和歌山県の柑橘を使った梅酒やアロマオイル。20~30代の女性をターゲットにこれらの商品を手掛けたのは、地元の酒造メーカー「中野BC(Biochemical Creation:ビーシー)株式会社」。
1932年に創業し、日本酒や焼酎の製造・販売を主に行ってきた老舗企業が注目したのは「女性」。若者の酒離れなどを市場が縮小する酒類業界で、再起を図った和歌山の老舗企業の改革を紹介する。
地元・和歌山の柑橘×梅酒がヒット
5年間で25倍の成長
現在、中野BCの売り上げを支えるのが、和歌山の地域ブランド「紀州南高梅」を原料とした梅酒の製造・販売だ。紀州南高梅の需要拡大を目指し、梅酒の商品化に打って出たのは1979年。
当初は売り上げが伸びずに苦戦が続いたが、シソやはちみつを組み合わせた「カクテル梅酒」の開発を契機に採算がとれるように。緑茶を合わせた梅酒は、2003年頃からの健康ブームで注目を浴び、ヒット商品となった。
その後も、和歌山の柑橘類をはじめとした果物や野菜を組み合わせた梅酒を商品化し、5年間で梅酒部門の売り上げは25倍へ急成長した。
現・3代目社長による組織改革
若手女性社員8名のプロジェクトチーム「なでしこ」発足
もともとは日本酒の企業。和歌山県内で出荷量第1位にも選ばれたことのある「
しかし、不況や若者のお酒離れにより、日本酒の売り上げが低迷。日本酒から梅酒へと大きく舵を切ったのが、2015年10月に代表取締役社長に就任した中野幸治氏だ。大学院卒業後、宝酒造へ入社し、4年間日本酒の製造や営業を経験。2005年から中野BCで、経営・マーケテイングを担当し、すでに和歌山県を代表する酒造メーカーとなり、さらなる高みを目指す意欲が薄れていた組織の改革に次々と着手した。
「顧客を獲得できるのは本格派」と、宝酒造での経験から確信していた中野氏は、効率化を重視した大型機械による大量生産での日本酒を手作りへ戻した。こうして作られた純米酒「紀伊国屋文左衛門」は、和歌山のみならず全国規模の銘柄に成長し、酒類の世界大会で金賞を受賞。
一方、日本酒事業への依存に危機感もあった。そこで、健康志向の高まりが重なり、売れ行きを伸ばしていた“カクテル梅酒”に着目した。
梅酒のターゲットは女性。「ならば、女性の視点が必要」と、それまで男性社員が中心的な役割を担っていた組織に、2009年、女性社員によるマーケティング部署を発足させた。2014年には、セールスマーケティング、営業、研究などに携わる若手女性社員8名によるプロジェクトチーム「なでしこ」を編成。商品開発にも関わり、昨年3月、これまでのカクテル梅酒のイメージを覆す「てまり」が発売された。
女性が手に取りたくなる梅酒を作りたい
「やらないか?」
現在、入社4年目(※2016年現在)の大西紗与さんは、なでしこ結成の際、研究部門のメンバーとして声を掛けられた。当時は入社2年目。社歴が浅いこともあり、「なにをしたらいいんだろう」と、戸惑いもあったが、他部署の社員と同じ仕事に関わることで、販売過程や市場のニーズなど、多角的に見る機会になった。
「てまり」が目指したのは、女性に選んでいただける梅酒。これまでのカクテル梅酒は、味は女性好みですが、見た目や大きさが男性寄り。女の子どうしの持ち寄りパーティーやお世話になった方へのお礼として、相手に気を使わせずに「ありがとう」と受け取ってもらえるものを目指しました。
商品の顔であるラベルは文字を極力減らし、イラストをメインに。容量も、梅酒商品として初の180mlに設定した。
名前にもこだわりがある。和歌山県の工芸品「紀州てまり」をモチーフにし、平安時代のお姫さまの遊び道具になぞらえ、このお酒をお姫さまになった気分で味わってもらえたら、という思いを込めた。
女の子のわがままがいっぱい詰め込まれた商品なんです。
発売後、反響は大きかった。展示会では、新商品一覧ケースに飾られた「てまり」の前に多くのお客さんが集まり、見た目のかわいさから国内の多くの店舗で採用が決定した。
全て手探りで始まった商品化までの道のり。社内の風当たりも厳しかったが、「かわいいね」というお客さんの反応から、しだいに納得してもらえるようになった。
なでしこ第2弾は、お酒の蒸留技術を生かした「柑橘アロマオイル」
ソーシャルビジネスにも一役
今年1月に登場した、和歌山県産の高級柑橘・
中野BCが焼酎造りで培った「水蒸気蒸留法」は、植物や果物からアロマの香りを抽出する方法と似ており、肌荒れやシミを引き起こすクマリンを含まない、安全なアロマを作ることが可能だ。香りは温度設定によって決まる。柑橘ならではの香りと、安定的な生産を維持するために、2年間で200回以上の蒸留実験を行い、スパイシーな香りが引き立つアロマオイルが完成した。
実はこのアロマオイル、地元企業の新たな収入源にもなっている。
もともと和歌山県の未利用資源を使い、その魅力を届けたいという思いが根底にあった。地元ブランド「有田みかん」の加工メーカーである伊藤農園で果汁が絞られた後の皮を使い、精油(エッセンシャルオイル)を抽出している。みかんの生産量全国一を誇る和歌山県では、ミカン農家の高齢化に伴い、収穫量は減少傾向にある。新たなみかんの需要により、後継者が育ち、ソーシャルビジネスの一助になればと期待を持つ。
和歌山の魅力を伝えるメッセンジャーとして
和歌山ならではの素材でいままでにない商品を作り、国内外の人々に感動を提供したい。そして、和歌山県の地域興しに貢献したい。
地元・和歌山へのこだわり。これが中野BCの特色だ。今後は、梅酒事業のさらなるグローバル展開と、高い研究開発力を活用した和歌山県産の商品づくりに取り組んでいく。
「いままで知らなかったけど、良いね!」と言われると、まだまだ知られていない和歌山の魅力があると感じます。弊社がそのメッセンジャーになれれば。
次はなにを作りたいですか? と聞くと、「おいしい健康食品」という答えが返ってきた。
「健康に良いから」ではなく、「おいしいから食べる」健康食品を作りたい。
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