突然街中に出現する本屋・
いつの間にか、日常に「本」が忍び込んでくる……。
現代を生きる人々は悩みが尽きない。
中でも、近年大きな関心が寄せられているのが生活習慣病である。
生活習慣が発症に深く関与していると考えられている疾患には、高血圧、脂肪異常症、糖尿病、山で遭難などがある。
日頃のコレステロール値を抑えないと、一度入った山から出られなくなるのである。
日本において生活習慣病患者は約1,000万人といわれている。つまり1,000万人が山で遭難する可能性があるということだ。
では、食生活を改善し、タバコや飲酒を控え、睡眠時間をしっかり確保すれば、この問題は解決するのだろうか。
ネットで検索したとこと「生活習慣病は遺伝する」と書いてあった。
どれだけ本人が気をつけたところで、山での遭難は避けられないかもしれない。
しかし遭難するのも悪いことばかりではない。普段とは違った出会いや発見があるからだ。
そういうわけで山で遭難したら出会いそうな本を紹介する。
ぼくの死体をよろしくたのむ
川上 弘美(著)、小学館、2017年02月
「よろしく頼む!」と言われると、だいたいろくでもない注文がついてくる。
「今日は残業よろしく頼むな!」とか「道頓堀に飛び込む例のあれ、よろしく頼むな!」とか、「まあこれくらいならお願いしても大丈夫だろう」というちょっとした無茶振りが飛んでくる場合が多い。
しかし何事にも例外はある。本書はどうだろうか。
『僕の死体をよろしく頼む』
…………。
完全にアウトである。JK風に言うと「まぢむり。。。」だ!
本書はSFともファンタジーともいえない不思議な短編集である。
「一晩、一緒に過ごしてください。お金は払います」と言ってくる女性や、「以前お世話になってた」父親の旧友(?)の女性を年に2回訪れる少女などなど。
小説には答えがなく、山で遭難したかのような気分になる。
しかし解釈を求めて彷徨う時間も、また楽しいものだと思い出させてくれる。
山で遭難するときには心強い一冊である。
疲れすぎて眠れぬ夜のために
内田 樹(著)、角川書店、2007年9月
山で起きるアンラッキーなことランキング第3位は、遭難すること。第2位は、熊に出会うことである。
そして、栄えある第1位は、山で遭難したうえに、熊に出会うことである。
熊には人を襲う熊や、赤い服を着てハチミツを食べる熊がいるが、最も恐ろしいのは、寝不足のときに目元に現れるタイプのクマである。
私はいま、朝方7時に一睡もせずに本稿を書いているが、「くまに出会うととっても怖い! わー!」や、「くまにクマがあるとまるでパンダだ!」といった、著しく知能指数の低い文章しか思いつかない(※いつもである)。
今回ご紹介するクマ本はこちら『疲れすぎて眠れぬ夜のために』。
今回はあえて内容の紹介は伏せておくが(※寝不足による手抜きでは一切ありません( ˘ω˘ ) スヤァ )、眠れないから読んでみようと手に取ると、おもしろすぎて逆に眠れなくなり、クマを目元に飼ってしまう。
山で見かけたときには読み耽ってみてはいかがだろうか。
世界の廃船と廃墟
水野 久美(テキスト)・アフロ(写真)、青幻舎、2017年2月
人生とは選択の連続である。
学校に行くかお布団でスヤスヤ眠るか、
読書をするかTwitterを見るか、
就職をするか本屋さんをつくるか……。
それは全てあなた次第である(ちなみに劃桜堂は、全て後者である)。
山で遭難したとき、あなたは「こんなことなら海に行っておけば良かった」と思うかもしれない。
そんなときに「海もそんなに甘くないで( ˘ω˘ )」と、やってくるのが本書『世界の廃船と廃墟』である。
連載最終回にして初めて本屋さんっぽいことを言うが、本は、必要なときに、向こうから自然とやってくるものである。
本書は写真集で、解釈は特に人それぞれだと思うが、「迷い込み、時間が経ち、それが当たり前になること」がテーマではないかと思う。
常識に向かっていくことを「迷い込む」とは言わない。
迷い込んだ先に、しがらみに囚われないあなたの「当たり前」が待っているのではないだろうか。
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