2016年3月、カンボジアで新しいブランドが生まれた。名前は「SUSU Journery from/to Cambodia(スースー・ジャーニー・フロム・トゥ・カンボジア、以下『SUSU』)」。国の特産である“いぐさ”をアクセントに、かばんやポーチ、サンダルなどのファッション雑貨を展開している。ターゲットは、日本の20代~30代の女性だ。
ブランドを手がけるのは、カンボジアとインドで児童買春問題に取り組む認定NPO法人かものはしプロジェクト。商品は、貧しい家庭に生まれた女性たちが作っている。
「SUSU」が目指すのは、「社会に良いことをしているから買ってもらえるブランドではなく、本当に求められるブランド」。
来年、かものはしプロジェクトから独立し、日本での本格展開を控える「SUSU」の挑戦を紹介する。
カンボジアから世界に通用するものづくりを
「SUSU」が作られている工房「コミュニティファクリー(以下、ファクトリー)」は、アンコール遺跡で有名なカンボジア、シェムリアップ市から約35km離れたクチャ村にある。
「村に仕事をつくる」ことを目指し2008年にオープン。ここで働く女性たちは、村の中でも最貧困層の家庭出身だ。教育や技術トレーニングを受けながら商品を生産・販売し、その収益を給料として得ている。
これまで売上を支えてきたのは、観光客をターゲットにした小物雑貨。市内の高級ホテルやショップで扱われ、旅行のお土産として人気が高い。
ロングラン商品がある中、なぜ新しいブランドを立ち上げたのか?
ものづくりには、人を喜ばせる可能性がある。だったら本当に良いものを作りたい。そのためには、厳しい市場に挑戦しなきゃいけない。
そう語るのは、認定NPO法人かものはしプロジェクト/SUSU共同代表の青木健太さん。
観光のお土産から、日本でファッション雑貨として売れるものを作る
青木さんは、19歳のとき、仲間とともに「子どもが売られない世界を作りたい」と、かものはしプロジェクトを立ち上げた。
2009年からカンボジアに移住し、商品開発や人材育成に取り組み、ファクトリーを経営してきた。急速な経済発展を遂げていくカンボジアを間近で見てきた青木さんは、災害やテロなどの影響を受ける観光に頼った商品ではなく、社会が変わっていく中でも「生き残れる」商品が必要だと思った。
旅の記念に買うお土産から、ふだん使いに買うファッション小物へ。
求められるクオリティや機能など、これまでとは全く異なるものづくりへの挑戦は、苦労の連続だった。ものづくりの産業が発展していないカンボジアでの素材集めや道具・機械探し、生産技術力の向上、店舗探し……。
しかし、最も困難だったのは、「商品づくりの起点を変えること」と青木さんは語る。
これまでは、女性たちの技術やカンボジアの特産などで作れることが起点だった。でも、使っていただくお客さんの視点やセンスからスタートしなければ売れるものは作れない。これをいかに作り手全員が理解できるか。
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