“みんなでつくる結婚式”をしたい 〜CROSS TOKYOのシェフと行く、福島・農家ツアー〜

A Picture of $name Misato Momma 2017. 8. 4

用意されたものから選んでいく「選択式」の結婚式が多い中、"自分たちらしさ"を本当に出せるような結婚式をしたい ーーそんな漠然とした思いを胸に、ちょっとずつ始めた筆者の結婚式の準備。

実は、筆者も筆者の婚約者も福島県出身。そこで「なにか福島にゆかりのあるものを」と、思い至ったのが『福島の素材を使ったお料理』の提供でした。

こんな思いつきに、付き合ってくれる会場なんてあるのだろうか……という私たちの不安もつかの間、「ぜひやりましょう!」と、快くお返事くださったのが、赤坂にあるレストラン「CROSS TOKYO(クロストーキョー)」でした。

しかも、料理長シェフ自ら「福島には行ったことがないので、伺います!」と、まさかの展開に、こちらが度肝を抜かれるほど。

そこで筆者の知人を頼って、「CROSS TOKYO」のみなさんと私たちとで、「福島農家めぐりツアー」に出ることに。

初めて体験する福島の農業に、東京の最先端のレストランのみなさんがどんな印象を受けたのか、レポートします!

ヒト・コト・モノが交差するレストラン「CROSS TOKYO」

来年の5月、筆者の結婚式の会場となるのは、赤坂にあるレストラン「CROSS TOKYO」。ここは、「Vegetable & Festival(野菜とお祭り)」という銘打ってあるように、お野菜をたっぷり使ったお料理が得意なレストランです。

野菜をただ「摂取」するだけでなく、食べながら季節を感じ、健康に生きるチカラを……という思いから、旬にこだわった野菜を使用。しかもそのほとんどが、グランシェフの増山さんはじめ、スタッフのみなさん自ら足を運んで選ばれたものなのです。

「CROSS TOKYO」総料理長グランシェフを務めるのは、増山明弘ますやま あきひろさん。19歳から料理の道に進み、フレンチシェフとしてこれまで千葉、沖縄、フランスなど各地で修行を積んだ後、「CROSS TOKYO」のグランシェフに就任しました。

増山 明弘(ますやま あきひろ) 「CROSS TOKYO」総料理長
調理師専門学校を卒業後、赤坂『ジョンカナヤ』をはじめ、都内有数のフランス料理店で修業。そのほか、パティスリーも経験。27歳で渡仏、ブルゴーニュからシャンパーニュへと研鑽を積み、帰国。2004年、神楽坂『フレンチダイニング』料理長就任。2008年、日本初のハーブガーデン『大多喜ハーブガーデン』料理長就任。2012年、六本木『CROSS TOKYO』料理長就任。「ハーブコーディネーター」「スパイスコーディネーター」の資格も取得し、枠にとらわれない“フリースタイルキュイジーヌ”を得意とする。

増山シェフは、フレンチをベースにしつつ、その枠を飛び越え、イタリアンやハーブなど、さまざまなエッセンスを取り入れながら、シンプルに仕上げるのがスタイル。

やっぱり素材を良いものを使わせていただいているので、素材を最大限生かしたいと思うと、だんだんシンプルになってきました。

ふだんからパーティ対応にメニュー考案と、とても忙しい増山シェフ。その中で、なぜ自分の足で生産地を訪れるのでしょうか?

ネットでいくらでも見ることはできますが、行ってみないと分からない、感じられないものがたくさんあります。その土地に吹く風や匂いに、あとはやっぱり、生産者さんの思いを肌で感じられること。僕はそれを伝える側で、作る人と食べる人の真ん中に立っているんです。

それに、フレンチには“テロワール”という言葉があるのですが、「その地のもので合わせるのが一番」という考えなんです。例えば、福島の豚肉には、野菜も酒も福島のものを合わせるのが、一番おいしいというふうに。そのうえでも、その地域を肌で知るのは大切だと思っています。

生産者の方との出会いを「ご縁」と繰り返し話すシェフ。生産者さんとのつながりを、最も大切にされているそう。

生産者の方がたも同じ職人で個性的な方ばかり。だから、考えを聞くのがとても楽しいんです。話を聞いて食べてみると、「なるほど!」ってなる。おいしくて、個性ある野菜も、「人」しだいだと思うんです。

だからといって、レストランで一年中同じ食材を扱うことは難しいので、機会ごとに扱っています。ふと、「あの生産者さんは元気かな?」と、思い出して連絡をとってみると、ちょうど良い野菜があるというので使わせてもらうこともあります。ほかにも、もう一緒にランチする仲の生産者さんもいますよ(笑)。

私たちのリクエストも、「ご縁」と言って、快く受けてくださった増山シェフとともに、福島へ出発です!

