「伝統的なフランスのワークウエアをかっこよく現代によみがらせる」というテーマを掲げ、2009年パリに誕生したブランド「Bleu de Paname(ブルー・ドゥ・パナム)」。良質な仕立てと機能性に加え、〈シンプル×ヴィンテージ×ストリートスタイル〉が絶妙にミックスされた独自のデザインが反響を呼び、いまや世界各国の有名セレクトショップから支持を得る人気ブランドです。
「Bleu de Paname」の最大の特徴は、「MADE IN FRANCE」に対する徹底的なこだわり。洋服の縫製はもちろん、オリジナル生地の生産も一からフランスで行われています。最近は「MADE IN FRANCE」を謳うブランドが増えてきましたが、ここまで深くコミットしているところは珍しいかも……?
今回は、ブランドの生い立ちや人気の秘密、そして彼らが追及する「MADE IN FRANCE」とはなにかを探るべく、アトリエ兼事務所へ訪問。共同創立者の1人、Thomas Giorgetti(トマ・ジオルゲッティ)さんがたっぷりと語ってくださいました。
―― お二人が「フランスの作業着」をコンセプトにブランドを立ち上げたきっかけは?
僕とChristophe Lépine(クリストフ・レピンヌ)は、幼稚園からの幼なじみ。学生時代からずっと「いつか2人でビジネスをしよう」と話していたんです。
その後、クリストフはテキスタイル会社の生産管理やヴィンテージショップのバイヤー、ナイキのトレンド事業部などでキャリアを積みました。僕はストリート系ブランドのマーケティングアドバイザーとして働いた後、「Spray Magazine」のチーフエディターとして出版業界に身を置きました。
そんな中、2008年の初めにいまのブランドコンセプトを思いついたんです。当時はファストファッション全盛期で、みんな安い服を「使い捨て」ていましたが、僕たちはそんな風潮にすごく違和感がありました。コストを削りに削って効率重視で作られた服は、パターンもありきたりでオシャレするにも限界があるし、なにより真心がこもってない。だから自分たちは、シンプルで丈夫でかっこよく、世代を越えてずっと愛してもらえる服を作ろうと思ったのです。
同時に、ブランドのアイコンとして頭に浮かんだのが、二人とも好きなヴィンテージウェアの中でも特に親しみのあったフランスの作業着でした。すごく丈夫で快適なことは、昔から知っていましたからね。しばらくはデザインのイメージを膨らますために、町工場を営んでいたクリストフの親戚一家の洋服ダンスからいつも作業着を引っ張り出していましたよ(笑)。
このように、いろんなタイミングやアイデアが結びついて「Bleu de Paname」が生まれました。
―― 「MADE IN FRANCE」への強いこだわりをお持ちですが、「Bleu de Paname」のアイテムはどのように作られているのでしょうか?
シーズンにもよりますが、毎回コレクションでは60〜70%の服にフランス製の生地を使用していて、縫製は約90%をフランス国内の工場にお願いしています。
作る生地や縫製の種類によって工場を分けているので、取引先は北から南まで約20カ所あります。例えばオリジナルで作っているモレスキン生地は、Vosgesにある昔ながらの工場で織りと染色をしてもらっています。この生地は本当に丈夫で、だから「モグラの肌」と呼ばれるくらいなんです。
モレスキンは昔、作業着によく使われていた生地。ですが、現在はだいぶ需要が減り、生地を作る国内工場がどんどん潰れています。
だから僕たちは、いま生き残っている工場で職人さんたちとともにもう一度、フランス製の素晴らしい生地をよみがえらせたいと思っています。
織り方、染、質感、起毛具合などを細かく決めてサンプルを作っては修正を繰り返していると、生地の開発にはだいたい1年くらいかかります。根気がいりますが、本当に良い経験になります。それに毎シーズン多くのアイテムに採用している生地なので、結果的に生地生産の効率化にもつながっているんですよ。
ちなみに、デニムは日本製の生地を使っています。上質で染めの技術がすばらしく、伝統的なデニムの生産方法がブランドのコンセプトとマッチしました。
染色に関する規制が厳しいヨーロッパでは、デニムの生産の規制が複雑で難しい。「Bleu de Paname」も1シーズンだけフランス製オリジナルデニムを作ったことがありますが、コストが高すぎて続けられませんでした。最大限の「MADE IN FRANCE」を実践しながらも、お客さんの手の届く価格帯で提供するために、ほかの国の助けを借りざるを得ない部分があるのも事実です。
もちろん外国の取引工場も、ブランドのポリシーに合うパートナーを厳選し、国内工場と同様しっかりと信頼関係を築いています。そういう面から、僕たちは「MAISON DE CONFIANCE(信頼のメゾン)」とも名乗っています。
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