小誌ライターでもあるMie Manabe。今回だけは、愛称の『まなべ』と呼ぼう。
筆者とまなべの出会いはおよそ5年前。「エシカルファッション」というキーワードが日本でも注目されるようになった最初の頃だ。
身長148cmの小柄な体のどこにそんなパワーがあるの? というほどのスタミナで、当時から精力的に「エシカル」とはなにかを探っていた。
そんな彼女が2017年2月、オンラインショップ「atelier bourgeons(アトリエ・ブルジョン)」をオープン。それは、彼女がついに出した「エシカルとはなにか?」に対する答えだった。
まなべがたどり着いた答えとは? あらためて尋ねてみた。
ーー 私たちが出会ったのは、2012年の5年前でしたね。そのときから熱心にエシカルファッションについて研究していましたが、エシカルに興味を持ったきっかけは?
はじめは大学3年生で行った、フランスに短期留学のとき。私は本当に小さい頃から洋服が好きで、将来は服に携わる仕事に就きたいなと思っていたんですけど、両親が反対して……。それで大学には行くんですが、どうせならと、フランス語学科に進学したんです。
2010年当時は、フランスでもファストファッションの波が押し寄せていた時期で、どこを見ても同じ、安価な服がたくさん売られていたんです。その様子を見ながら、「私はこの洋服の業界に就いてもいいのだろうか」っていう違和感を抱いてしまったんです。
フランスから名古屋に帰ったとき、たまたま長瀬典子さんというスタイリストの方に出会い、その方に「『エシカル』という新しい分野のファッションショーがあるからお手伝いしてみない?」と、誘われたのがきっかけでした。
ーー 毎年名古屋市の白鳥庭園で行われるエシカル&フェアトレード・ファッションショーですね。
そうです。調べて見ると、「エシカル」は私の違和感を払拭してくれるものなのではないかと思ったんです。
タレントである原田さとみさんが精力的に推進していらっしゃって、一緒にエシカルファッションのセレクトショップ「エシカルベネロープ」立ち上げのお手伝いをしたり、ショップスタッフをやったり、名古屋でやるエシカルファッションショーのスタイリストのお手伝いをさせてもらったり、いろんな活動に参加させてもらいました。
ほかにも、フェアトレードについての卒論を書いたり、東京でのオーガニックコットンについてのサミットに参加したり、エシカルブランドのデザイナーさんに会いに行ったりもしていました。
ーー 振り返っても、すごくパワフルでしたよね。ここまで熱心な人も、正直珍しい……っていうくらいに(笑)。
それがちょうど就活の時期といっしょだったんですけど、将来の道を探りたくても、進め方が分からなかったんです。「エシカル」ってすごく抽象的だし、とにかくいろんなところに顔を出して学ぶしか、方法がなかったんです。
ーー 卒業後は就職はせず、そのまま渡仏に向けて準備を始めていましたよね。フランスに行くことにしたのは?
もともとヴィンテージや一点ものが好きで、「服が好き」というところから始まっていますし、かわいい服にこそ背景があるのではないかと思っていたんです。それにやっぱり、「洋服作りがやりたい!」って気持ちで、モデリスト養成学校に行くことにしました。
フランスに住むには、まず1年間の滞在費を貯めておかないとビザが下りないし、そのうえ1年間分の学費も貯めなくちゃいけなくて。いろんなバイトを掛け持ちして300万貯めました。でも2年目からの滞在費までは用意できなかったです……。
ーー そのモデリスト養成学校って、どんな学校なんですか?
AICP(Academie Internationale de Coupe de Paris)という、唯一フランス政府の認可をもらっているパタンナー養成学校で、本当に技術を学ぶところです。日本人も卒業生には、腕を買われてオートクチュールのパタンナーになって活躍している人もいます。
2年目は「アルテルナンス」という、働きながら学校に通うという制度を使って、レディースブランドで働きながら、無料で授業を受けさせてもらいました。
ーー ファッションのメッカで服に深く触れて、エシカルについての考えは変わりましたか?