いざ、福島へ。

7月初旬、日本各地が台風で荒れる中、前日の雨が嘘のように晴れ渡った朝。

増山シェフと、ウェディングご担当の田原さんが、福島県南部にある新白河駅に到着。二人とも、福島に来るのも初めてだそう。

「以外と東京から近いんですね!」というお二人。実は、東北の中でも最南に位置する福島県は、都心からも以外に以外に近く、今回降りた新白河駅であれば、東京駅から新幹線で1時間半弱で着いてしまうんです!

そんな福島県は、農業が主要産業の一つ。お米をはじめ、野菜ではきゅうりやさやいんげん、くだものだと桃や梨が全国でも上位の収穫量を占めます。

2016年の農作物産出額は全国18位とそこまで高くはないものの、農業やその関連事業に従事する人の数で見てみると全国10位以内。福島の農業は、重要な産業であることが分かります※1

(提供:COOL AGRI)

今回案内をしてくれたのは、福島県で農業分野のプロデュースを行う企業concept-village(コンセプト・ビレッジ)代表・馬場大治ばば だいちさん。

同社は、農家のブランド設計から始まり、農産物をレストラン・飲食店に届ける流通まで手がけています。

また、次世代農業者の創出を掲げる「COOL AGRI」に共鳴し、共同代表として所属。レストラン・飲食店への農産物は、主に「COOL AGRI」に参加する農家の野菜を提供しています。

中央が馬場大治さん。駅前でこの日の流れについて説明を受ける。

今回は、「COOL AGRI」の中でも特に市場に出回っているという「関谷農園のトマト」、「山市農産の玉ねぎと大根」を見に行くことに。

車窓からの移動風景。

東北最南端の農家「関谷農園」

初めに訪ねたのは「関谷農園」さん。

栃木県との県境、白川市白坂にあるこの農園は、福島でも最南端に位置するため、温暖な気候。那須連峰の雪解け水が流れこむ黒川が水源となり、きれいな水が豊富にある地域です。

東北本線も間近に通るため、「うちは福島で一番初めに見える農家」と、関谷農園代表の関谷裕幸さんは冗談混じりに話します。

今回は季節もののトマトを見せていただくことになりました。

関谷農園で作られているのは「桃太郎」という品種。手塩にかけて育てられた関谷農園のトマトにはファンも多く、足を伸ばしてここまで買い求めに来る方もいるとか。

大ぶりでしっかりとした実は、堂々とした存在感。肥料は、魚由来のものにこだわりが。これが、トマトに”コク”を加えるのだそう。

人間と同じように、野菜だってちゃんとした環境で健康に育ててあげるのが一番なんだよ」と、関谷さん。

この時期、東京で流通するトマトのうち、およそ3割が福島県産だとか。福島出身なのに知らなかった……。大切に育てられたトマトは、とってもジューシーな味わいでした。

中には「青トマト」と呼ばれるものも。その名のとおり、「赤くなる前のトマト」だそうですが、増山シェフはこれに注目。

「今度出す予定のパフェに、この青トマトを使ったジュレを乗せてはどうか?」と、アイディアを熱心に話していました。

これはもしかすると、東京で関谷農園のトマトを使った一品をお目にかけることができるかも……?!

大量に流通させるよりも、やっぱり互いに顔を見て、直接ものを売るのが楽しい。結局は何歳になっても褒めてもらいたいんだよね(笑)。

と、話す関谷さんに、「福島といえば震災後、放射線を気にされる方もいるのでは……?」と、疑問を投げかけてみると……

確かに、震災後2〜3年は放射線量のこともだいぶ言われました。でも正直、地形や立地からいって、うちの地域は線量の影響は受けていなかったんですよね。しかも、いまは県や自治体でしっかり線量検査をして出荷してる。だから出荷する側も問題がないことを分かって出しています。

最近は、以前ほど放射線量のことを懸念される方も少なくなってきているそう。

今年も関谷さんの大事に育てたトマトは、きっと至る所に夏を運んでくれることでしょう!

