BIOを知り、日常の中に少し取り入れてみると、身の回りのケミカルで工業的なものも、違った角度から見えて、あらためて理解できたりします。
自分自身の中に新しいモノの見方、価値観が生まれる感覚は心地良い! だから、BIOは、ラッキーなこと!
「BIO is LUCKY!」では、BIOでラッキーな情報をご紹介していきます。
2016年6月末から8日間、ドイツ・オーストリアへ視察の旅に行ってきました。その視察レポート第2弾は、BIOな酪農場や農場、食肉加工場についてお届けします。
一般社団法人日本ビオホテル協会の中石真由子です。
今回の視察では、BIOな酪農場や農場、食肉加工場も訪ねました。
3つの訪問先には、それぞれオリジナリティ溢れるこだわりでものづくりをする人々がいました。
BIO酪農場・Hofmolkerei Zum Marx
まずはミュンヘンから車で約1時間。
バイエルン州にあるオーバーゼッヒャーリンに位置するBIO酪農場・Hofmolkerei Zum Marx(ツム マルクス)へ向かいます。
ここは、2013年から、農業者によって創設されたドイツ最大の有機農業協会・Biolandの認定農場。
現在の農場主であるSepp Westenrieder(ゼップ・ウェスティンリーダー)さんで4代目。
主にヨーグルトとチーズを生産しており、奥さん、息子さん、息子さんの奥さんと生まれたばかりのお孫さんと暮らしながら、農場を営んでいます。
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Zum Marxの入り口。看板にはお花も。(Photography: Mayuko Nakaishi)
約42haの敷地には、まだらの牛・ドイツシンメンタール種(フレックフィー)が40頭。
つまり、面積10,500㎡(=約3180坪)当たり、1頭の牛がいる計算です!
ちなみにBiolandの基準では、1ha当たり2頭なので、倍の広さを有しています。
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訪ねたこの日は、前日に大雨が降ったため、牛は牛舎の中にいました。青々とした牧草。クローバーやハーブは何種類も。(Photography: Mayuko Nakaishi)
通常、牛は夏も冬も牛舎にいますが、Bioland認定農場の場合、悪天候のとき以外は一年中、できるだけ屋外で育てます。
牛は、草の山に鼻を入れて、匂いを嗅ぎながら、おいしそうにモリモリ食べています。
2013年からは、一般の穀物飼料から、生牧草・干草を飼料とし、牛の乳(ホイミルヒ)の生産に切り替えたそう。
「Heu」が『牧草』、「Milch」が『ミルク』なので、直訳すると「牧草のミルク」。
季節や天候によって味が変わります。
次は、農場内のヨーグルト工房へ。
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ヨーグルト工房の中。(Photography: Mayuko Nakaishi)
搾乳場所から工房まで、たった30mの距離。
フレッシュであることも、おいしい製品を作るために大切にしていることの一つです。
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自社製品のヨーグルトは、なんと一つ、0.5ユーロ。(Photography: Mayuko Nakaishi)
「BIOに転換してどうですか?」と、マルクスさんに質問したところ、
「品質が良くなり、大満足。お客さんからの要望や反応がダイレクトにくるので、力が入る!」とのことでした。
そして、これからも“Regional”=「地方の」ものづくりを大事にしていきたいとも語っていました。
BIO農場・Grasser Hof
続いて、同じくバイエルン州、アルゴイ地方に位置する農場・Grasser Hof(グラッサ-ホフ)へ。
一昨年も訪ねた農場です。
農場主は、Daniel Oettermann(ダニエル・エッターマン)氏。
2008年にオーガニック認証・Demeter認証の農場をスタート。Biolandの認定も受けています。
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Daniel Oettermann氏。今回も笑顔で、私たちの訪問を歓迎してくれました。(Photography: Mayuko Nakaishi)
2011年に拡張し、現在の総面積は7ha。スタッフは15人。
標高800mという、冬は氷点下20℃にもなる場所にありますが、バイオガス設備による熱源を使い、ビニールハウスもうまく活用します。
水やり装置なども、自分たちで作ってしまうそう。
