2016年3月、カンボジアで新しいブランドが生まれた。名前は「SUSU Journery from/to Cambodia(スースー・ジャーニー・フロム・トゥ・カンボジア、以下『SUSU』)」。国の特産である“いぐさ”をアクセントに、かばんやポーチ、サンダルなどのファッション雑貨を展開している。ターゲットは、日本の20代~30代の女性だ。
ブランドを手がけるのは、カンボジアとインドで児童買春問題に取り組む認定NPO法人かものはしプロジェクト。商品は、貧しい家庭に生まれた女性たちが作っている。
「SUSU」が目指すのは、「社会に良いことをしているから買ってもらえるブランドではなく、本当に求められるブランド」。
来年、かものはしプロジェクトから独立し、日本での本格展開を控える「SUSU」の挑戦を紹介する。
プロデューサーと呼ばれる女性たち
2部リーグからセリアAへの挑戦
ファクトリーで働く女性たちは、プロデューサーと呼ばれる。支援を受ける受益者の立場から、ものづくりを通じて価値を提供する立場の人間になってほしい、という願いをこめてプロデューサーと呼んでいる。
「SUSU」成功の鍵も、主役である彼女たちの「意識」が鍵になる。300円~1,000円のコースターや名刺入れから、3,500~10,000円のトートバック作りへの変更。1つの商品完成には、9人が関わり、全て手作り。平均試作数は7.3個。多いときでは、20個に及ぶ。これまでの技術が通じず、高いクオリティを求められ、「作りたくない」という声もあった。
カンボジアの農村に住む彼女たちが、物が溢れる日本の女性たちが求める“クオリティ”を理解することは至難の業だ。「SUSU」の商品は彼女たちにとって高級品。購入するというリアリティもない。
このギャップを埋めるため、ショップスタッフの売上を上げるためのディスプレイ改善や、セールストーク向上の努力を知るアクティブ・ラーニングを開発するなど、さまざまなワークショップを実施。生産マネージャーも、「デザイン性が高く品質の良い商品を作ることができれば、世界中の人から愛されるブランドになる」と語りかけた。
2016年3月、シェムリアップの繁華街に第1号店をオープン。2年目の売上は一年前の4倍。1年間で4,500人以上に商品を届けた。お客さんの約6割は日本人。日本に馴染みのあるいぐさがバッグやポーチに使われているユニークな点や、デザインと色のシンプルさが受けているという。
「新作はどうするの?」。
いま、ファクトリーでは、自信を取り戻した女性たちからこんな声が聞こえるという。自分の求める完成レベルに達せないことに悔しさを感じ、プライドを見せる人も。
サッカーでいうと、いきなり2部リーグからセリアAへ行ったみたいな感じ(笑)。求められる品質が非常に高いので、“お土産もの”とは全然違う戦い。でも、思いを込めて作ったものは人を喜ばせることができる。もっと言うと、その人の問題を解決し、人生を豊かにすることができる。それはファクトリーの女性たちも同じなんです。
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