リネン……すなわち麻といえば、夏の素材というイメージがありますよね。夏にリネンのシャツやパンツを着ると、さらっとしたテクスチャーが心地良い! 吸水性・発散性に優れたリネンは、高温多湿な日本の夏にぴったりです。
でも冬になると、途端に着なくなるのもリネン。衣替えでリネンアイテムを全部片付けてしまうこともあるのでは。
リネン=夏。「Chanv(シャンヴ)」は、この常識を打ち破るブランド。フランス語の「Chanvre=麻」に由来するブランド名のとおり、リネンに特化したものづくりをしています。
なぜリネンなの? リネンの魅力は? 「Chanv」の3人に尋ねました。
「Chanv」の3人の男たち
「Chanv」を立ち上げたのは、鈴木さん、上野さん、
実は3人はふだん、それぞれ別の仕事をしています。上野さんの“本業”は、飲食店の経営。そんな上野さんが「Chanv」が生まれるきっかけに。「リネンを使ってものづくりをやりたい」という“言い出しっぺ”だったといいます。
もともと飲食をやりながら雑貨の販売も手がけていました。その中に麻の雑貨もあって、「リネンって良いな」って、常々思ってたんです。探してみたら、リネンのメンズウェアがすごく少なかった。マーケットに少ないし、好きだし、だったら自分でやってみたいと思ったんです。(上野)
そこで、長年の友人であり、スタイリストとして活躍していた鈴木さんに、デザイナーとして声をかけたそう。しかし、当初鈴木さんは「乗り気になれなかった」と振り返ります。
ふだんスタイリストとして、多くのブランドさんの話を伺います。みなさん真摯にものづくりに向き合っておられるし、デザインも必死に生み出しているものばかり。最近はスタイリストが手がけるブランドも多くなりましたけど、僕にはその自信はなかったのもあって、「スタイリストがデザインをやるより、餅は餅屋」って思ってたんです。
でも、リネンに特化してやりたいっていうのを聞いて、たしかにリネンはアイテムの幅も少ないし、挑戦する意義があるんじゃないかと思いました。(鈴木)
そうして、産地とやり取りしながら実際の生産を担える宇土さんも加わり、2015SSコレクションで「Chanv」はデビュー。現在、週末ごとに集まって3人で年1回のコレクションを準備しています。
リネンというと、ナチュラルなテイストがイメージされやすいですし、実際にナチュラルなデザインが多いですが、スポーツやモードなど、時代のニーズに応じられるデザインを、リネンで提案しています。(鈴木)
リネン100%のみならず、テンセル混のリネンに、ウール混のリネン。さまざまなリネンを使った生地を使いながら、時代の空気感に応えます。
合言葉は“リネンに精通する”
現在は年1回のメンズ・コレクションのみの展開ですが、ゆくゆくは、リネンのスペシャリストとして、デイリーユースできるアパレルアイテムのみならず、機能性を重視したギアアイテム、雑貨にインテリアアイテムなど、トータルでリネンアイテムを手がけていきたいと話す「Chanv」。
ある著名なデザイナーさんが、「リネンは冬着てこそだよ!」っておっしゃってたのですが、まさにそのとおり。それに、ヨーロッパではリネンはオールシーズン使われるものとして定着しています。(鈴木)
すでにリネンを使った雑貨のプロデュースにも着手していますが、目下の課題は冬にも着られるアパレルづくり。
やはり、麻はただでさえ高価な原料。それに繊維自体が太いので、堅牢性もありますが、扱いにクセもあります。加えてもともと春夏向けの素材なので、生地のバリエーションも多くない。そういったもどかしさはありますよ。
例えば、冬物のコートを作るために素材から開発すると、1着10万円くらいになります。(宇土)
生地や工場への手配を担当する宇土さんは、そう難しさを語ります。
やっぱり身近なものとして使ってもらいたいので、牛歩ですが、“リネンに精通しているからこそできる工夫”を重ねて、求めやすい価格に落としていきます。デザインの細部をシンプルにしていくのにも、リネンの風合いや特性がより生きる方法があります。(上野)
三者三様のバックグラウンドを生かして
道のりはまだまだ始まったばかり。しかし3人の多様なバックグラウンドが柔軟な発想を招き、ブレイクスルーを起こしそう。
「おのおの仕事を持っている強みみたいなものを、ここで生かせている感じがある」と、上野さん。鈴木さんも、宇土さんも、「ふだん別々の仕事をしているから、日々考えることがみんなばらばら。それが新鮮だし刺激になって、楽しい」と、口を揃えます。
こうした環境にこそ、自由な発想が生まれそう! しかしもちろん、やるからにはビジネスとしての成功を目指していくと強調する3人。現在はセレクトショップ「かぐれ」のほか、「Journal Standard」での取り扱いが新しく決まりました。
いまはまだアパレルだけですが、ファッションブランドというより、「リネンのブランド」でありたい。さまざまなリネンアイテムを提案する積み重ねが利益になるようにしたいですね。(上野)
「大げさですけど」と、ちょっぴり照れながら鈴木さんが最後に付け加えました。
僕らのブランドを通じて、リネンに対する価値観が多様になっていったらすごいこと。そうなるよう、トライしていきたいです。(鈴木)
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