異なる環境で育った二人がともに歩んでいく「結婚」。ただでさえ簡単なことではありませんが、「国際結婚」となるといっそう互いの違いを認め合う努力が必要そう……。
昨今は国際結婚じたい珍しくなくなってきましたが、「インド×日本」のカップルは、私の周辺にはいませんでした!
今回は、国を超えたインド・日本の国際結婚夫婦をご紹介。インドでものづくりをするブランドを創業した竹迫千晶さんと、コンサルタントとしてそっと支えるヴィクラムさんの愛の物語をどうぞ!
(右)竹迫千晶(たけさこ・ちあき)
「VEGANIE」代表兼クリエイティブディレクター。
2005年大広・クリエイティブ局、2009年博報堂DYメディアパートナーズ・企画プロデュース部を経て、2010年オレンジ・アンド・パートナーズに入社。コピーライター、クリエイターとして働く。2012年、『Empower people and animals(人や動物を力づける)』がコンセプトのブランド「VEGANIE」を創業。
(左)ヴィクラム
インド・カルカッタ生まれ。大学卒業後の日本留学がきっかけで、日本のコンサルティング会社に勤務。その後独立し、コンサルティングを行う傍ら、「VEGANIE」の経営戦略をサポートしている。
国籍を超えた絆を深めるまでの道のり
まず、お二人の出会いからご結婚までの道のりを教えてください!
出会いは2010年。友人主催のパーティーで初めて会いました。当時インドの方とお会いする機会はなかなかなく、「へー、インドご出身なんですね」と、会話したことを覚えています。そのころは、まさか結婚するとは微塵も思っていませんでしたね(笑)。しばらく疎遠でしたが、たまたま再会して、互いに惹かれてお付き合いが始まりました。
お付き合いが始まってすぐ東日本震災があり、緊急事態の中で実家のある神戸に一時帰省した際、思いきってヴィクラムといっしょに帰ったんですよ。彼のことを話していないまま家族に会い、「しばらく泊まらせてください」とお願いしたので、家族も内心とてもビックリしていたと思います。しかしすぐに打ち解け、家族と絆ができましたね。特に兄とは、私よりも仲良しです(笑)。
文化や育ちの違う中、家族の愛情や雰囲気はとても重要だと思うんです。ご両親と千晶の関係性や会話を見ていると、千晶の家族の素晴らしさや愛情を感じ、千晶をさらに好きになりました。そして2012年、僕の家族に会うために、今度は千晶が初めてインドに来てくれたんですよ。
インドはヒンドゥー教の国で、一般的には伝統的な男性観・女性観、結婚観などが残っているといわれていますが、ヴィクラムのご両親は考え方が柔軟な方々。風習や決まりを押しつけるようなことは決してなく、なにより私たちの愛情を信頼してくれていました。お互いの家族との絆も深まり、2013年、私たちは結婚しました。
ヴィクラムさんの実家で、シーク教の結婚式を挙げたお二人。
新郎新婦の肩に掛かっている白い布とピンクの布を、「夫婦として結ばれた証」として、新婦の父が結ぶ。
一緒に暮らしていて、生活様式の違いや文化の違いを感じることはありますか?
ヴィクラムは、柔軟で寛大な思考の持ち主なので、ほとんどないんです。私はB型であっけらかんとしているので、中身はだいぶインドっぽいかも……。ヴィクラムのほうが几帳面で日本人っぽいかもしれません(笑)。
完全に価値観がいっしょの夫婦なんて、どこにもいないですよね。もちろんけんかするときもありますが、国や文化が違うことでけんかが起きたことはこれまで一度もありません。
結婚式も、インド式と日本式で2回行いました。季節行事もインドと日本両方やります。どちらかだけに統一するのではなく、互いの文化を二人で楽しんでいます。
VEGANIEについて
千晶さんが手がけるブランド「VEGANIE」は、インドの女性たちがものづくりを担うブランド。その立ち上げに際し、ヴィクラムさんとパートナーになったことは、影響があったのでしょうか?
