先月までは弊社ユナイテッドピープルの取り組みについて、半年にわたって
初回の今月は、昨年春に訪れたイギリス中部の小さな町・Todmorden(トッドモーデン)のお話です。
Todmordenは、人口約1万5千人の小さな小さな田舎町。数年前までこの町は、周辺のほかの町となにも変わらない場所でした。それがいまでは、世界各地から季節を問わず、訪問客が絶えません。その理由とは?
Todmordenが人を集める理由……それは、この町が取り組んでいる「エディブル・ガーデン(Edible garden)」の取り組みにあります。
直訳するなら「食べられる庭」ですが、町中のスペースを活用して、食べられる野菜(Edible vegetables)を植えているのです。
「野菜って、育てるのたいへんでは?!」と驚かれるかもしれませんが、「野菜」といってもその種類はさまざま。Todmordenでは、主にハーブ系の野菜が植えられていました。
どこで育てられているかというと、細長いプランターを駆使して店頭のスペースであったり、
河川敷はもちろん、
駐車場の脇のスペースや、道路沿いにも、
さらには、警察署の前にもありました!
とにかく、「わずかでも隙間があれば植えてしまおう!」という情熱を、町を歩きながら感じるくらい、あらゆる場所がエディブル・ガーデンになっていました。
そんなTodmordenですが、数年前までは、親世代の人たちが自分で料理をほとんどせず、冷凍食品などをレンジで温めて食べるばかりだったといいます。子どもたちは、卵がどこからくるのかも知らなかったくらいだと。また、町には農業に向くような土地がほぼなかったそうです。
しかしだからこそ、身近にある土地で、手軽に育てられる植物を植えはじめたのです。
さらにユニークなのは、このエディブル・ガーデンで育てられた野菜は、全て「Public(公)」のもの。誰でも好きに収穫してOKなのです。
そんな“地産地消”の植物を植える中で、地域の子どもたちにも参加してもらったり、収穫できた野菜で一緒に料理をしたりしているそう。そうして、地域内外の人とのコミュニケーションが増えるだけでなく、新たなビジネスも生まれているなど、さまざまな視点からプラスの循環が生まれています。
ガイドをしてくれたエステルさんは、旦那さんともども、ロンドン生まれロンドン育ち。10年ほど前までロンドンで暮らしていたものの、あまりに忙し過ぎる生活に嫌気が差し、Todmordenに引っ越してきたそうです。「Todmordenでの暮らしは最高よ!」とエステルさんは話します。
ロンドンでは、街中で誰かと話すことなんてなかった。Todmordenに来たら、通りですれ違った人たちと会話をする。大きな家族ができたみたい。いま70歳だけど、なにかあったとしても、すぐに誰かが必ず気づいてくれる。
実際に、一緒に町を歩いている間にも、すれ違った人たちと会話を交わしていました。
エディブル・ガーデンの取り組みは、食の問題に対する取り組みのようでありながら、環境問題や子どもの教育問題にも関わり、さらには地域のコミュニティ形成や、地域振興にもつながっています。一見小さな活動に見えて、実はとても大きなチャレンジなのではないかと思います。
ちなみに、Todmordenから始まったエディブル・ガーデンの取り組み、その名も「Incredible Edible Todmorden(インクレディブル・エディブル・トッドモーデン)」は、「If you eat you’re in.(食事をする人は誰もが参加者)」という方針。いまでは、世界各国に広がってきています。
2017年1月21日(土)から、エディブル・ガーデンと同じように、「食」から広がる楽しくおもしろい未来の可能性を探るドキュメンタリー『0円キッチン』が、アップリンク渋谷などで公開となります。
同作は、監督のダーヴィド・グロスがヨーロッパ5カ国を旅しながら、スーパーや一般家庭から捨てられている食べものをおいしい料理に大変身させたり、身近に隠れている食材を再発見したり、子どもたちと昆虫食を作ってみたり……と、さまざまな実験を重ねていくエンターテイメント・ムービーです。ぜひこちらもご覧になってみてください!
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