日本の高い技術を発信する「傳tutaee」が展開する日傘のライン「ツタエノヒガサ」。毎シーズン、職人による高度な技術を生かした新柄に取り組んでいるが、2017年4月から新しく折りたたみ傘のシリーズ「ウサギノタスキ」がラインナップに加わった。
2014年から開発を始め、2016年にテスト的に発表。好評に受け、いよいよ正式に販売開始となった同商品も、東京をはじめ、全国のさまざまな技術の職人たちとともに作り上げたアイテムだ。
折りたたみ傘「ウサギノタスキ」は、三段に折りたためるタイプで、親骨の長さはオリジナルサイズの47cm。持ち手や
親骨の長さは、47cm。平均的な折りたたみ傘の親骨は、50cm前後。開いた状態では、小さめといえるサイズに仕上げた。
日傘なので、洋服のスタイリングを邪魔しない大きさであることも大事。でも、日傘として顔・首周りはしっかり覆える大きさは必要。折り畳みでのバランスを考えると、47cmというサイズがベストでした。
そう話すのは、「傳tutaee」および「ツタエノヒガサ」デザイナーの、合田知勢子さん。
ただし折りたたんだ状態では、長い持ち手と石突のために、一般的なものより少し大きくなる。
折りたたみ傘においては、一般的にデメリットと捉えられがちな「大きさ」。しかしそれが全く気にならないのは、折りたたんだ状態でも美しくなるよう計算しつくされたバランス感のためだろう。
多くのメーカーさんは、よりコンパクトな傘を目指して作っておられます。機能面では、それはすごく良いこと。折りたたみとして美しいバランスを考えるのは難しかったのですが、この日傘はやっぱり「持っていて楽しい」ものにしたかったんです。(同上)
日傘を入れるための傘袋は、巾着状になっており、これもオリジナル。日傘を入れると、中から持ち手がすっと伸びる。ランチにちょっと出るときなど、あまり鞄を持ち歩きたくないシーンに、傘袋だけを持ち歩くときも美しいバランスを目指した。
実際に手にとってみると、そうしたさまざまなデザイン上の工夫が「ものを持つよろこび」につながっているのが分かる。それらを通じて、一つの宝物を大切に愛でて育てていくようなもの付き合いに、自然と視点が変わるのだ。
それは、経年変化を味わえる生地にも現れている。
紫外線防止加工・撥水加工を施しているのでゆっくりですが、柿渋泥染めや、埼玉の「武州藍」と呼ばれる藍染の生地は、お付き合いし続けてもらううちに経年変化によって、使う人それぞれの風合いが生まれてきます。そうした変化を楽しんでいただけると嬉しいです。(同上)
「傳tutaee」の広報・吉原丈弘さんも、次のように話す。
一つ変えると、大きく変わることってある。例えば、コーヒー豆をいつもよりおいしいものに変えてみたら、カップも飲み方も変えようかな、と思ったり。その“きっかけ”の一つになれたら嬉しいですね。
日傘なので、使う方のスタイリングの“主役”になろうとは思っていません。持つ方の生活スタイルがあってのアイテム。だから、持つ方の生活スタイルの“調味料”として、持っていて楽しいものを作っていけたらと思っています。
生地の展開はこれまでの長傘と同じく、およそ30柄ほど。注染や手捺染など、全国4カ所の伝統技術の工場と製作した。
広げた状態ではまた印象が変わるので、お顔に合わせながら選ばれる方も多いです。すると、最初に考えていたものと違うものを選ぶ方も多いですよ。選ぶのも楽しいと思います。(同上)
東京の各傘関連工房といっしょに開発をした同シリーズだが、これまで長傘を作ってきた経緯からスムーズな協業ができたか……といえば、必ずしもそうではない。2年間対話を重ねながら進めてきたと、合田氏は振り返る。
やはり新しい取り組みをするのは勇気がいること。一般的な、いままで自分たちが作ってきた傘とは違うサイズや見た目なので、こちらの希望どおり正確に作ってはくれますが、最初は抵抗があるようでしたね。(合田)
好調な販売やメディア露出などの反響を見て、徐々に職人たちも手応えを感じ、受け入れてくれているという。
しかし、高齢化がますます進む産業。状況はなかなか逼迫している。
ご高齢の職人さんも多いので、体調を崩されてしまったり、工場が廃業してしまったりということも、作る過程の中でありました。そういう状況を目の当たりにすると、焦る気持ちにはなりますが、できることから一つずつ、と思っています。(同上)
価格は、16,000~20,000円(税別)。購入は、直営店「名前のないところ」ほか、全国の各取り扱い店舗にて。
これまで職人たちともに取り組んだ柄も、基本的には廃盤を作らず継続して作り続けることを心がけており、折りたたまない長傘タイプの日傘も、継続して好評展開中だ。
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