新しき奇才の登場に期待が隠せない……! 法学部卒・趣味はアイドル観賞の足立真規さんのバッグづくり

A Picture of $name HITOMI ITO 2016. 10. 20

淡いグレーに染められ、独特のフォルムを成すバッグに思わず足を止めた。

masaki-adachi-1

彼、足立真規氏と出会ったのは、とある大型展示会のことである。

大理石のように繊細で美しいマーブリングに、柔らかなシルエット……このようなバッグを作るのはどのような人だろうか……! と思うだろう。

どのブランドも気合いのプレゼンテーションを繰り広げる中、足立氏は「寝起きそのままに来ただろう」というジャージ姿で立っていた。

足立氏は、24歳。2015年3月に大学を卒業したばかりという。専攻は法学部趣味はアイドル観賞

バッグと作る本人の持つありとあらゆるギャップとに興味を抑えきれず、横浜にある彼のアトリエ兼住まいのアパートに向かった。

masaki-adachi-14

インタビューに訪ねたその日も、足立氏はパジャマのような出で立ちで、出迎えてくれた。

―― わ、意外にちゃんとアトリエじゃないですか。

足立真規さん(以下、足立)
失礼な〜! ちゃんとアトリエにできるスペースが欲しくて、この春引っ越してきたんです。テーブルとか自分で作ったんですよ。DIY大好き。ミシンとかの機材も、バイトしまくって揃えたんです。
masaki-adachi-17masaki-adachi-10masaki-adachi-8

―― すごい。どのくらいバイトしたんですか?

足立
居酒屋とかで、週7日勤務を半年くらいやってました。死にました……。

―― でもアトリエ部屋以外は、やっぱりわやくちゃですけどね。昨年(2015年)大学卒業したって言ってましたけど、バッグ作りはいつからやってたんですか?

足立
大学在学中から、バッグ作り教室に通ってたんですよ。カガリユウスケって方のバッグが大好きで。いまやってるバイトも、その方のアシスタントなんです。
masaki-adachi-4

―― おぉ。具体的にどんなバイトなんですか?

足立
ひたすら小物作ってますよ。大学2年のときに、「弟子にしてください」ってカガリユウスケさんに手紙を書いて直談判したんです。最初は断られちゃったんですけど、2015年の秋に奇跡的にご縁をいただけたんです。

―― しかしこないだもジャージだったし、正直ファッションとか興味あるように見えないんですけど。

足立
めっちゃ好きですよ! 古着が大好きで、ぼろっぼろのが好きなんです。最初に作った鞄とかも、そういう感じ出てるかも。この藍染めのわびさび感とかすごく良くないですか?!
masaki-adachi-13

―― 展示会で発表してたのとぜんぜん雰囲気違いますね。

足立
あのときは、展示会の1カ月前にバイトを全部辞めて、ひたすら篭って作ったんです。最初に「なに作ろうかな」って考えてたときに、鎌倉の古道具屋さんで、魚籠びくを見つけて。「コレだ!!」と思って、いろんな魚籠を買い集めたんですよ。ネットオークションで。

※魚籠……魚釣りなどのとき、とった魚を入れておくかごのこと。

吊り下げられたさまざまな「魚籠」(ただし、紙袋とアイロンは違う)。

吊り下げられたさまざまな「魚籠」(ただし、紙袋とアイロンは違う)。

―― 現代っ子め。でも、魚籠のかたちをそのままかたどっているのがおもしろいですよね。

足立
古いものが好きなんですよね。アンティークのランプとか、いろいろ買っちゃう。
masaki-adachi-16masaki-adachi-18

masaki-adachi-21masaki-adachi-15

―― この染めも自分で?

足立
はい! 編んである感じとか出したいと思って、試行錯誤してたんですけど、最終的にいまの感じになりました。
masaki-adachi-5

―― しかし、なぜバッグ?

足立
なんでですかね。分かりません。好きだから?

―― まぁ、それはある種、いちばん正しい答えだけれど。

足立
ふだん自分ではぜんぜんバッグ使わないんですけどね。ポケットに携帯と財布入れて即外出OKなタイプです。

でも、子どもの頃からものづくりを仕事にしたいとは思ってたんですよ。服のリメイクも高校生の頃からやってましたし。

手を動かしているのが好きなんです。作業台もベッドも自分で作ったくらい。

masaki-adachi-24masaki-adachi-25

masaki-adachi-22masaki-adachi-23(提供:足立真規)

―― それはスゴイけど、さすがに親御さんとか、就職しないって言ったら心配しませんでした?

足立
しばらくは電話攻撃やばかったです。最近やっと落ち着いてきました……。怖かった……。

―― そりゃそうだろう。

足立
いま、どうやって作家として食えるようになるか試行錯誤してますよ。なかなか難しいっすね。もっとゴリゴリに営業しないといけないな、とは思うんですけど、どこに売りに行っていいか分からない。

――で、いまはどうやって生活してるんですか?

足立
……アルバイトするか、寝てます。それかずっと携帯でアイドル見てます。

――おい、作れよ。

masaki-adachi-12

レザーの醍醐味の一つは経年変化。同じように、この若き才能が今後大きく花開くことを楽しみにしたい。

この記事のキーワード

Keywords

Sponsored Link
次はコチラの記事もいかがでしょう?

Related Posts