「突然街中に出現する本屋・劃桜堂」の大野がお届けする、すこぶるいいかげんな本の紹介。
いつの間にか、日常に「本」が忍び込んでくる……。
急速に発展を遂げる現代社会において、漬物石を見つけることは容易ではない。
スマホを持って街中を徘徊してる人の3人に1人は『ポケモンGO』をしているが、残り2人は漬物石を探して彷徨っている。
そして、良識ある善良な小市民にとって、愛着ある本を手放すことは容易ではない。
こうして本は、漬物石として第二の人生を歩むことになった。
今回は、セカンドキャリアを築く本の中でも、特に漬物石に向く本を紹介する。
重力ピエロ
伊坂 幸太郎(著)、新潮社、2006年6月
サーカスの座長という責任は重い。
その重圧は、まるで自分が漬物になったかのようであろう。
これは、責任を背負い、内部の対立やサーカス存続の危機と戦いながらも、いかなるときも重い着ぐるみを着て笑顔を絶やさないピエロのお話……ではない。
複雑な事情を抱えた兄弟の絆をめぐる話である。
大人になってからの家族の確執は重い(小声:カネが絡めばいっそう重い)。
しかし、ピエロがジャンプするときに重力を忘れさせるように、どんなに辛いときでも楽しそうに生きていれば重力など消せる。
女たちのサバイバル作戦
上野千鶴子(著)、文藝春秋、2013年9月
『女たちのサバイバル作戦』 ――タイトルだけで15kgくらいありそうな本である。
いままでジェンダー論を読んだことがなかった男性諸君も、「領収書ください。漬物石代として」と言えば、レジの人は「なあんだ、漬物石にするのか」と思うので、購入のハードルは高くない。
内容だが、一般的なジェンダー論の本には、「私たちは虐げられている、故に正当な権利を主張する」といったものが多い(もちろん偏見である)。
しかし本書は、データや法律の根拠を用いて客観的に正論を述べてくるので、一つひとつのパンチがやたら重い。漬物だるが壊れてしまわないか心配になる一冊である。
ゼクシィ
リクルートホールディングス、2016年9月23日
「失恋中にゼクシィを読むべきではない」。
自明の理である。
私は最近、彼女にふられたばかりである。
今年の誕生日、(元)彼女は私に「SUTEGOMA」と描かれたTシャツをプレゼントしてくれた。
その半年後、晴れて本当の捨て駒になった。
もう立ち直れない。
『ゼクシィ』を眺めながら、捨て駒の心は重い石で塞がれていくばかりだ。
思い出を漬け込むための漬物石を探す、恋に破れた人がいても、『ゼクシィ』だけは渡さないようご注意願いたい。
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