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見事なサラダ菜。〈Photography: Mayuko Nakaishi〉
黒いマルチシートは、じゃがいもとトウモロコシの粉から作られたものらしく、環境に負担もありません。
その場で畑から採ってくれたサラダ菜は、そのままみんなでムシャムシャと食べました。
ほかにも、トマト、きゅうり、ジャガイモ、パプリカ、茄子、ささげ、ズッキーニ、マンゴールド、ハーブ類などを育てています。
認証団体が苗づくりを行い、農家に届けるサポート体制も整っています。
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バイオダイナミック農法の特徴的な忌避剤。(Photography: Mayuko Nakaishi)
この5cm四方のバックの中には、害虫を寄せ付けないための小さな虫が入っており、畑のところどころに吊るされています。
農薬を使わないための工夫です。
Danielは言います。
僕の周りのBIO農家は、競争をしません。知識や経験を持ち寄って、コミュニケーションができる人たちばかり。だから、この仕事がとても楽しい。
BIO工房・Herrmannsdorfer
最後は、ミュンヘン市内から南西へ約40km、グロンという村にある工房・Herrmannsdorfer(ヘルマンスドルファー)へ。
ミュンヘンの空港から約40分ほどの場所にあります。
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Herrmannsdorferの入り口。(Photography: Mayuko Nakaishi)
Herrmannsdorferは1917年頃、当時のオーナーが、食肉マイスターを取得し開業。
現在、敷地面積は約120ha(農場:80ha、森林:40ha)あります。
広大な敷地では、豚、牛や鳥などを飼育するほか、野菜も生産しています。
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子豚の宿舎。左奥に見える木の扉は、牧場へ続く出口。(Photography: Mayuko Nakaishi)
豚の餌は、オリジナルに調合した飼料と、牧草やジャガイモ、パン、ミルク、大豆。
母豚と子豚は通常、3〜4週間で引き離されますが、ここでは、7〜8週間ほどしっかりと、親の愛情を受け、病気に強いからだづくりをするそうです。
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鶏小屋と2種の鶏たち。(Photography: Mayuko Nakaishi)
糞尿は、バイオメタンガス施設へ。エネルギーもできるだけ自給します。
年間40万kwのエネルギーが生産できるこの施設。
農場で使う約20%、年間約18,000ユーロの節約につながっているといいます。
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バイオメタンガス施設。(Photography: Mayuko Nakaishi)
動物や野菜を育てるだけでなく、パン工房も運営。本格的なドイツパンを毎日何種類も焼いています。
ここも、収入源の一つであり、雇用創出の大切な場所です。
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施設内のパン工房。(Photography: Mayuko Nakaishi)
それだけでなく、ほかにもコーヒーの焙煎工場にチーズ工房、ビール工房、ワークショップルーム、幼稚園など、多数の施設があります。
製品は、50%を直営店舗、50%外部の店舗で販売しています。
施設内にある食料品店には、ふらりと近所の方が野菜やパン、チーズを買いにきたり、カフェでお酒やお茶を楽しむ光景もありました。
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敷地内にある食料品店。自社の食肉加工品や野菜やパンのほか、BIO食品もたくさん。(Photography: Mayuko Nakaishi)
まさに、食べものが私たちの口に入るまでの一貫生産の現場。
自分たちで育て、屠殺し、きちんと加工すること。そして、近隣の牧場、農場と協力し合うことがいかに大切であるか、案内してくださったマルティナさんは、何度も語ってくださいました。
命をありがたくいただくこと。
目の前にあるものを無駄なく利用すること。
地域に根ざし、助け合って生きること。
ドイツの牧場には、私たちの生活にとって大切なヒントが、たくさん詰まっていました。
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