インド・オリッサ州カラハンディーLebed村は、デリーから飛行機で2時間、夜行列車で5時間、車で40分でたどり着く小さな村。そこに住むインドの女性たちと、刺繍アーティスト・二宮佐和子(にのみや・さわこ)さんが出会った。その出会いは、インド農村の未来図を針と糸で描きだしている、と言っても過言ではない。
企画したのは、通販の会社として知られる株式会社フェリシモ内のプロジェクト「PEACE BY PEACE COTTON PROJECT(以下、PBP)」。PBPと二宮さんのチャレンジを紹介する。
二宮さんと、インドの女性たち
二宮さんがインドを訪ねたのは、2015年の12月。女性たちに刺繍を教えるため、3日間滞在した。
訪問先のLebed村は、株式会社フェリシモのPBPプロジェクトが支援する場所。ここでオーガニックコットンが作られており、PBPはそれを使った商品を企画・販売。売上から基金を積み立て、幅広い支援プロジェクトを実施している。
今回PBPが刺繍技術を教えるのは、インドの女性たちが技術を身につけ、彼女たち自身で未来を作っていけるようにすることが狙いと話すのは、PBP部長・葛西龍也だ。
技術が上達すれば、PBP商品だけでなくほかのフェリシモ内の部署、ひいてはほかの企業の刺繍業務を仕事として受注できるようになる。オーガニックコットンを通じて「支援」する関係だったのが、「協業」する関係になる。これは革命ですよ!
二宮さんが指導したのは、若い女性たち16名。ふだんは家のお手伝いなどで学校には行っておらず、刺繍もあまりやったことのない人たちが中心だった。
しかし二宮さんは、女性たちの高い意欲と、目を見張る上達ぶりに驚くばかりだったという。
指導1日目に、「残りは宿題。家でできるところまで進めてきてください」ということにして終わった課題を、全員が最後まで仕上げてきていました。
「お家のこともあるし、あんまり進められないかな……」と思っていたので、すごくびっくりしましたね。一人ひとり作品を見ながら、糸のテンションのかけ方、ステッチの幅、糸がバラつかないようになど、かなりレベルの高いアドバイスをしました。そんなときも、彼女たちはとても真剣な表情で聞いてくれてうれしかったです。
2日間のフィールドワークでは、二宮さんがデザインした絵柄を女性たちがPBP商品に刺繍。そうして誕生した世界に一つだけのワンピースやTシャツなど計16点が、2016年3月、都内で開催された展示会でお目見えした。
二宮さんは帰国後、遠隔のトレーニングプログラムもスタート。現地NPOのチェトナオーガニックの協力の下、インターネットで写真をやり取りしながら、女性たちの指導に継続してあたっている。
「線を丁寧に描く」などテーマに沿った課題を与え、女性たちが刺繍したものをチェックし、コメントを入れて返す……通信教育のようなことを続けています。本当にすごい意欲的で、成長のスピードが早いんです!
二宮さんは、「カラフルな刺繍糸の組み合わせ方、顔の表情の描き方、ステッチの仕方など、一人ひとりの作品から個性が溢れていて、想像以上のユニークさと愛らしさに魅了された」とも。どんな未来が描き出されていくのか。未知数の可能性にワクワクが募るばかりだ。
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