フルーツの殻を使って服を洗うネパールの女性たち……その様子をテレビ番組で見ていた2人のオランダ人青年は、びっくり!
女性たちが使っていたのは、ムクロジという木の果物の殻。
台湾、中国南部、ヒマラヤ、インド北部……そして西日本にも自生するその実の殻は、なんとそれだけで天然の洗剤になるのです。
フルーツの殻を使い、川で服を洗っている女性たちを見て、感動したというMelvin LoggiesとJasper Gabriëlseは、すぐさまリサーチをスタート。サプライヤーを探し始め、現在の現地パートナーであるHariさんに出会いました。
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創業者のMelvin LoggiesとJasper Gabriëlse。
2014年の1月に発売を開始した「Seepje(スィーピー)」はいま、250店舗で展開。7種類の商品ライナップになっています。
「Seepje」の創業者の古い友人でもあり、現在はスタッフを務めるLennardさんに詳しくお話を伺いました。
―― まずは使い方から教えてください。
コットンのランドリーバッグに、ムクロジの実の殻を4つ入れて、いっしょに洗濯機に入れるだけでOKです。途中で取り出したりする必要はありません。殻は1つ3回繰り返して使えます。
水につけるとゆっくり洗浄成分が染みだしいきます。なので、手洗いをするときは水でちょっと動かしてやってください。温かい水であれば、早く成分が出てきます。ウールとシルクも洗うことができます。
液体洗剤を使うときは、1回40mlを入れてください。色もの用と白もの用と2種類あります。
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―― ムクロジってどんな木なのですか?
ムクロジの木は90歳まで生き、25メートルの高さになります。7年ほどで実をつけるようになり、10〜12月が収穫期です。
ムクロジの実の殻はサポニンを含んでおり、これが天然の界面活性剤なんです。ネパールのローカルな村ではいまでも洗剤として使われています。殻と殻をこすったり握ったりして、水の中に入れると泡が出てきます。それで服も、体も髪も洗っています。
ムクロジの実そのものは、スキンケアにも使うことができ、たとえば頭皮のシラミなどを除去することもできます。ただ食べられないので、乾燥させてジュエリーにしたりしています。
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ネパールの女性とムクロジの実。
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ムクロジの木。
―― ネパールではどんなふうに作っているのですか?
ネパールに自生するムクロジの実を刈り入れて使っています。その作業もフェアトレードで行われているかどうか、私たちはチェックしています。
次に、そのフルーツと殻を分ける作業をします。私たちのパートナーであるHariさんが、雇用しているスタッフたちとやってくれています。Hariさんのことは、「殻農家さん」と呼んでいるんです。
Hariさんの下には、現在32人のスタッフがいます。Hariさんといっしょに、ネパールの人々の労働・生活環境の向上に貢献していきたいと思っています。いっしょにビジネスプランを考え、工場の安全性など確認し、避難訓練も行っています。スタッフの経歴や借金などもHariさんと確認しました。スタッフと対等な関係を築くこと。そして生活賃金の水準を上げていくこと。そんな長期的な視点から、とても重要な作業だと考えています。
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「殻の農家さん」Hariさん。
―― フェアトレードにするワケは?
そもそも、フェアな取引はみんなすべきこと。それが本来の貿易の本質じゃないかしら。
私たちは、ネガティブなインパクトを減らすということより、ポジティブなインパクトをいかに生み出していくかに注力しています。それは、生産者のみならず、環境、購入してくださるみなさまにとっても。
私たちがパートナーを探し始めた頃、Hariさんはすでにフェアな洗剤づくりに熱心に取り組んでいました。彼は、環境にもネパールの人にももっと良い方法で作っていきたいと願っていました。だから彼と出会ってすぐいっしょにやっていくことを決めました。
―― いままで最もたいへんだったことは?
「Seepje」を始めた頃はとてもたいへんでした。創業者の2人も、そして古くからの友人である私もまだ学生で、ビジネスと学業を両立しながらだったので、とっても忙しかったです。
最近では、液体洗剤を作るのがたいへんでしたね。パッケージも洗浄力もすばらしいものを作りたかったので、想像以上に時間が掛かりました。
パッケージはリサイクル可能ですし、液体もリサイクル原料をベースにしています。
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―― 最後に「Seepje」とはどういう意味ですか?
オランダ語で石けんは「zeep」なんです。「zeep」に似た言葉で、もっとピュアでシンプルな語感にしたかったのです。
語末に「je」とつけるのは、オランダ語ではよくあるのですが、親しみやすい感じにできます。だから、そのまま「せっけん」という意味ですよ。
―― 次のチャレンジは?
そうね、ベルギーとドイツへ販路を拡大することでしょうか。ネパールにも大きなインパクトを生み出していきたいです。ぜひ「Seepje」で楽しくお洗濯してほしい!
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