「裂き織り」とは、古着や残布を細く裂いてひも状にして織り上げる布地のこと。東北地方などで、江戸時代から貴重な絹や綿を再利用するために織られてきました。いまでも愛されているこの手法で、ふだん使いできる素敵なプロダクトが増えています。
裂き織りのモコモコした素材感を生かしたバッグブランド「SAWAKOmura(サワコオオムラ)」が、いよいよ2017年の秋冬から本格始動します。
テストで販売した2017年春夏はクラッチバッグが中心だった「SAWAKOmura」は、色合いも美しくてすてき! さっそくクリエイターの大村沙和子さんに、お話を伺ってみました。
子どもの頃から絵を描いたり、モノを作るのが大好きだったという大村さん。
武蔵野美術大学で服飾を学んだ後、卒業後はアパレルメーカーへ就職しました。広報業務を担当中、在庫の残布を見て、「このまま捨てるのはもったいない、なにかに活用できたらいいな」と、いつも思っていたそう。
もともとテキスタイルに興味があったせいか、母親が習っていた裂き織りにピンとくるものがあったようです。
必要とされなくなり、捨てられる生地を裂いて織り、新しい布に蘇らせることは、生地のリサイクルになる。それをアップサイクルして、バッグを作りたいと思い立ちました。
そこで「モノを大切にする」という、シンプルなコンセプトのブランド「SAWAKOmura」を立ち上げます。
アパレル企業で働いていた頃、デザイナーやパタンナーともよく話をしていたのですが、多くのアパレルメーカーは経営難なのに、中途半端に残った生地は捨てられています。それは、あまりにもったいないこと。
メーカーから生地を譲ってもらうときに、捨てるものを活用することは、エシカルなことで、企業や社会のためにもなるというアピールもしています。古着の着物も使っていますし、「安く大量に作るファストファッション」に対して「モノを大切にする手法を用いたファッション」というカタチを作りたかったんです。
テスト販売で好評だったクラッチバッグは、ファッション感度の高い人にも好評だったそう。秋冬はさらに、持ち手もついて機能的なトートバッグに、お揃いの柄のポーチも展開するといいます。
量産はせず、希少で特別感があるものだけを作りたいという大村さん。実は、「SAWAKOmura」で作られている裂き織りは、実際に大村さんが一人で織っているというから驚き!
簡単な作業ではありませんが、大村さんが感じる、裂き織りの魅力とはなんなのでしょうか?
手織りなのでどれ一つも同じものがなく、表情があるところですね。ところどころ色が退色していたり、風合いがありますし、織る力かげんでも、微妙に変化していきます。
では、裂き織りのバッグ作りで難しいところはどういったところでしょうか?
バッグ作りで一番時間がかかるのは、糸張り。糸張りさえできれば、織り自体はそれほど難しくはありません。
ただ、裂いた生地は無地ではないため、柄のデザインができないところが難しいですね。「不測の可能性」と言いますか、どのくらいの間隔で色が出てくるのか、全く分からないんです。
古着の花柄の着物を裂いて織るときは、特にそうです。でも、そんな難しいところが楽しいですね! ただ、一歩間違えると民芸品のようになってしまうので、そうならないように気をつけています。」
華やかで綺麗な着物を織ってみたら、ごちゃごちゃしたくすんだ仕上がりになってしまった、という失敗談もあれば、逆に、白地に紺と水色のチェック模様の浴衣が綺麗な布に織りあがったりも。そんな思いがけない仕上がりは裂き織りの楽しさのようです。
持っていてかわいい、かっこいい、がこだわり。アップサイクルのプロダクトに、もっと興味を持ってもらえるよう、いまのファッションに溶け込むデザインを試行錯誤しています。
コレクションごとに新しいモデルを一つ追加して、少しずつ変化をつけていきたいと思っています。
これからは、仕事をリタイヤした人や、事情があって仕事に就きにくい人、近くにある障がい者施設への発注など、いろんな人に仕事の楽しさを味わってもらえるような活動につないでいきたいそう。さらに、コラボや個人のオーダーメイドなど、これからも計画は目白押し。
裂き織りは、どんな立場や状況にある人でも、お互いを認め合える、そんなコミュニティのプロジェクトにしたいと思っています。一つずつ丁寧に取り組むものづくりは、社会性のある仕事へ昇華できると思っています。
大村さんには、「それぞれの人が自分の好きな仕事をしながらまわる社会であってほしい」という思いもあります。そのために、いまは自分のブランドの知名度を上げ、仕事を発展させることが一番の目標だそう。颯爽とした女性の仕事姿に、「SAWAKOmura」のバッグはぴったりだと感じます。
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