そもそも自分でものづくりをしたいと思ったきっかけは仕事ですね。
広告代理店でコピーライターとして働いていたのですが、ファミリー向けの商品に力技で話題性をもたらしプロモーションをする、という過程に遭遇したことがあったんです。そのとき、将来母親になりたい身として葛藤を感じました。
そんな中彼に出会い、ディスカッションを重ねていく中で考えが整理され、決心ができたんです。
「
VEGANIE」をローンチしたのは2014年5月。私がデザインをして、カルカッタやデリー周辺の村に暮らす女性生産者とともに商品を作っています。
「VEGANIE」のコンセプトは、『女性をエンパワーする(※社会・組織の一人ひとりが「力をつける」こと)』こと。
日本にいると想像もできないようなハードな環境下に生きるインドの女性たちが、伝統的なアートクラフト技術を引き継いで、しっかりものづくりをしている。彼とともにインドを訪ね、彼女たちの姿を目の当たりにして、インドの女性職人たちとともにものづくりをしたいと思いました。
僕はコンサルタントとして働いており、「VEGANIE」が良い方向に向かうよう、千晶にアドバイスをしています。自分で経営をしていると迷うことが必ずありますよね。特に千晶は、クリエイティブディレクションもしているので、たくさんのことを考えないといけません。そんなとき、右に行くか左に行くか、進むべきか立ち止まるべきかをいっしょに考えています。
やるからにはもちろんブランドを大きくさせたい。彼は、そのための方向性や、リーダーが持つべきメンタリティをいつも教えてくれています。彼は経営に関してとても厳しく、日々鍛えてもらっています!
僕はもともとアートやデザインなどについては無知でした。しかし「VEGANIE」を始めて、千晶のおかげで自分の生まれた国の伝統的なものづくりに初めて触れることができ、すごく勉強になっています。
お二人で、インドの生産地に行かれることも多いとお聞きしました。これまで印象的だったことはありますか?
彼女の仕事をとおして、インドはとても広く、「インド出身」である僕自身、インドのことをほとんど知らないということに気づきました。
地域によって生活が全く異なります。街全体が暮らしやすくなっているエリアもあれば、伝統を重んじるあまりに発展しにくく、貧しさが目立つエリアもあります。貧しいエリアでは、衛生問題など『少し工夫をすればすぐ良くなるだろう』と感じることばかり。ただ、自分は長く滞在できない……そのたびに、歯がゆさを感じますね。
印象的なことはありすぎるのですが……ネガティブな面でいうと、『ゴミを捨てる』ことに対する配慮が欠けていると感じます。目の前にゴミ箱があっても、ところかまわず路上に捨てて、肝心のゴミ箱は空なんです。地方では、駅のホームから駅の線路に捨てるのが当たりまえ。単純に、『なんで?!』って、疑問です。近年は首相主導で「Cleanup India」というキャンペーンを実施しているので、都市部は変化していくのかもしれません。
良い面で印象的だったのは、インドの方はコミュニケーションが濃いと感じます。例えば、子どもが泣いていたら、見ず知らずの方も飛んできて、子どもをあやしたりします。日本で私が同じことをすると警戒されかねませんよね。そのまっすぐなコミュニケーションはすごく素敵だなと思います。
VEGANIEのこれから
今後、「VEGANIE」をどんなブランドにしていきたいですか?
「VEGANIE」を始めて約2年。当初、「エシカル」や「フェアトレード」を謳って購入に結びつけることは難しいと考え、「かわいそうではなく、かわいいから買うのだ。」というキャッチフレーズをブランドにつけました。デザインやものづくりの繊細さを磨き、「VEGANIE」でしか買えない、オンリーワン商品を生み出していきたいと考えています。
また、「VEGANIE」はアパレルの春夏/秋冬シーズンという表現をやめ、「コレクション」も「Dialogue(ダイアローグ、問答・会話の意)」という言い方に変えました。シーズンやトレンドに流されない、生涯を通じて楽しんでいただける商品を作っていきたいという考えからです。
エシカルはファッションだけでなく、コスメやフードまで広がりを見せていますし、もっと入り口を広く見せるべきだと考えています。それを体現できる、エシカルショップのプロジェクトも進行中です!
(インタビューここまで)
千晶さんはヴィグラムさんについて、「経営マインドを教え、迷うたびに導いてくれる」と言い、ヴィグラムさんは、千晶さんについて「僕にはないクリエイティブマインドを持っている」と言います。
お互いを認め合い、支え合いながら、プライベートも仕事も共に人生を歩んでいるお二人……そんなお二人が紡ぐ「VEGANIE」に、今後も大注目です。
VEGANIE
Website:http://veganie-shop.com/
100%無農薬、無化学肥料、国産にこだわったコールドプレスジュース&スムージーを展開するTrueberryと、「VEGANIE」によるショップ『Trueberry+VEGANIE』が、表参道駅から徒歩5分のロケーションにて7月◎日オープン。『活動的に暮らす女性たちが、ほっと心休まる空間、人と人のつながりを感じられるひと時を提供したい』と、千晶さん。
WEBSITE: http://www.veganie-shop.com/(※2016年6月9日より、『VEGANIE』ウェブサイト内にページ公開)
OPEN: 2016年7月15日
PLACE: 東京都港区北青山3-10-25 1F
取り扱い商品: コールドプレスジュース、スムージー、フード、エシカル雑貨、エシカルスキンケア製品
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