【インタビュー】FREDDY LECKのコインランドリーが目黒にオープン “友情”を生むコインランドリーの姿

2017. 7. 14

日本ではお洗濯アイテムが有名な「FREDDY LECK(フレディ レック)」は、もともとベルリンに2008年にオープンしたコインランドリー。



創業者であるFreddy Leck氏は、ベルリンに明るい雰囲気の楽しいコインランドリーがないことに着目。「服をキレイにする場所こそ、楽しい場所であるべき!」と、洗濯する間に、人々がコーヒーを飲みながら楽しく交流できるようなコインランドリーー「FREDDY LECK sein WASCHSALON(フレディ レック・ウォッシュサロン、以下『ウォッシュサロン』)」を開業した。

2017年7月1日、その2店舗目「フレディ レック・ウォッシュサロントーキョー」が、東京・目黒区にオープン。オープンに合わせ、同氏が来日。インタビューを行った。

東急東横線・学芸大学駅から徒歩13分。世界で2店舗目となった「フレディ レック・ウォッシュサロントーキョー」は、布団などにも対応する大型の乾燥機9台、洗濯機2台、洗濯乾燥機4台を備えたコインランドリーであるだけではない。

奥側のスペース半分は、カフェラウンジとなっており、オリジナルブレンドのコーヒーや、お子さま向けソフトドリンクのほか、マフィンなどの軽食も販売。

前面ガラス張りの明るい店内の真ん中には大きなテーブルが据えられ、洗濯が終わるまでコーヒーや軽食をとりながらゆっくり過ごせるスペースとなっている。

ほかにも洗濯代行や専門的なクリーニングも受付可能。トータルな洗濯サービスを提供する。

新しいお洗濯メッカの生みの親であるFreddy Leck氏は、もともと俳優として活躍しながら、ベルリンに同店の第1店舗目をオープンした人物だ。

―― 新しいウォッシュサロンのオープン、おめでとうございます! この新しいサロンを見てどう思いましたか?

最初に見たとき、「我が家だ!」と思いましたよ。とても美しくて、ベルリンのウォッシュサロンと全く同じ。ウォッシュサロンは僕にとって「家」ですから。この新しい我が家に入った瞬間、「一生ここにいられる!」と思ったくらいですよ。

―― そもそも、ドイツではコインランドリーはどんなふうに利用されているのですか?

この10年で大きく変わりました。洗濯機を所有する家庭も増えました。でもそのぶん、時間というものがよりかけがえのないものになりました。

例えば、幼いお子さんが2人いらっしゃる家庭では、洗濯機を何回も回す必要があるかもしれません。乾かすのを含めたら、洗濯は一日かかる仕事です。

だったら、コインランドリーで一気に洗濯して、乾かせば、お子さんと過ごす時間が増えます。10kgの洗濯ものを1時間で終わらせることができますからね!

―― 今回は世界で2店舗目ですが、ほかの国にもオープンする予定はありますか?

今のところ予定はありませんが、ロンドンかパリにオープンできると嬉しいですね。世界中から人が集まる大きな都市が良いと思います。いろんな人が集まって、交流が生まれる場所であることが、ウォッシュサロンの意義ですから。

ベルリンには春から秋にかけて、世界中から旅行者が来ます。旅行に来た人にとっても、コインランドリーは重要ですね。

すると、ウォッシュサロンで出会った旅行者と地元の人が、おしゃべりして、「ここに行くといいよ」「どこそこがオススメだよ」なんて、おしゃべりしているんですよね。そういう交流って、すごく美しいと思うのです。

―― 2回目の来日と聞きました。東京の印象は?

ベルリンも東京もとてもインターナショナルで、大きな違いは感じません。ただ、スピード感は違いますね。東京はなにもかもが早いですね!

―― 東京店を作るにあたり、日本のチームにリクエストしたことはありますか?

ないんですよ。でも、リビングルームみたいであり、サービスや設備が最新のものであることは必須だと思っていました。人々がコインランドリーに求めているものは2つあります。

まず、家庭では叶えられない品質を求めています。良い洗濯機に乾燥機。そして次に、良い雰囲気であること。ベルリンの店と同じように、壁紙から照明までそうした雰囲気を演出するものであるべきとは思っていました。

―― そもそも、ウォッシュサロンを創業した理由は、ベルリンのコインランドリーの雰囲気があまり良くないと感じたことだとか。

正直に話すと、私の友人の発言がきっかけだったんです。彼女は頻繁にコインランドリーを利用するのですが、「女性一人でコインランドリーに行くのは怖い。安心できない」と言っていたんです。夜にしか行けないのに、安全を感じられない、と。

コインランドリーは生活に必要なもの。キレイで、安心して行ける場所でなくてはなりません。

そして、洗濯が終わるまでの45分の間には、いろんなことができます。コーヒーを飲みながらのんびりしたり、誰かとおしゃべりしたりできれば有意義だし、楽しいと思ったんです。

平日は1日に約130〜140人が来ます。土日は1日に約180〜190人が来ますが、みなだいたい2時間はサロンにいて、のんびりしていますよ。

―― あなたがベルリンに創業してから、ベルリンのコインランドリーは変わりましたか?