ハウスを年に100回転させ多品目を扱う「山市農産」

車に乗り込み、次に向かったのは先ほどの白河市のお隣、西郷村に位置する「山市農産」さん。代表の鈴木亮太郎さんが案内してくれました。

鈴木さんは元日本料理人ということもあり、料理人の心をくすぐるような野菜を栽培しているのだとか。期待に胸がふくらみます!

はじめに見せていただいたのは、玉ねぎ。

福島では、この時期に収穫が始まる玉ねぎは、山市農産の主力商品の一つ。ハウスの中には、乾燥中の玉ねぎがいっぱい詰まったケースの山が!

この玉ねぎ、収穫したときには中が白いのですが、時間を置くとだんだん赤味がかってくるのだとか。赤玉ネギは、通常のものより水分量が多いため、火を通さずそのままサラダとして食べられるので、手軽に試せそうです。

「野菜づくりで生計を立てるには、やっぱり一般的な需要のある野菜を作ることも大事。特に田舎では重要です。珍しい野菜は都会では需要があるかもしれないけど、地元でも買い続けてもらうにはそれだけじゃ難しい。

そう話す鈴木さんは、多品目生産を行っており、1つのハウスで4〜5種類の野菜を栽培しています。8棟あるハウスは、年におよそ100回転もさせるそう。

そんな鈴木さんは、約8年前に、農業を本格的に始めたそう。

もともと、お父さんが公務員として働くかたわら米を作っていたそう。しかし、専業農家に転向するタイミングで野菜づくりも始めたといいます。

試行錯誤を重ねながら、玉ねぎや小松菜、水菜といったスタンダードな野菜を作る一方で、「手のひら大根」などの新しい品種の開発にも挑戦しています。

次に見せていただいたのは、その新品種「手のひら大根」。その名のとおり、手のひらサイズの大根です。

珍しい大根を、早速試食する増山シェフ。

つるんとしてて、子どもみたいですね。繊維が柔らかくて、みずみずしい!

野菜を見せてもらって鈴木さんのお人柄を知るにつれ、だんだん「玉ねぎ自体を主役にした料理」のイメージが湧いてきたという増山シェフ。

実は、山市農産さんで玉ねぎを見せていただいている間に、「見えた」とボソッと呟いていました。

シェフは、料理のイメージが湧いたときは、いつもこう言うのだとか。今回はいったい何が「見えた」のでしょうか……?

初めは、いろんな技法で玉ねぎを楽しんでいただけるようなものをイメージして、「デクリネゾン」というフレンチの技法を使おうと思っていたんです。でも、見せていただくうちに、そのままの、まるまるとした玉ねぎをお出しするのが良いかなって、思いはじめてきました。

「山市農産の玉ねぎ×シェフのアイディア」で、一体どんなお料理が生まれるのか、いまからワクワクします!

熱心に話し込む増山シェフと鈴木さん。

今回、短い時間ではあったものの、福島を体験されたお二人。福島の印象は、どうだったのでしょうか?

山に囲まれた自然豊かな環境、水も空気もとてもきれいで、ほかにどんな食材があるのか、期待が高ぶりました。生産者さまの思いが届くように調理できればと思っています。(増山シェフ)

「福島といえば海の幸」というイメージだったのですが、内陸部は山に囲まれ、空気がとてもきれいでで、なんといっても田んぼや畑のそばに流れる水が透き通っていて、とても豊かな土地であることを感じました。

採れたての野菜はストレートな味で苦味もあれば、甘いものも。

どの土地にもいえることですが、イメージだけで終わらせるのではなく、まずは行って確かめてみるということが大切だなと思いました。

また、農家さんを訪ねることで、食べていただく方に、「おいしい話」もできるのではないかと感じています。(田原さん)

阿武隈川の清流と、有機たい肥で育てられた山市農産のお野菜。

増山シェフのアイディアと出会うことでどんなお料理になるのでしょうか。

「CROSS TOKYO」のみなさん。来年の結婚式は、どうぞよろしくお願いします!

Vegetable Restaurant & Festival CROSS TOKYO

「野菜× ○○」「旬産旬消」「医食同源」「CROSS」をコンセプトとしたレストラン。旬の野菜や素材をしっかり頂くことが健康的に生きていく上で必要不可欠なものとし、それに「CROSS」というヒト・モノ・コトが交差する場を加えて提供する。

【address】東京都港区赤坂5-4-7-10FTHE HEXAGON bldg.
【tel.】03-5545-5408
【website】http://cross-tokyo.com/farmers/

※1……2016年7月、福島県農林水産部『福島県の農林水産業の現状』https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/178823.pdf(2017年7月参照)

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