環境問題や格差問題、少子高齢化や自殺の問題など、いまの社会に存在している課題・問題は、基本的に「正解」がありません。
理想と現実にギャップがあったり、実施される「解決策」にポジティブな面とネガティブな面があったり……。100%の「正解」がないからこそ、私たちはさまざまな視点を持ち寄り、一緒に考え、未来のためによりよい「(取捨)選択」をする必要があるのだと思います。
弊社ユナイテッドピープルで扱っているドキュメンタリー映画のテーマも、そうした「答えのない問題」ばかりです。でも、その問題に対して熱い思いや伝えたいメッセージがあるからこそ、製作者たちは、長い年月をかけ、台本もなくどんな結末になるか読めない中でも、一つの作品を作り上げています。
「偏り」上等!
そこには必ず製作者なりの意見と考えが込められており、その意見もまた、【100%の正解】になるわけではありません。ある種の「偏り」は多かれ少なかれ生じてきます。
でもその偏りも「上等!」だと思っています(笑)。
映画を届けることの一番の目的は、その映画をキッカケに、社会で対話や議論が起きることだからです。
もちろん私たち配給元の人間も、個人個人の意見や考えはありますが、それを押しつけても意味がありません。大切なのは、映画を一つの材料として、知らなかった世界に触れ、より多くの人たちがその問題について考え、意見を交わし合うことだと思うからです。
配給する映画を選ぶ基準
そんな中、よく「どんな基準で配給作品を選んでいるのか」尋ねられることがあります。大きなポイントは次の5点です。
- ・これからの社会において、向き合って考える必要があるテーマか
- ・製作者のメッセージが伝わりやすいか
- ・伝えている内容に新しさや驚き、そして説得性があるか
- ・単に問題提起だけで終わってしまうのではなく、観た人が自分で何かアクションを起こしたくなるか
- ・見終えてから、他の人と対話や議論をしたくなるような視点が詰まっているか
ほかにもいくつか判断基準はありますが、重視するのはこれらの点です。
寄付の「負の面」まで、知ってますか?
さて、そんな基準に基づいて買い付けをした新作映画『ポバティー・インク 〜あなたの寄付の不都合な真実〜』が、8月6日(土)から渋谷アップリンクで公開になります。
まずは予告編をご覧ください。
みなさん、一度はなにかしらの「寄付」をしたことがあるのではないでしょうか。私も小学生のときには、親からもらったお小遣いで「赤い羽根共同募金」に毎年欠かさず寄付していた記憶があります。
本作『ポバティー・インク』は、そんな私たちの寄付の「行き先」に焦点を当てたドキュメンタリーです。特に、アフリカとハイチを舞台に“支援を受ける側”の人たちの生の声を
途上国開発系の団体が寄付を募るために行うプロモーションが、「貧しくて無力」「不毛の土地」といったマイナスなイメージを植えつけてしまうこと。援助の名の下に無料で配られる品々が、現地発の産業を台無しにしている現状。孤児院のほうが良い生活ができるからと、親がいる子も孤児院に入れられている実態……。
などなど、私たちが「良かれ」と思って届けたお金が、もしかしたら誰かを傷つけているかもしれない……。そんな視点を教えてくれる作品です。
ポジティブ・ネガティブの両面を知り、意見を交わそう
この作品にもある種の「偏り」はあります。限られた尺の中で、監督の伝えたい思いと重なる内容が重点的に映し出されるためです。ただ、監督自身も寄付の全てを否定しているわけではありません。私たちも、NGO・NPOの活動を批判したくてこの作品を届けるわけではありません。
せっかく寄付をするのであれば、きちんとその行き先まで調べて考えてみたうえで、責任を持ってお金を投じてみてはどうか? という提案をしたいのです。そして、私たちの【誰かを「助けてあげる」という意識】そのものを、もう一度見つめ直してみてほしいのです。
たとえその後に同じ道を選ぶのだとしても、知らずに選ぶことと知っていて選ぶこととは、違う「結果」を導くと、私は思います。
映画をご覧いただき、周りの人と考えや思いを交わし、対話の輪を広げていただけたら本望です。
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