仕事の忙しかった日の夜に飲む1杯。大自然の中で飲む1杯。ビールの爽快感は格別! そんなビールを「できたて」で飲めるのは、ブルワリー(醸造所)に併設されたビアガーデンなどですが、ほとんどの場合、都心から離れた場所にあります。
2016年4月にオープンした「Y.Y.G.Brewery & Beer Kitchen(以下、Y.Y.G.)」はなんと、新宿という都心にブルワリーを持つお店。
できたてのクラフトビールを手軽に飲める1Fのカジュアルなカウンターと、おいしいお料理が楽しめる7Fのビアレストランに分かれており、ペイントされた手づくりのテーブルやお店のロゴなど、トータルでデザインされた店内は、オシャレ感があって女性にも人気。ビールのネーミングには、角筈、代々木、裏原宿、幡谷など新宿辺りの地名が付けられていて、地元のビールという印象を強いものにしています。
ビール造りを担当するのは、ブリューイング・マネージャー(醸造長)の
お客さまとの距離が近いクラフトビール
おもに麦芽とホップとイーストと水で作られるビール。大手ビール会社の場合、大量に作るためにたくさんの水と広い敷地が必要なので、ブルワリーが都心から離れた場所にあります。
しかし山之内さんは、「おいしいビールのためには、造った場所で飲むのが一番」と言います。
ビールの酵母は生きています。発酵や熟成が進む中で、大きな振動や温度変化が加わるとビールは劣化してしまいます。だから、移送の距離がなく、振動と温度変化が安定していることが大事。特にクラフトビールは、酵母を濾過していないので、環境が重要なんです。
「Y.Y.G.」では、大手の何十分の一というサイズの300Lのタンクが使われています。
小回りがきくので、醸造に柔軟でスピード感がある対応が可能です。お客さまのリクエストにもすぐに応えられます。
雑に作るとやっぱり雑な味になるんですよね。熟成があまいと、不純物が取り除けません。ビールは丁寧に綺麗に作っているので、マニアの方からも評価を頂いています。
「Today’s Beer List(本日のビールリスト)」には開栓の月日が記載されており、同じビールでも今日飲んだものと、一週間後に来て飲むものとでは、また違う味わいを楽しめるそう。
ほかとは違うユニークなレシピ
品質のデータをとって綿密に計算し、さらにそれを加味して、新しい発想でレシピを作る ――そんな、サイエンスとクリエイティブの両方が必要なビールづくり。
「Y.Y.G.」はユニークな発想で、ほかにはないクラフトビールを作っています。レシピを見ると、お茶やカカオパウダーなど、意外な原料が使われているものも。仕込は週に1回。2〜3回に1回は新作を出しているそう。
オープンしてから約37回仕込みをしていますが、さまざまなレシピに挑戦しています。女性向けに「ビタミンやミネラルが豊富なルイボスティーを使ってみようかな」「チョコレートを使ってみようか」「ブルーベリーを使ってみようか」など、少量で生産できるので、お客さまと会話していておもしろいアイデアが浮かんだらすぐに取り入れています。
また、ふらっと立ち寄れる1Fのバーで出すビールは、炭酸を弱くしているそう。炭酸は味ではなく刺激であるため、炭酸を少し取り除くことで舌当たりが良くなり、ビールの味をさらに深く味わえるようにとの思いからです。
いまの季節のおすすめは、長期熟成させたワインのようなビール「バーレーワイン」。ハチミツなどを入れて複雑な味にしています。また、じっくり熟成させアルコール度数も高めに。小規模醸造では珍しい「Y.Y.G.」の「バーレーワイン」を味わってください。
ファッションが好きで、「人と同じことはやりたくない」と話す山之内さん。「ビールづくり、カッコいいな」と、クラフトビール作りに携わるようになったそう。自分で作ったものを説明し、直接伝えられることが嬉しいそう。
気軽に行ける都会で、小さい規模に醸造所を構えていると、どうしてこういう味になるのか伝える機会も多くなります。そうして会話を楽しんでいるうちにビールの香りもだんだん開いてくる。クラフトビールが熟成して、味わいや香りが変化していくさまが、都会に住み、偶然その場に居合わせた人どうしの関係にも影響するおもしろさを感じています。
山之内さんの話を聞いていると、だからこそ「Y.Y.G.」のクラフトビールは、酵母もいきいきしておいしいのだろうな……と感じます。1Fはカフェみたいな感覚で、オシャレに立ち飲みもできます。さっそく、仕事帰りにサクッと立ち寄ってみたくなりました。
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