両足義足で活動するアーティスト・片山真理さん。両足とも脛骨欠損という主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに両足を切断しました。以来、その自分だけの身体を介した世界との関わりを、作品にし続けています。
2016年、森美術館開館以来、3年に1度、日本のアートシーンを総覧する展覧会「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」出展を経て、年末には妊娠を発表した真理さん。その間は、さまざまな出来事が重なり、「手」についての作品を3つ発表しました。2本指の左手を持つ彼女が考えたこと、それを促した出会いとは? 出産を控えてのロング・インタビューを行いました。
直島・女文楽との出会い
「瀬戸内国際芸術祭」参加企画のために、直島に足を運ぶようになったのは2015年の秋。2016年3月からの「六本木クロッシング」(グループ展、森美術館、東京)と、「shadow puppet – 3331 ART FAIR recommended artists」(個展、3331ギャラリー、東京)に出品する作品の準備を並行しながら、何度か訪ねるうち、直島の人々と仲良くなり、歴史や文化を教わりました。その中で出会ったのが、女文楽です。
女文楽は、直島に伝わる伝統的な人形劇。日本で唯一の女性だけの文楽一座ともいわれています。直島の文楽は江戸時代から盛んでしたが、一時途絶え、昭和に入ってから三人の女性が復活させたそうです。
実際に女文楽を見て、まず惹かれたのは黒子のみなさんの“手”でした。文楽に使われる人形は、足がないままで完成です(※足があるタイプの文楽人形もあります)。観客が人形の足と思って見るのは、黒子の腕です。最初は、その事実に純粋に驚きましたが、ふと自分の手を振り返ってみると、「私と同じだな」と、気づきました。
人形と同じく、私には足がありませんが、なにをするにも手がありました。私の右手は5本指。左手は2本指の裂手です。私と私以外の世界との関わりを作ってきたのが“手”だったなと、ふと振り返ったことが最初のきっかけでした。
コメントを投稿するにはログインしてください。