「突然街中に出現する本屋・
いつの間にか、日常に「本」が忍び込んでくる……。
人類の歴史を紐解いていくと、その生命の起源はおよそ4000年前まで遡る。
海で生まれた生物が地上に上がり、進化を遂げてきた。
では、初めての人類はどのように誕生したのであろうか。
諸説あるが、「川から流れてきた」というのが最新の学術研究から明らかになってきた。
劃桜堂も幼少の頃、父母に出生の話を聞いたら、「川から流れてきた」と言われた。
高貴な生まれであることは間違いないので、セーヌ川あたりではないかと思う。
文明は川を中心に広がったといわれているが、いつ子どもが川から流れてくるか分からない。
だから、当時は川から目を離すわけにはいかなかった。
そこで人々は川で洗濯を始めたのである。
川には、実に多様なものが流れてきていた。
桃やヒトはもちろん。投資信託、分譲マンション、ビーフストロガノフまで。
そして本も。
そういうわけで川で洗濯をしているときに流れてきそうな本を紹介する。
もものかんづめ
さくら ももこ(著)、集英社、2001年03月
人間は、とりあえずなんでも缶詰にしたがる生きものである。
焼き鳥、サバ、カニ、作家などである。
某昔話で川から桃が流れてきたが、もしかするとそれは桃缶だったのではなかろうか。
もし桃ではなく桃缶が流れてきたとするとこんな感じになる。
「どんぶらこ、どんぶらこと、桃の缶詰が流れてきたのを、片手でさっと拾い上げ、万能ナイフの缶切りを使い、手際良く缶を開き、中から出てきた桃をさっと切り分けると、そこには元気な赤ちゃんが……」
描写が長すぎて確実にボツになる。
というわけで、流れてきたのは桃ということになっているが、桃缶の記録が
さて、本書はさくらももこさんのエッセイ集だが、ちょっと永久に缶詰に封印したいようなほろ甘い(?)思い出話が多い。
大人になったさくらももこさんが、過去の自分をシュールに分析しているのが、なんともおもしろい一冊である。
現代思想の遭難者たち
いしい ひさいち(著)、講談社、2016年05月
「そして川に流れ着いた」とは、なんと便利な言葉だろうか。どんな文章の最後につけても全く違和感がない。
「古池や/蛙飛び込む/水の音/そして川に流れ着いた」
「やっと衆議院になったんです/この日本を変えたい/そして川に流れ着いた」
「また新聞の勧誘か/うちは新聞はとらん/そして川に流れ着いた」
本書は、『現代思想の遭難者たち』ということで、まさに川から流れてきたであろう一冊である。
思想は、必ずしも人生を良い方向に導くものではない。
流れに身を任せ、なにも気にせず生きていたほうが、まともな場所に流れ着くことがある。
しかしあえて流れに逆らい、波にのまれて溺れたり、未開の地で遭難したりすると、どうしても気にせずにはいられないものだ。
川から本書を拾い上げてみよう。あなたの行き着く先は、きっと誰にも分からなくなる/そして川に流れ着いた。
ツイッターで学んだいちばん大切なこと――共同創業者の「つぶやき」
ビズ・ストーン(著)、石垣賀子 (翻訳)、早川書房、2014年09
世界中でいちばん流れているのはみなさんご存知のとおり、Twitterである。
そしてみなさんもご存知のとおり、劃桜堂はTwitterが大好きである。
テレビも新聞もゲームも自宅にはないが、Twitterだけあれば生きていける。
その日の気分はTwitterの反応によって左右される。
自分でこれは結構おもしろいなと思って呟いたツイート(例えば「部屋の電気をLEDに変えて明るくなったので相対的に暗い人間になりました」や「ドイツ人の3人に1人はHARIBO」)は、全く反応が得られず、「もう知らない、読書しよ……」という気分になった。
本書はTwitterの共同創業者ビズ・ストーン氏の「つぶやき」を紹介してある。
普段なにげなく利用しているサービスができ上がるまで、いろんな苦労や工夫を重ねてきたということを本人の声で語りかけてくるような一冊である。
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