大きく変わりました。店内で流す音楽を変えたり、壁紙を貼り替えたりした店舗も少なくありません。それは素晴らしいことです。

「FREDDY LECK」を完全に真似したお店がオープンしたことがありましたが、すぐに閉店しました。なにが差をつけたか。それは、「FREDDY LECK」がお客さまと育んでいるものが、「友情」であるということです。

10年(※2018年で10周年を迎える)の間、「FREDDY LECK」はなにも変えていません。それはとても重要なことなのです。

特に、年配の方にとって、「変わらない」というのはなによりの安心材料です。彼らは多く、朝にやってきますが、知っている人がいるということは、彼らにとって非常に大事なことです。

洗濯は、下着などプライベートなものを含みます。見られたら恥ずかしい洗濯ものもありますね。そんなとき、気心知れた人がいてくれると、安心できます。

私たちは、洗濯ものを見たら誰が来たか分かります。「これはポールのだ」「エマが来ていたな」。それって素晴らしいことじゃないですか?

サロンに来たけど、ただ洗濯がしたいだけで、話したくない気分のときもあるでしょう。私たちは、お客さまがどういう状態なのかも分かりますし、それを尊重します。

友情を育む意志こそ、我々のサービスなのです。

ベルリンの「ウォッシュサロン」にて。

―― 特に思い出のあるお客さまはいますか?

もう大勢います!

奥さまと週に1回来られる、ある年配の男性がいました。だいたい男性と女性でいっしょに来られる方は、女性が作業をして、男性はテーブルに座って新聞を読まれるという方が多いんですが、このお二人の場合は逆でした。男性が洗濯をするんですが、彼は身長が低かったので、ズボンがウェストのかなり高い位置にきていました。背伸びしながら作業をするのですが、その様子がとても愛らしくて。ウォッシュサロンに来られるようになって2年目の頃、奥さまが亡くなりました。

その男性は以来、一人で来られるようになったのですが、隔週になり、3週間おきになり……だんだん来られなくなったんですね。それで私やスタッフが、洗濯ものをピックアップに行くようになったんですが、彼は必ずそれぞれの袋に「液体洗剤で洗ってください」「固形石鹸で洗ってください」って、メモを貼っていたんです! 昨年、彼も亡くなりましたが、私たちはみんな彼の死が悲しくて仕方ありませんでした。実は、彼のそのメモを全てとってあるんですよ。

ほかに、ウォッシュサロンで出会って結婚したカップルもいましたし、あとすごくおもしろかったのは、オーストラリアからいらした若い男性。彼は突然素っ裸になって、着ていたものも含めて全部洗濯しだしたんです。下着もですよ! それで、タオル1枚腰に巻いて座っていました。私はさすがに見かねて、彼に「ここには年配の女性も来る。どうか素っ裸だけはやめてくれないか」って注意したこともありました。

―― たくさんの出会いの物語が、ウォッシュサロンでは生まれているのですね!

そうなのです! そして私にとって、とても重要なことがあります。ウォッシュサロンには、貧しい人もお金持ちの人も来ます。彼らがサロンで、膝を突き合わせておしゃべりしているのは、素晴らしいことだと思います。

未亡人の方も多くいらっしゃいますが、彼女たちはふだん孤独だといいます。でも週に1回なりウォッシュサロンに来るときは孤独ではありません。彼女たちは私たちにどんなふうにその1週間を過ごしていたか話してくれます。私たちも尋ねます。

2009年にウォッシュサロンで働きはじめたマルコという男性スタッフがいるのですが、年配の女性のお客さまがたは、みんなマルコに夢中なんですよ。だって、彼はとてもフレンドリーなんです! 洗濯ものを取りにきてほしいという方がいれば、彼は取りに行きます。

ほかにイーナスというスタッフがいますが、お客さまの中には、「イーナスは今日はいる? イーナスがいるときに行きたいの」って電話してからいらっしゃるんですよ。みんな家族だと思っています。

ベルリンの「ウォッシュサロン」にて。

―― 日本のチームとの協業は8年に及びます。コラボレーションを振り返っていかがでしょう?

実は、日本のチームが私に初めて連絡をくれた日を覚えてるんです。バラク・オバマがアメリカ合衆国大統領に就任した日だったので、2009年1月ですね。

私はその前月の12月に車の事故にあって、家でまだ寝ていたんですね。ベッドに寝転んで、バラク・オバマの就任式を見ていたらメールが届いたんです。

それが、日本のチームからのメールだったんです。それ以来、私たちは友情を育んできました。

アイテム数個の取り扱いから始まり、徐々に大きな取り組みになっていきました。私の夢をいっしょに見てくれる素晴らしい友人だと思っています。なかなか出会えるものではありません。

―― コインランドリーを始める前は俳優だったと聞いています。

いまでも俳優業をしていますよ。映画も撮っています。ウォッシュサロンのお客さまは、私にとって舞台を見てくださる観客と同じです。演者は、観客がいなければ存在できません。

ウォッシュサロンのお客さまは、観客と同じです。私はお客さまによって生かされていると思っています。

―― 最後に日本の新しい友人たちにメッセージを!

ウォッシュサロンはいつでもあなたのためにあります。おしゃべりをしたいときはいらしてください。静かに過ごしたいときは、私たちも静かにしています。質問があればなんでも聞いてください。

だから、ようこそ! ここはあなたのリビングルームです!

FREDDY LECK sein WASCHSALON TOKYO

【address】〒152-0001 東京都目黒区中央町1丁目3-13
【tel】03-6412-8671
【open hours】9:00〜21:00

【website】https://www.freddy-leck-sein-waschsalon.jp/

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