短期留学でパッと街を見ただけだと、ファストファッションの大量生産・大量消費の波が目立っているように感じたんですけど、実際住んでみると、やっぱりヴィンテージ文化が根づいているのをすごく感じました。女の子がお母さんの服を着まわしていたりとか。
昔からのものを大事にする文化が性に合っていたのかもしれません。だからオーガニックやフェアトレードなどエシカルで新しいものを作るより、昔のものを拾い上げてつなげていく方向に自然と行きましたね。
ーー 「atelier bourgeons」はオリジナルのほかに、まなべが見つけたヴィンテージアイテムも販売していますが、そういう経緯だったんですね。ヴィンテージ品はどうやって探しているんですか?
蚤の市を一つずつ回ったりもしますし、NGO関連のセカンドハンドストアで買い付けたりもします。フランスの蚤の市は有名ですが、フランス語が話せないと掘り下げて見るのが難しい部分があります。だからそのぶん私たちが時間を掛け、掘り下げながら買い付けます。
でも、ただ買い付けて売るんじゃなくて、リメイクをしたり、ほつれているところを修理したりして販売しています。「テキスタイルはかわいいのに、パターンが古臭い」なんていうアイテムって、ありますよね。それを直す部分は直して、「salvaged by atelier bourgeons」として販売しています。
ーー それってすごくありがたい! まなべは自分の服も、丁寧に自分らしく直して着ていてオシャレだなぁと思ってました。そのセンスで直してもらえるならすごく嬉しい!
昔から自分でも、ヴィンテージを買ったときはカスタマイズしていたんですよ。というのも、私は148cmで、背がかなり小さいので……(笑)。だから、カスタマイズするのがもう染み付いていたんですよね。それが性に合っていたし、お直しを諦めてしまうのがもったいないなって。
そのままで売りたいと思うものはそのままで販売しつつ、いまの時代に合うかたちで、昔ながらのヴィンテージ品の良さを伝えていきたいです。
ーー 翻って、オリジナルアイテムはどうやって作っているんですか?
オリジナルの商品は、オートクチュールメゾンや、コレクションメゾンなどのデッドストック生地を使って作っています。パリには、思いがけない嬉しいことがいっぱいあって、ボタン屋さんや生地屋さんも、ふとした街中での縁がつながって出会った人もいます。そういったつながりで服を作れるのは楽しいです!
ーー ショップ&ブランド名である「atelier bourgeons」には、どういう思いを込めたんですか?
「bourgeons」は、フランス語で「蕾」という意味。蕾はまだ咲いてない花。私たちが作る服が「蕾」で、着る人が咲かせてくれる。そうして、どんどんつながっていったらいいなという意味を込めています。着る人に、次につなげてもらいたいなって。
ーー あらためて、いろんな道のりを経たいま、まなべが考える「エシカル」って、どういうものですか?
「身の周りにあるモノへの感謝を忘れずに、工夫しながら楽しく長く連れ添うこと」が、いまの私にとってのエシカルですね。単純に「できるだけモノを大切にしよう」と心がけることで、自然といろんな物事がポジティブな方向へ進んでいくと思うんです。
モノを長く大切にすれば、当然資源のムダ使いが減ります。そしてその行為は、モノができるまでの過程で関わっている人々を労い、感謝することにもつながると思うんです。
日頃からその気持ちを持っていると、原料や作られた場所などの背景に、自然と目が向くようになります。その中で、素敵な職人技に出会ったり、ときには生産時の裏側にある問題を垣間見たりと、新しいことを発見したり気づいたりする機会が増えるんです。私もそうやって、視野を広げていくことができたのではないかと思っています。
だんだん気づいたんですが、愛着が湧く、好きなモノに囲まれて暮らしていると、自然と気分まで明るくなります。しかもそれがモノだけでなく周りの人にまで伝わって、良い連鎖反応を起こします。簡単で基本的なことこそ、実は全てにつながっているのではないかと、最近改めて感じるようになりました。
すでにあるモノを使ってなにかを作るのはとても新鮮でおもしろいですし、埋もれてしまっていたかわいい服やアクセサリーを、いまにつなげていけるのもすごく嬉しいです。
心がときめいて、流行や時代にとらわれずに愛し続けられるような服を、みなさんにお届けできるよう、これからも頑張ります!
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