イギリスのポートレート/ファッションフォトグラファー・Rankin(ランキン)。雑誌「Dazed & Confused」の共同創刊者でもある。
Rankinはこれまで、エリザベス女王、トニー・ブレア前首相、ゴルバチョフといった著名人から、Kate Moss、Kylie Minogue、Bjork、Madonnaたちファッションやポップ界の女王、はてや難民まで幅広い被写体を撮りおろしてきた。迫力のある写真で、独自の地位を築き上げてきた写真家だ。
Rankinは2015年12月13日から2カ月半にわたり、ドイツ・ロストックにあるギャラリーで、自身の作品を少量だけ集めた展示「Less is More(※より少ないことはより豊かなこと、の意)」を開催。
初めて自身の根底にある考え方を表現したという同展示に寄せて、Rankinの写真についての考え方を尋ねた。
―― 「Dazed & Confused」を始める前に、学生誌を立ち上げています。DIY的な「自分でやってしまえ」精神はいまも健在ですか? それとも収まりましたか?
いまも僕の原動力だ。なくなることはないだろうな。ただ、やることの規模が大きくなったし、それに伴う問題も大きくなった。
―― 人を多く撮ってきましたが、なぜ人を撮り続けるのですか?
人の全てが僕にとって魅力的。眼差し、しゃべるときの唇の動き、立ったり座ったりする一挙手一投足……全てね! 人はみんな似ているし、みんな違う。だから人を撮り続けているんだ。
―― 今回の展示は、自身の写真についての考えを掘り下げた内容になっています。現在の写真のあり方についてどう思いますか?
展示では「真正面から写真と向き合う」ということを考えているんだ。
スマホのカメラで簡単に写真が撮れて、SNSでシェアし放題のいまの時代……きっと未来の人間や宇宙人がいまの我々を見たら、どれだけ自分が好きな種族だったんだろうって思うんじゃないかな。いかに自分がキレイで美しいか、イイね! を集められるかに、みんなすっかりハマっているね。
おかげで、ポートレート・フォトグラフィーっていうものが死んだっていう人もいる。でも、逆にいよいよ「生きる」ものになるんじゃないかと思っている。視覚でコミュニケーションする人が増えて、ビジュアルの革命が起こっているいま、それに参画できることがうれしくもあり、恐ろしくもある。
―― テクノロジーは写真に悪影響を与えたと思いますか?
そうは思わないけど、テクノロジーで大きく変わったとは思う。そもそも写真は新しいメディアだし、時間とともに変わるもの。必然の進化が訪れているだけだ。個人的にはいまの進化が好きだよ。
―― 写真のほか、映像作品も作ってきました。フル・ムービーを手がけたこともあります。ビジュアル作品を作るおもしろさは?
誰かの想像を掻き立て、自分と同じように興奮してもらう。感情、思考、笑い、悲しみといったさまざまなものを共有すること ――いつもやりたいのは、そういったことだ。映像、写真、絵画から、僕自身もいろんなものを受け取る。それと同じように、自分の感動や考えを、誰かと共有したいんだ。
映像制作は、共同作業であるのがおもしろい。大きなチームが一つのゴールに向かっていっしょに駆け抜けるんだ。とても情熱的な時間で、ありがたいことだ。
―― これまであなたは何度か、ファッション業界の「浅さ」について言及してきました。それでもファッション業界での仕事をするのは?
ファッション業界の多くの部分が浅いとは言ってきたけど、どの業界でもトップクリエーターたちは比類ない才能を持って、興味深い作品を作っている。
幼い頃からファッションが好きで、いまもファッションが好き。でも、業界に従事する人、買う人、作る人……人という存在を、業界がどのように扱っているかを知ってしまってからは、問題を真剣に捉えている。
変えようという意志があるかぎり、自分が従事する業界について批評的な視点を持つことは悪いことじゃないと思うんだ。ファッション業界の良い側面だって、僕はたくさん知っている。
―― あなたは「ラグジュアリー」「グラマー」をどう定義しますか?
「ラグジュアリー」は年に1回、すてきな休暇を取れることかな。ローンのことを考えずに済む時間! 「グラマー」は夜のお出かけにドレスアップした僕の妻!
―― 「Less is More」についてもう少し教えてください。タイトルの意味は?
「Less is More」は、初めて僕自身の写真についての考えにフォーカスした展示。より少ない作品を見せることで、逆にその背景にある考えについてより多くのことを知ることができるんじゃないか、というところからつけたんだ。
僕はいつだって自分に対して正直であろうとしてきたし、その姿勢で作品を撮ってきた。まさにその思いどおりのタイトルなんだ。
―― 次の活動について、何を予定していますか?
まずは休暇だよ!
でもいま新しい本の執筆に取り掛かっているよ。「Hunger Magazine」を始めた最初の5年間についての本だ。あと、Heidi Klumといっしょにショーをやるんだ。それは来年のお披露目かな。
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