「きのこ」とは、食べるもの。もしこの「きのこ」が、生地として使えるとしたら……?
イタリアにある企業が、きのこからレザーを開発。いったいどんなものだろうか?
「きのこ」がレザーに……?!
イタリア・フィレンツェにあるGrado Zero Espaceは、テキスタイル・イノベーションを掲げる素材開発の企業。ウェアラブルなスマート・マテリアルから、バイオテクノロジーを駆使した素材まで、幅広く開発を行っている。
そんな同社が、牛革などのアニマルレザーに代わる新しい素材を開発。「野菜からつくる環境に優しい素材」として生まれたのは、なんと「きのこ」レザー!
きのこを培養して作られる代替レザー「MuSkin」は、きのこの一種・Phellinus ellipsoideusの細胞から作られている。Phellinus ellipsoideusは、主に亜熱帯地帯の森林に生息している大きな寄生菌。同社ではそれらを採取し、ラボで培養している。
ポリ塩化ビニルやポリウレタンが中心のヴィーガンレザーと違い、もともとは生物である「Muskin」は、、「完全に土に還る」ことができるだけでなく、“呼吸”している。その“呼吸”がバクテリアの増殖を抑え、合皮の靴を履いたときに悩まされがちな、足の臭いや汗を抑える効果があるという。また、そのままだと防水性はないが、ワックスを使った加工でその問題も解決する。
マッシュルームレザーの特性
現在、多くの企業がキノコを使用した製品開発に力を入れており、「MuSkin」はその一つにすぎない。
一般的なレザーは、直線の生地と違い、動物の体の形をした生地の範囲から切り出して使用するため、端材となる部分が多かった。しかしきのこから生まれたレザーは、財布や時計ストラップ、インソールや帽子などへと簡単に変形できるので、端材も出にくいという。
また、自由自在に質感を変えることができ、簡単にエキゾチックレザーのように加工できるのも特徴。ガチョウの肌の凹凸、蛇のウロコの感じ、厚みのあるワニ革の質感なども表現できる。しかも手触りは、ラムレザーのような柔らかさを保ちながら、である。
なお、鞣しや染めの段階で環境に悪いケミカルを使用しないので、敏感肌の人も安心して使うことができる。
「Muskin」を使うには?
現在、「Muskin」では、small, medium, largeの3つのサイズを展開している。クオリティも2種類あり、「first」「second」というグレードに分けられる。後者の「second」には穴や傷が見られるが、マッシュルームレザーの醍醐味は、なんといっても「オーガニックでナチュラルな質感」。こうしたキズが、逆に「本物のレザー感」を引き出しているともいえる。
価格は、約20×30cmのサイズで約6千円(※1ドル=114円換算)。
「MuSkin」はすでに特許を得て、複数のファッション企業とも契約を取り交わしている。この新しい素材の今後が楽しみだ。
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