なぜだか忙しい日々……。
その日も変わらず足早に歩を進めていると、ちらりと視界を横切るカラフルな光景。
ハッとして戻ってみると、なんとまあ見たこともない不思議な世界!
赤い猿に、目の垂れたパンダ。
ピンクの象に、足の生えた魚……?
夢かおとぎの国に出てきそうな動物や植物たちがずらりと並んで、私を見つめて語りかける。
「そう焦らないで、少し休んでおゆきなさい」
足を動かすこともすっかり忘れて、見入ってしまったアクセサリーたちはスウェーデン生まれでした。
今回は、スウェーデンのアクセサリーブランド「K-Form」のデザイナーであるTommy Karlssonさんにお話を伺いました。
―― Tommyさんがブランドを作るきっかけはなんだったのですか?
25年アクセサリーメーカーに務めていますが、最初はほとんど趣味としてやっており、スウェーデン最南部スコーネ地方にある都市・マルメで美術の先生として働いていました。本格的にアクセサリーの仕事にフルタイムで就くようになったのは2001年からです。
もともと、アクセサリーデザイナーになりたいと感じたことは一度もありませんでした。転機は、ドイツの芸術雑誌「アート・オレア(Art Aurea)」を読んだときでした。80年代前半にオランダのアムステルダムで開かれたアクセサリー展示会「Gallery Ra」を知り、アクセサリー作りにはほとんど全てと言っていいくらい、いろんな素材が使えると気づいたのです。それが私をアクセサリー作りに没頭させました。
―― 素材がきっかけだったのですね。素材には、なにを使用していますか?
最初に作った作品は、コルクを使ったネックレスでした。それを、あるスウェーデンのアパレル企業に見せたところ、たくさん注文をいただきました。その2〜3年後、私は古いボタン工場に出合いました。そこでガラスやアクリルのような透明の素材をアクセサリーの素材として使用することを思いたち、勉強を始めましたが、すぐにアクリルで無限大の形が作れることに気づきました。それからはアクリルのみを使用しています。
―― どのデザインも、とてもユニークなものばかりです! このデザインはどうやって生まれたのですか?
実は、どうやって思いついたのか、私自身分からないのです! けれど、1つのことが芋づる式に次のきっかけになりながら、長い過程を経てできていきました。
―― では、アクセサリーをデザインするにあたって影響を受けた人物やものなどはありますか?
イタリアのデザイナー集団・メンフィスと、同じくイタリアのデザイナーであるエットレ・ソットサスはここ数年、私にアイディアを与えてくれました。ほかにもいろんなものが、私にひらめきを与えてくれます。雑誌やインターネット、もちろん自然も!
―― 実際に、どんな工程で作っているのですか?
最初に新しい形を作るときはまずシンプルなスケッチを描くことから始めます。それからそれをコンピューターで描き直します。その後はボタン工場に行き、白いアクリル板から作品をを切り出します。切って磨いた後、色を塗り、最後に工房に持ち帰って柄をプリントしたり、組み立てたりします。
―― やはり、デザインのユニークさの秘密が気になります。Tommyさんの生活にヒントがあるのでは……?! と思ったのですが、だいたい毎日どんなふうに過ごしていますか?
まず起きて、朝ごはんにお粥とフルーツを強めのコーヒーと食べます。それから、工房に入って仕事をするのが、私の日常です。余談ですが、日々の疲れを取ったり、新しいひらめきを求めて、なるべく旅行に行くように心がけています。インド、ベトナム、ギリシャ、そしてスペインは私のお気に入りの国です。
―― 「K-Form」のアクセサリーと合わせるのに、オススメのスタイルなどはありますか?
模様のないカラフルな服、例えばデンマークのブランドである「Uno」は、合うと思っていました。もう存在しないのですが……。
または、スウェーデンのデザイナーであるGudrun Sjödenが手がける洋服も合うと思います。ちなみに私はここで15年以上の間、アクセサリーを手がけていました。
―― これからの予定は?
秋の間は、ヨーロッパで行われているさまざまな展示会などに出かけて、新しいデザインを探したいと思っています。これがこの仕事の醍醐味でもありますね!
(インタビューここまで)
スウェーデンに限らず、さまざまな人や環境、あるいはもの、自然のエッセンスが含まれているのでしょう。
鮮やかさとユニークさ、そしてセンスを凝縮したデザインには、ふだん私たちがグレーな日常の中で待ち続けている、時計を持ったうさぎがそばを駆け抜けていくような非日常が宿っている気がします。
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