「SOAK(ソーク)」のバッグを見たとき、個性的なフォルムに惹かれました。持ち歩くという機能性だけを追求したものではなく、モダンで構築的なシルエットのものにはエレガンスが感じられます。
「SOAK」は、それぞれの作品の展示会を、場所を共有して開催していた女性4人が集まって生まれたデザイン事務所・株式会社ヘソ(以下、ヘソ)のバッグブランド。ユニークな社名の由来は「へ~、そう!」と、ちょっぴり笑えるものづくりをしているところからだそう。
「SOAK」の企画からデザイン、生産まで主に担当しているのは、尾野由佳さん。「SOAK」の魅力や女性4人の仕事、ものづくりの難しさについてお話しを伺ってみました。
ヘソでは、4人のクリエイターがそれぞれの得意分野を生かして、グラフィックデザインを中心としたディクレションや、パーティなどの空間演出、アイディアを練って企画から製作まで提案したりと、幅広い仕事を手がけています。
「SOAK」を主に担当する尾野さんは、企画からデザイン生産まで、イメージを具体的にカタチにする仕事を主に担当していますが、基本はどんな仕事も4人で話し合って決めているそう。
2015年SSからスタートした「SOAK」は、〈クライアントワークだけでなく、自分たちの感覚が一つひとつに行き届いたものづくりを発信していきたい〉という思いから始まったもの。ものづくりの手段は違っても、感覚的には同じ4人の個性が集まり完成しています。
「感覚的に同じ」という4人のバッグづくり
4人は全員、大学ではファッションコースに在籍。ファッションとしてのバッグという視点が生かされています。
尾野さんが使うマテリアルには、洋服のニットやリボンが。例えば『bustle』ではデザインの一部でもあるリボンが、結ぶことでバッグの一部として意味あるものになり、機能美に変化します。
「SOAK」は、洋服とバッグの中間のような感覚で作っています。洋服のようにデザインしていますが、一方で家具や工芸品のようなプロダクト寄りのものもあります。例えば、木のフタのついた『dice』や『bucket』は、家具職人さんにカットを依頼しています。
ものづくりに欠かせないパートナーシップ
ようやくリリースから1年がたったバッグづくりですが、その工程に多くの人が関わってくるようになり、ものづくりの難しさも感じているそう。4人だけでなく、職人さんたちといっしょにものを作っていく喜びも体験していると話します。
自分ではできない部分で関わってくださる、たくさんの職人さん達と仕事してみて、内容をきちんと伝えきれていないと、まったく違ったものができあがってきます。伝えることの難しさを感じ、日々反省しています。
自分の思っていたデザインと必ずしも同じにならないこともありますが、そのぶんデザインどおりに仕上がったときの喜びは大きいので、仕事のパートナーシップの大切さを改めて痛感しました。
コーデのスパイスになるバッグ
まるで枕のようなクラッチバッグ『pillow bag』やランドリーバスケットのような『hamper tote』、三角形の『SANKAKU』など、個性が強いものもありますが、自由にコーディネートしても合う意外性を楽しんでほしい、と話す尾野さん。
バッグは服を選んだ後で決めると思うのですが、服に合わせてまとめようとしなくても良いのでは。「SOAK」では、バッグというアイテムがコーディネート全体のスパイスになればいいな、と思っているんです。ナチュラルからモードまで、いろんなスタイルにスパイス的に使ってほしいと思っています。
「SOAK」のアイテムは、部屋に置いていても違和感がないような、家具のような佇まいで展示されていました。見てみると、カタチや使われている素材などに、ハッとするような驚きがあります。そんな「SOAK」を見ていると、スパイスとは、それだけが目立つものではなく、全体に溶け込みながら味わいを深め、持つ人の個性につながっていくものだと感じます。
デザイン重視のようですが、バッグは持ち歩くものなので、使いやすいことは大前提。スパイスにしてみる、というバッグの選び方が、毎日のコーデを自由で楽しいものにしてくれそうです。
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