「映画配達人」
私たち「映画配給」の仕事を一言で表すとしたら、この言葉になるのではないかと思います。簡単にいうと、映画を作った人(製作者)から、映画を見せる場所(映画館)に映画を配達する存在です。大手企業の場合には、製作から配給・宣伝、そして映画館まで、一社で行っている場合もあります。
今回は弊社のような配給会社がどのような仕事をしているのか、お話をしたいと思います。
まずは作品選び。
弊社の場合、扱う映画の9割がたが海外作品のため、海外の映画祭に参加して作品を見つけてきます。また、海外セールスの企業からオススメ作品を教えてもらうこともあります。
さらに弊社の場合、いまの社会に届けたい社会課題やメッセージのが頭の中にあり、それに関係する新聞記事などを読んでいる中で、気になる作品に出合うこともあります。
「この作品を届けたい!」
……と決めたら、海外セールスの企業と契約を結びます。
よく「作品の買い付け」と言いますが、正確には「作品を日本で扱うための権利を取得」します。映画館で上映する権利、TVで放映する権利、DVDを販売する権利……など、さまざまな権利があるため、「どの権利を、何年間、いくらで」取得するかの交渉をします。
公開準備のためにすること
日本配給の権利を入手したら、いよいよ公開準備です! 大きくやることを列記すると……
- ・字幕付け(海外作品の場合)
- ・映画館のブッキング
- ・邦題の決定
- ・予告編の作成
- ・ちらし・ポスターの作成
- ・試写会の開催
- ・メディアへの宣伝
- ・公式サイトの開設
- ・SNS(Twitter、Facebookページ)の開設と情報発信
- ・より多くの人に知ってもらうためのプロモーションの検討
などがあります。
字幕付けやデザインなどは、外部のプロにお願いをしながらも、細かい部分の確認やキャッチコピーの検討などは、私たちが責任をもって行います。
邦題についても、検討に検討を重ねて決定をするのですが……それについては、またどこか別の機会にお話できればと思います。
映画館が足りない!
さて、そんな「映画配達人」の私たちにとって死活問題といえるのが、映画の「受け渡し人」である映画館が減ってきていることです。
以下のグラフは過去60年間の映画館数の変化を表しています。
*2000年以降は、映画館の数ではなく、スクリーンの数に変更。
そして次のデータは、2000年以降のスクリーンの数に占める、シネコン(※シネマコンプレックス。1つの映画館内に、複数のスクリーンがある映画館のこと)とそれ以外の映画館の割合を示しています。
この2つのデータから分かることは、映画館の絶対数が頭打ちなうえ、特に弊社が扱っているようなニッチだけれども社会に届ける必要がある映画を上映するミニシアターが、年々減少しているということです。
映画館の数だけではありません。
以下の図は、1年間で公開される映画の本数を示しています。
前の情報と合わせて考えると、上映できる場所は減っているのに、公開される映画の数は増えていることになります。
これは、1作品ごとの上映される期間が短くなっているため。みなさんも、「観たい」と思っていた映画が、「ええ?! もう終わっちゃったの?!」と思った経験があるのではないでしょうか? かつては、1本につき3〜4カ月上映していることが普通だったようですが、いまでは、ミニシアターの場合だと1本につき1〜2週間の上映が大半を占めます。
映画界ではいま、「大量生産大量消費」が起きている……ともいえるかもしれません。
どんな場所も映画館になる! 〜市民上映会
そうはいっても、私たちユナイテッドピープルでは、みなさんに届けたいメッセージが詰まった作品を手にしており、こうした状況を黙って見ているわけにはいきません。
そんな中で弊社が力を入れるようになったのが「市民上映会」です。
かつては映像素材がフィルムだったため、技術を持った映写技師がいなければ上映ができませんでした。しかしいまは、DVDやブルーレイでも上映できるます。つまり、白い壁かスクリーン、プロジェクター、スピーカーがあれば、どんな場所も「映画館」になりうるのです。
この市民上映会には、どこでも上映できるということだけでなく、映画館にはない「魅力」もたくさんあります。そして、その魅力に惹かれた仲間たちが、「cinemoシアター」というかたちで、いま全国に広まりつつあります。
この「cinemoシアター」についても、追ってさらに詳しくお話したいと思います。「それまで待てない!」という方は、次の2つのサイトを覗いてみてください!
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