2020年に東京オリンピックがあることが私の中では大きいです。開催がいわれはじめた当初は反対の声もありましたが、私は「やってほしい!」と、思っていました。ちょうどその頃、子ども向けの商品に関わっていたのですが、日本は災害に見舞われたり、少子高齢化が叫ばれる中、自国の課題に集中しすぎると、子どもたちが日本以外の世界に思いを向ける機会が少なくなってしまうのではないか? と、漠然と感じていました。オリンピックが開催されることで、国全体で街づくりを見直したり、来日する海外の人を迎える準備をすることで、子どもたちが自分の生きている場所以外に目を向けるきっかけになると思ったんです。

鎌倉: 確かに、なにか変わることも少なくない気がします。

喜多: あと最近、三井記念美術館でやっていた「驚異の超絶技巧! -明治工芸から現代アートへ-」というのがとても印象的でした。江戸時代後期から明治時代の美術品で特に細かい「超絶技巧!」を使っているものだけ集めている展示なのですが、作品を見ると、日本人が世界で評価されている「現代アート」としてくくられているものと、決してかけ離れているようには、私には見えませんでした。長い年月が経っていても、なにか日本的な美意識は受け継がれてきたんだな、と感じました。東京で生まれ育ちつつ、西洋の華やかな文化を感じられる仕事をしていた私ですが、「東京は、いろんな歴史を経たものや人が集まって〈東京〉になっているんだ」と思いました。いつの間にか蓄積されてきた私の感性がいまの作品につながっているので、もっとそれを意識してみよう、と思っています。

鎌倉: いまの子どもたちの未来を広げるなにかができるかもしれない、とおっしゃっていましたが、ホームページで「秩序」という言葉を使っていましたよね。東京の秩序とは?

喜多: 伝統やオリジナリティと一緒に、未来を感じさせるのが東京だと思います。東京オリンピックのエンブレムは、色や形はみんながなんとなく持っている日本のイメージを表しながら、幾何学的なところがあって、先へ正しく進む未来的なものを感じました。私の作品では、お客さまが驚く、楽しくて、ほかにはないものを作りたいけど、「絶対に使いやすくないといや!」って実用性を含めるのも、自分では「東京っぽい」って思っています。

鎌倉: 使いやすさは美しい所作にもつながりますもんね。ヨーロッパで「モード」といわれるものが日本に届くまで、デザインのエッセンスが薄まりに薄まって、それが半年後に流行ったりするわけですが、その過程で日本人が身につけられるような形になるんですよね。ファッションショーやパーティに行くためのお洋服ではなく、電車で移動したり、仕事や家事など生活に支障をきたさずとも楽しめるものになります。それが「日本のモノ」なのかな。「日本製」という意味とは違って。

喜多: インターネットで見かけた海外の方の言葉なのですが、「日本から入ってきた文化って最初はグロテスクに見えたりして〈気持ち悪い!〉って思うけど、いつの間にか自国の文化に取り込まれ、違和感を感じなくなることが、また日本文化のおもしろいところであり、〈良い意味での気持ち悪さ〉がある」というようなことを言っていて、「なるほど!」と思いました。

前出の西陣織の生地を使ったクラッチバッグ(左)に、桐生金襴を使ったキャンディバッグ(右)。和と西洋の融合に、着物に合わせたいというお客さまも絶えないとか。(提供:kitakikaku)

鎌倉: 伝統的手法や素材を使いながら「自由」で「すごい」だけでは“東京”ではない。さらにいえば、喜多さんが作るものではないのですね。先ほど「変わらないもの」についてお話を伺いましたが、「変わってきているもの」や「変わりたいもの」はありますか?

喜多: 3年ほど一人でやってきたので、誰かとコラボレーションをしてみたいです。化学反応を起こしたい。まずはオリジナルの生地の開発になるかもしれません。いま、気になる折り紙作家さんがいるんです。折り紙もそうですが、やっぱり平面から立体へ組み立てていくプロセスに興味が湧きます。それから、もっと機械を増やして、自分がここでできることを増やしたいです。サンプルを全部この家で作って、自分の描くものを正確に形にしたいです。

鎌倉: 本当に作ることが大好きなんですね。仕事とプライベートの区別が全くない。

喜多: 老子の言葉に、「生きることの達人は、仕事と遊び、労働と余暇、心と体、教育と娯楽、愛と宗教の区別をつけない。何をやるにしろ、その道で卓越していることを目指す。仕事か遊びかは周りが決めてくれる。当人にとっては、常に仕事であり、遊びでもあるのだ」というのがあります。これを知ったとき、「私はこれで突き進めばいいんだ!」と、思いました。仕事か遊びかは、周りが判断してくれること。自分は自分が愛することを全力でやって、卓越するものを目指せばいいんだと思いました。これからも、私がそのとき心が動いたものを、納得いくまで作りこんで、みなさんに届けたいです。AIが発達すると、人間の仕事が減るっていわれていますよね。でもそうなれば、「その人しかできないこと」「そこにしかないもの」など、生産背景が見えて、情熱から生まれたものが愛されて、もっと売れるようになると思うし、そう信じています。

(インタビューここまで)

東京で生まれて東京で暮らして、好奇心と情熱で素敵なものを生み出す喜多さんの手はまるで手品のよう。「#MADE IN JAPAN」でも「#MADE IN TOKYO」でもなく、「#MADE BY TOKYO」。東京に生まれ東京で暮らし、海外の煌びやかな別世界も知っている喜多さんが作るものには、このタグがふさわしいのかも……。オリンピックまでに、どんなものを作られるのかがとても気になります!

kitakikaku

【website】http://www.kitakikaku.tokyo/
【instagram】@kitakikaku

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